=中国製のハリウッド:中国の影響で夢の工場はどう変わるか =
2月24日の
『CBC』はハリウッド映画への中国の影響について取り上げている。2016年に急激に減速するも過去10年間、興行収入は平均して年間35%の伸びを示すなど、中国の映画市場は近年急拡大し、将来米国を上回ると見られている。中国のような成長市場は米国の映画会社にとってますます重要な存在になっており、米国内市場の重要性が薄れている。ハリウッド映画は映画を上客である中国の観客向けに作るようになるにつれて、映画の内容にも影響を及ぼし始めている。例えば中国には映画評価システムが無いので過度の表現を控えた誰でも安心して観られる映画作りが必要になってきている。また政治的にも中国政府や中国人を刺激する表現を控える必要が出てきた。またアジア人俳優の役がより物語の筋に絡むようになるなど向上したりもしている。ある作家によればこれはハリウッド映画の白人偏重主義を改めるのに役立っていると皮肉っている。中国資本が米国の映画制作会社を買収したり、米国映画の制作に出資したりする動きが活発になっている。特に米中の共同制作映画は、ハリウッドにとって中国の外国映画の流通を制限する法律を迂回する重要な戦略ともなっている。ただ中国の映画市場が減速すれば、ハリウッドの目は次の成長市場のインドや東南アジアに向くだろう。
一見すると、映画「グレートウォール」はハリウッドのアクション映画のように見えるかもしれない。しかし、それは全く間違いだ。これは中国で作られたものだ。2月17日にカナダ全国の劇場で上映された映画は、港湾都市青島にある約5,000m四方の屋外ステージとニューヨークの市街通りのセットを持つ最先端の映画撮影所で撮影された。「グレートウォール」 は、今までに中国で制作された中で最大の予算の映画だ。これはまだ大ヒットではないが、興行収入は拡大している。...
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一見すると、映画「グレートウォール」はハリウッドのアクション映画のように見えるかもしれない。しかし、それは全く間違いだ。これは中国で作られたものだ。2月17日にカナダ全国の劇場で上映された映画は、港湾都市青島にある約5,000m四方の屋外ステージとニューヨークの市街通りのセットを持つ最先端の映画撮影所で撮影された。「グレートウォール」 は、今までに中国で制作された中で最大の予算の映画だ。これはまだ大ヒットではないが、興行収入は拡大している。中国の映画市場は近年急拡大した。過去10年間、興行収入は平均して年間35%の伸びを示した。そしてその成長は2016年に急激に減速したものの、中国の興行収入は最終的に米国を上回ると見られている。それはアメリカの映画会社にとってドル袋を見せられるようなもので、アイン・コーカスによれば、それはハリウッド映画の作り方を劇的に変えるものだ。コーカスは新刊「中国製のハリウッド」の著者だ。 彼女が「Day 6」というブレント・バンベリーが司会のラジオ番組で語るように、中国のような世界市場は米国の映画会社にとってますます注目すべき存在になっている。「最終的には、ハリウッドにとって国内の興行収入の重要性がますます小さくなっていく」とコーカスは述べている。
ハリウッドを中国の観客に合うように調整する
「グレートウォール」は公開した週末には、米国ではわずか2,100万ドルの興行収入だった。 しかし国際的に見ると、この映画は中国国内の興行収入の1億7,100万ドルを含め2億 4,460 万ドルという印象的な興行収入を得て、全体的に成功を収めた。コーカスは「映画は実際に興行収入を回復させた。それは米国以外での興行収入によるものだった」と述べている。その結果、ハリウッドの映画撮影所は利益を増やす方法としてますます世界中の観客をターゲットにしている。コーカスによればその戦略は映画制作に直接的な影響を与えている。「米国外の興行収入が回復している。特に中国などでめざましい。もし米国で映画の興行収入が伸びないとしても、それは必ずしも全体の利益を上げられないことを意味するものではなくなっている。コーカスは中国で2億ドル以上を稼いだが米国では5,000万ドルも超えられなかった「ウォークラッフト」を取り上げて「この映画は実際には経済的に非常に成功した。私たちはこのこのようなモデルの映画をこれから見ることになると思う」と述べた。
ハリウッドの映画撮影所は徐々に映画を中国の観客向けに合わせて作るようになるにつれて、北米で私たちが見る映画の内容に影響を及ぼす可能性がある。中国市場には映画評価システムが無い。つまり、国内で観るすべての映画は一般的な観客に受け入れられなければならない。「過度な性的や暴力的や薬物のシーンのある映画など、子どもが見ることができないものは一般公開の対象となる映画に含めることはできない。つまり当然、作られる映画の内容が変化するということだ」。
ハリウッド映画の内容は政治的な理由からも変わってきた。例えば、「ドクターストレンジ」ではチベットの僧を出す代わりにティルダ・スウィントンをその役目に出演させた。「アイアンマン3」では、悪役の中国人高官の役が英国の俳優ベン・キングズレーに変更された。他のケースでは、アジア系の配役の立場が向上し、より物語の筋に絡む目立った役が与えられている、とコーカスは述べている。「ある意味でれは「白人偏重」現象を緩和するのに役立っている」、「これは潜在的にハリウッドの表現と力学におそらく非常に良い影響があると思う」と、コーカスは述べている。しかし、米国や中国の宇宙機関が、地球規模の危機を解決するために平和的に協力し合っていると思われる映画「オデッセイ」のような描写は必ずしも現実的ではない。「北米市場を実際に対象としていないこのような映画を見るのはちょっと違和感を覚えるが、今後もっと見ることになるだろう」と、コーカスは述べている。
中国製のハリウッド
「グレートウォール」は、ますます注目を集めている数々の米国と中国のメディア企業の合作映画の最新版だ。「これは、実際には、過去10年間にわたり中国と米国のパートナーにより推進されてきた合作映画の長期的な流れのひとつだ。」と、コーカスは述べている。また合作映画の例として、ジャッキー・チェンが主演した「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」、「ドラゴン・キングダム」を挙げた。2016年に3つのオスカーを受賞した 「レヴェナント: 蘇えりし者」は、中国のエンタテイメント会社が共同出資し、共同配給された。そして1月、パラマウント映画は、今後3年間で制作する映画の少なくとも4分の1に融資する10億ドルの契約を中国企業2社と結んだ。ハリウッドがこのように儲かる中国の観客を追い続けながらも、米中の共同制作は中国の外国映画の流通を制限する法律を迂回する重要な戦略ともなっている。一方、大連万達グループのような中国企業は、AMCプロダクションのような有名なアメリカの映画会社を買収して、米国の映画業界に多額の投資をしている。これらの投資が中国にとって有利な理由はいくつかあるとコーカスは述べている。「中国政府は、流通するコンテンツの種類に対し実質的に大きな影響力を発揮するが、中国企業も投資の多様化を模索している」それでも、ハリウッドに対する中国の影響力が拡大し続けるかどうかはまだ分かっていないとコーカスは述べている。「中国市場が計画どおりに急速に成長せず、2016年の3~4%の成長が続く場合、ハリウッドの映画撮影所は中国への関心が薄れ、東南アジアアジアやインドのような成長市場に目を向けるだろう」、「もし中国の興行収入がさらに増えれば、多くのハリウッド映画撮影所が中国政府とどう取り組むか方針を再考するだろう」とコーカスは述べている。
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