トランプ大統領が署名した、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンのイスラム圏6か国からの渡航者の入国を原則禁止する大統領令について、25日、バージニア州リッチモンドの第4巡回区連邦控訴裁判所(高裁に当たる)は、執行の差し止めを命じたメリーランド州連邦地裁の判断を支持し、政府側の主張を退けた。
同裁判所の判断に当たっての論点の中心は、6か国からの入国を原則禁じるという大統領令が、宗教上の理由によるものであるかということであった。米国では憲法によって、宗教による差別が禁じられている。トランプ政権は、大統領令は宗教について明言しておらず、その文面を超えた解釈をするべきではない、6か国はイスラム教国であることを理由に選ばれたわけではなく、テロのリスクを考慮して選ばれたものであると主張した。
しかしながら同裁判所は、選挙運動中のトランプ大統領のコメント等にも触れ、大統領令は国家の安全保障にのみ関連しているとは確信できないと指摘し、政府の安全保障上の懸念が、原告側の差別に対する懸念を上回るとは言えないとした。...
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同裁判所の判断に当たっての論点の中心は、6か国からの入国を原則禁じるという大統領令が、宗教上の理由によるものであるかということであった。米国では憲法によって、宗教による差別が禁じられている。トランプ政権は、大統領令は宗教について明言しておらず、その文面を超えた解釈をするべきではない、6か国はイスラム教国であることを理由に選ばれたわけではなく、テロのリスクを考慮して選ばれたものであると主張した。
しかしながら同裁判所は、選挙運動中のトランプ大統領のコメント等にも触れ、大統領令は国家の安全保障にのみ関連しているとは確信できないと指摘し、政府の安全保障上の懸念が、原告側の差別に対する懸念を上回るとは言えないとした。裁判官13人の内、10人の多数意見であったが、ロジャー・グレゴリー裁判長は判決の中で、「大統領の権限は絶対的なものではない。政府の主張する国の安全保障とは、曖昧な言葉で語られているが、文脈に照らせば宗教的不寛容、敵意、差別に満ちあふれている。」と述べ、6か国を名指しした大統領令を厳しく批判した。
少数意見の3人は、全て共和党政権が任命した判事だった。いずれも下級審の判断を支持する多数意見は、大統領令の文言以上のことを判断している点で誤っているとしている。例えばポール・ニーマイヤー判事は「過去の判例は、裁判所は文面に則って解釈すべきとしており、大統領令には憲法上の問題はない。」との意見を付した。
トランプ政権は1月の7か国を対象とした大統領令の内容を、3月に改めて再度発出した。1月の大統領令は、多くの国際空港で飛行機に乗ろうとしていた乗客が足止めされる等、大きな混乱が生じ、批判が殺到した。3月の新たな大統領令では、イラクを対象国から外し、既に有効なビザを持っている人には適用しないとしている。
この新たな大統領令に対する連邦高裁レベルの判断は、これが初めてであり、今後カリフォルニア州サンフランシスコの第9区巡回区控訴裁判所が、ハワイの連邦地裁で差し止められた案件についての判断を示す予定である。
この結果を受けて、セッションズ司法長官は、「連邦高裁の判断はトランプ政権のこの国の安全保障を強化する努力を阻んだ。トランプ政権は、審査がきちんと行われて安全保障上の脅威がないと確信できるまでは、テロ支援国家からやってくる人々の受け入れを認める必要はない。」として、直ちに上告する方針を明らかにした。
今後は連邦最高裁で審理が行われることとなる。最高裁の判事は9人中5人が共和党政権の任命であるが、結果の予想は簡単ではないと言われている。
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