<天下り>
文部科学省で繰り広げられてきた、組織的な「天下り」斡旋問題が国会で大きく取り上げられている。
衆院予算委員会で詳らかにされたところによると、同省OBに厚遇ポストを与え、再就職の支援活動を組織ぐるみで下支えする構図ができていて、これは明らかに国家公務員法違反行為である。
更に言えば、第一次安倍内閣時の2007年に、同法が改正されて、「天下り」の規制対象が関係省庁等と密接な関係にある営利企業以外にも拡張されるなど、より厳しい条件が設定されて以降も、同省の「天下り」斡旋事業が脈々と続いてきたことになる。...
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<天下り>
文部科学省で繰り広げられてきた、組織的な「天下り」斡旋問題が国会で大きく取り上げられている。
衆院予算委員会で詳らかにされたところによると、同省OBに厚遇ポストを与え、再就職の支援活動を組織ぐるみで下支えする構図ができていて、これは明らかに国家公務員法違反行為である。
更に言えば、第一次安倍内閣時の2007年に、同法が改正されて、「天下り」の規制対象が関係省庁等と密接な関係にある営利企業以外にも拡張されるなど、より厳しい条件が設定されて以降も、同省の「天下り」斡旋事業が脈々と続いてきたことになる。
言うまでもなく、「天下り」とは、退職した高級官僚が、出身省庁が所管する外郭団体、関連する民間企業や独立行政法人・国立大学法人・特殊法人・公社・団体などに、就職斡旋を受けることを指す。
日本の政治家には、政治献金・国政調査活動費(地方議員の場合、政務活動費)等カネに絡む問題が後を絶たないが、官僚の場合の「天下り」問題も、文部科学省に限らず枚挙の暇がない程頻発しているのは、残念なことである。
しかし、「天下り」は日本特有のものではなく、他国でも似たような現象がみられる。
特に東アジアでは、フィリピン、インドネシアなど、大統領制を敷く国々では、政権を担っている間、その家族・親戚・知己等ありとあらゆる関係者が利権を握る体制を作っているし、政権交代後の受け入れ先などもしっかり事前準備しているという。
一方、欧州でも、かつては政権が代わる毎に、それまでの与党に与する官僚の首切りが起こっていたため、官僚自身が、短期間の身分保障の間での汚職や、政権交代後の自身の受け入れ先を予め確保していく等の問題が取沙汰された。
そこで現在の欧州では、政権交代に拘らず、公務員の身分を保証する考えが定着するところとなり、いわゆる「天下り」は少なくなっているという。
また、米国では、官僚人事は政治家の裁量という考えが依然続いており(昨年11月以降、民主党→共和党大統領へ移行時の官僚交代に伴う大引越しがニュースになっている)、前政権時の官僚や退役した軍高官が、関連団体において実権のあるポストに就いている。
しかし、米国での問題は、一度退職して業界団体へ転身した官僚が、“民間の有識者”として再び政治的決定に関与することで、“所属業界”が望むように規制当局に圧力をかけてくることである。
更に、もっと始末が悪いのは、かかる“業績”を残した者が、官・民の間を行き来することが起こっていて、米国では、“リボルビング・ドア(回転扉)”と揶揄されているが、日本における一度きりの「天下り」より問題の根が深いと考えられる。
なお、韓国では、フィリピン、インドネシアと同様、政権を担っている間の利権独り占め問題も発生しているが、それに劣らず問題なのは、日本的な「天下り」が慣例化していることである。
2015年の話であるが、ある大手企業の新役員のうち、40%が「天下り」という事態が報告されている。
因みに、同国では、「落下傘人事」と呼ばれている由で、日本の「天下り」よりもその凄まじさが想像できる。
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