11月のアメリカ大統領選挙に向け、10日に行われたカマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領によるテレビ討論会では、米国が森林火災ハリケーンの脅威にさられる中、気候変動問題は二の次だと報じられている。
9月12日付米
『ABCニュース』:「気候変動は大統領選討論会の争点の中心ではなかった」:
フィラデルフィア州のナショナルコンベンションセンターで行われた2024年の最初で最後となるであろう大統領選討論会で、気候変動問題は殆ど言及されず、候補者らが、温室効果ガス排出やクリーンエネルギー産業への取り組みに十分な時間を費やすことはなかった。
温室効果ガスへの言及が先にあったのはドナルド・トランプ氏で、自身は、「世界の歴史で最も強い経済を築いた」と主張しつつ、バイデン政権は国内の石油産業を破壊しインフレを引き起こしたと批判した。...
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9月12日付米
『ABCニュース』:「気候変動は大統領選討論会の争点の中心ではなかった」:
フィラデルフィア州のナショナルコンベンションセンターで行われた2024年の最初で最後となるであろう大統領選討論会で、気候変動問題は殆ど言及されず、候補者らが、温室効果ガス排出やクリーンエネルギー産業への取り組みに十分な時間を費やすことはなかった。
温室効果ガスへの言及が先にあったのはドナルド・トランプ氏で、自身は、「世界の歴史で最も強い経済を築いた」と主張しつつ、バイデン政権は国内の石油産業を破壊しインフレを引き起こしたと批判した。
カマラ・ハリス氏は、バイデン政権が天然ガス生産を「歴史的レベル」に引き上げたと称賛。ハリス氏がフラッキング(水圧破砕法)禁止の方針に転換したのかとの質問には、国内のフラッキング継続の必要性を示し、これを禁止するつもりはないと表明した。
気候変動に関するとわかる唯一の質問が行われたのは、最終弁論前の最終盤で、対策を聞かれたハリス氏は、まずトランプ氏が気候危機を陰謀だと主張していると有権者に訴えかけてから、米国は異常気象の被害を最も受けており、国民が家の保険に加入できず、保険料も上がっているとの問題点をあげた。
トランプ氏は気候変動に関する質問に答えなかった。代わりにメキシコの中国系自動車工場の存在により、米国に雇用がないことに関し「先月製造業の雇用1万人の雇用が失われた」と述べた。
クリーンエネルギー産業への投資は雇用の増加に繋がる。エネルギー省によると、2023年クリーンエネルギー分野の雇用は14,2万人増えた。環境保護派は、気候変動の影響を国民により理解してもらうよう務める必要がある。
9月11日付米『ニューヨーク・タイムズ』:「討論会での気候変動問題:トランプ氏は質問を無視、ハリス氏は回避」:
記録的な暑さとなった夏の終わりに、カリフォルニアでは森林火災が起き、ルイジアナではハリケーンが迫る中、90分に及ぶ討論会でカマラ副大統領とトランプ前大統領のどちらも、気候変動政策にふれることはなかった。
ABCの司会者リンジー・デイビス氏から、最後に気候変動は「特に若い有権者にとって重要」な質問として問われた。
ハリス氏は問題であることを認識し、「前大統領は気候変動は嘘」だと主張しているが、「我々は対策が可能だとわかっている」というが、詳細な提案はない。それどころか、経済に関してはクリーンエネルギーへの連邦補助金が雇用創出や発展に繋がるとし、「クリーンエネルギーへの投資をしつつ記録的な国内のガス生産を達成した」と天然ガス生産量までも強調した。
また同氏は、石油や天然ガス生産は国家安全保障にとり重要で、海外へのエネルギー依存を減らすため、様々なエネルギーへの投資をする立場にあるとした。討論はテキサス州に次ぐ第2の天然ガス生産州である激戦州ペンシルベニアで行われていた。
一方、トランプ氏はフラッキング(水圧破砕法)に関して繰り返しハリス氏を攻撃。選挙に勝てばこれを禁止し化石燃料生産ができなくなるだろうと主張。フラッキングは、高圧で水、砂、化学薬品を地下のシェール層に注入するが、環境保護の視点からは、地下水の汚染される可能性があり反対されている。ハリス氏は2019年上院議員のときフラッキングを支持していたが、バイデン政権では立場を変えていた。討論では禁止しない方針だと述べている。
トランプ氏は気候変動について一貫性がなく、討論でも、「太陽光発電を大いに支持している」としつつ、太陽光発電所は場所を取ると不満を述べた。電気自動車については批判的だったが、テスラ社のイーロン・マスク氏からの支持を得てからは、電気自動車支持に転換している。
気候変動については、核戦争を意味するとみられる「核変動」が大きな脅威だとし、アラスカでの石油採掘許可、環境保護庁の解体、そして一期目同様パリ条約からの撤退を約束した。
大統領選挙の結果は、世界最大の温室効果ガス排出国である米国の重要な決定に大きな影響を与えるため、専門家は温暖化対策への道は限りなく閉ざされていると悲観する。
若者による気候変動活動団体「サンライズ・ムーブメント」はハリス氏がクリーンエネルギー展望よりもフラッキング推進に討論の時間を割いていたとして、失望を表明。また、環境団体「シエラクラブ」は、1人の候補はクリーンエネルギーへのビジョンを示したが、もう一人の候補は一貫性のない嘘と陰謀論で、明暗は分かれたとしている。
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