FBIはiPhoneのロック解除に成功した技術も第三者の名前についても沈黙を守り続ける。
イスラエルメディアで日本の子会社セレブライト社の名が浮上したが、FBIが認めない以上推測の域を出ない。「FBIが今回iPhoneの脆弱性を利用して侵入したなら、欠陥を修正してサイバー攻撃から守れるように、企業に知らせる必要がある」(「トリビューン紙」)との指摘もある。どのような技術だったのか?仏メディアはセレブライト社と業界を追う。
『ルモンド紙』によると、セレブライト社の技術やサービスは非公開。3月末パリでのセレブライト社主催の会合で、自社のデータ抽出機UFEDの特徴や新技術のプレゼンを行った。集まったのは警察や軍関係、諜報機関のメンバーや法律専門家だった。しかし警察の代表も出席する会合に業界外の「ルモンド紙」の出席は断られた。FBIが「アップル社の協力はもう必要ない」と発表したのも同じ3月末で、この会合で発表した新技術がFBIの突破口となった可能性が高いと「ルモンド紙」は見る。
FBIの苦境を救った技術は謎
セレブライト社がこの質問に一切答えなかったが、
『ルモンド紙』は専門家の見解を採用する。「iPhone5以上はUFEDには高度過ぎる保護システムを搭載するため不可侵モデルのはずだった。しかし一部専門家はパスワードにハッキング可能な脆弱性を指摘していた」。iPhone5の壁を突破するため、セレブライト社は数十名の技術者による特別チームを配置。アップル社のセキュリティを脅かす最大の敵はもはやハッカーではない。
セレブライト社の技術も万能ではない。
『ルモンド紙』は仏警察の内部資料から「仏警察も他の欧米諸国のように、セレブライト社のサービスを利用する」が、「最近の仏司法警察中央総局(DCPJ)の最近捜査対象となった幾つかのiPhoneの暗号バイパスには成功しなかった」と報じる。FBIと同じくiPhone5の継承機種など新機種への対応ができていない。
『トリビューン紙』は「この業界は個人や小規模研究所による研究開発が多く、FBIはセレブライト社以外の研究者や企業の協力も得た」とシャンベリー高等裁判所の司法専門家が断言したと報じる。業界をあげての取り組みかもしれない。
セレブライト社
『トリビューン紙』によると、セレブライト社はスウェーデンのMSAB社と共に携帯データ抽出技術の最先端を行く業界では有名企業。iPhoneの進化と普及に伴い警察の携帯アクセスの必要性が高まった。これに答えてセレブライト社は主力商品UFEDを開発した。
『ルモンド紙』は「セレブライト社はここ数年あらゆる事件で共同作業を行い、FBIと多数の契約を締結してきた」と報じ、中でも「3月28日に異例の料金引上げ(191,000ユーロ)で契約を更新した」事に注目する。また親会社のサン電子株の急騰も、協力へのご褒美である「企業に多大な利益をもたらす宣伝広告効果」と揶揄する。
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