Wikipedia共同設立者のジミー・ウェールズ氏はこのサイトでプロと市民ジャーナリストによるニュース記事をもとにWikipedia同様ボランティアが校正、事実確認、出典等の追加機能を持つことで近年問題となっているフェイクニュースに対抗することを目的としており、広告収入に頼らず定期的に寄付をしてくれる支持者を募り資金を調達することでジャーナリストに報酬を支払う予定だと述べている。またニュースの内容は米英の政治などの一般的な問題から科学技術分野までカバーする予定だ。寄付者は支持者になり、支持者はサイトのニュース記事を書いたり、ニューストピックの提案をすることができる。読者のコミュニティが公開された記事を確認し編集補助をする予定だ。4月25日から始まった資金調達が順調なら6月8日の英総選挙前に最初のジャーナリストを雇う予定だ。Wikipediaの分散された知識の機能と広告収入を求めないビジネスモデルとプロと市民のジャーナリズムの組み合わせが、フェイクニュースや政治的な横暴に対処するための草の根ニュース組織につながるとしている。
ウェールズ氏はWikitribuneを立ち上げたきっかけはトランプ米大統領だと語った。1月20日のトランプ米大統領就任式の聴衆の参加者数について、米メディアが過去最多の180万人だった2009年のオバマ前米大統領就任時に比べて少なかったと報道した。写真で見てもそう見えたが、スパイサー米大統領報道官がメディアは不誠実だと非難したことを挙げている。
Wikitribuneの考え方は他のコミュニティジャーナリズムの実験と似ている。例えば、オランダのニュースサイトDe Correspondentは、いくつかのトピックについてコミュニティから支援された記者が詳細な報道を行うことを目標に100万ユーロをクラウドファンディングで集め2013年にスタートし、今年3月には米国市場への参入を発表し、約50万ドル集めている。
ある専門家は、非営利のニュースのビジネスモデルは、比較的小規模でユニークなニュースを配信するなら信頼できるニュースサイトとして成功する可能性があるが、大きなニュース組織になるのは難しく、その影響は限定的になるのではと指摘している。
別の専門家はユーザーの寄付で運営するビジネスモデルを評価している。寄付をしたユーザーが、ニュースの質次第だが心情的にもWikitribuneを応援する可能性が高いと考えているからだ。既存の新聞からはジャーナリズムの商業モデルのみでなく編集改革にもつながるとしてWikitribuneは敬遠されている。編集者の役割はどの記事を入れるか外すかを選択することだ。しかしウェールズ氏は編集上のビジョンや問題を追求するよりも管理の役割が大きいとしており、ジャーナリズムの最も伝統的な役割の1つを廃止しようとしている。
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