米国のトランプ政権は、27日、税制改革の概要を発表した。個人の所得税については、7段階の税率を3段階に簡素化した上で、最高税率を39.6%から35%に下げ、基礎控除額も増額する。法人税については、35%の税率を15%に引き下げる。ムニューシン財務長官によれば、それは1986年以来の大きな改定であり、史上最大規模のものになるという。
世界の経済状況は、グローバル化や情報技術の進展による取引方法の変化等により大きく変貌している。他の国々がこうした変化に対応して、税制面でも次々と改革を行ってきたにも係わらず、米国は1986年以来約30年の間、大きな改革を行ってこなかった。
そのため、米国は租税政策において他国に大きく遅れを取っており、税制の複雑さや高い法人税率等によって、国家の競争力の低下を招いている。この結果、米国の大きな多国籍企業は、米国外に多くの資産を移し、海外企業を買収するなどして、米国内の高い税金の支払いを避けるようになった。...
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世界の経済状況は、グローバル化や情報技術の進展による取引方法の変化等により大きく変貌している。他の国々がこうした変化に対応して、税制面でも次々と改革を行ってきたにも係わらず、米国は1986年以来約30年の間、大きな改革を行ってこなかった。
そのため、米国は租税政策において他国に大きく遅れを取っており、税制の複雑さや高い法人税率等によって、国家の競争力の低下を招いている。この結果、米国の大きな多国籍企業は、米国外に多くの資産を移し、海外企業を買収するなどして、米国内の高い税金の支払いを避けるようになった。これにより、雇用が失われるなど種々の問題が生じている。
トランプ政権は今回の税制改定の法人税減税によって、こうした状況を改め、米国ビジネスを再び世界最強のものとし、経済を好転させて賃金の上昇を誘導するとしている。ムニューシン財務長官は、これにより3%の経済成長は十分可能となると言っている。
今回の改定がいつ実施されるのかは明らかにされていない。改革案を発表したムニューシン財務長官とゲイリー・コーン国家経済会議委員長は、現在議会と協同して法案とすべく、その詳細を詰めていると語った。
また税収の減少に対しては、歳入面でどのようにそれを補い、米国が抱えている財政赤字や累積債務をどのように解消していくのか等の具体策も明らかにされなかった。さらなる財政の悪化が懸念されている。
さらに遺産税の廃止や、投資に対する減税など、主に富裕層を対象とした減税案が含まれていたこと等により、民主党の反発を招いている。上院では法案の可決に必要な多数を得るために民主党の協力が不可欠であり、今後の議会での審議が難航することも予想される。
日本企業が懸念を示していた国境税調整の導入は、大きな影響を受ける米国内の輸入企業の強い反対によって、今回の税制改革ではひとまず見送られた。日本や海外で生産した製品を米国に輸入して販売している自動車産業等の企業への打撃は、とりあえずは回避される見通しとなった。
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