将来の食糧安全保障に対処するため、食用昆虫が候補とされている。地球上の人口の約4分の1が既に常食としているものの、日本を含めた先進国では未だ牛・豚等に取って代わる可能性は低い。各国の取り組みについて英国メディアが報じている。
9月7日付
『BBCニュース』は、将来の食糧安全保障に対処するための食用昆虫産業の将来性について詳報している。
国連によれば、アフリカ等の途上国を中心に、世界人口の約4分の1に当たる約20億人が昆虫を常用食にしているという。
食用昆虫の輸入規制をしているのは、欧州連合(EU)、豪州、NZ、韓国、タイと少数の国でしかないが、食用昆虫産業の将来性についてはまだ計り知れない。
何故なら、多くの国の人たちが昆虫の見た目や味覚等から食欲の対象になり得ないと感じているからである。...
全部読む
9月7日付
『BBCニュース』は、将来の食糧安全保障に対処するための食用昆虫産業の将来性について詳報している。
国連によれば、アフリカ等の途上国を中心に、世界人口の約4分の1に当たる約20億人が昆虫を常用食にしているという。
食用昆虫の輸入規制をしているのは、欧州連合(EU)、豪州、NZ、韓国、タイと少数の国でしかないが、食用昆虫産業の将来性についてはまだ計り知れない。
何故なら、多くの国の人たちが昆虫の見た目や味覚等から食欲の対象になり得ないと感じているからである。
米ウェイン大(1868年設立のミシガン州立大学)人類学専門のジュリー・レズニック助教は、著書「食用昆虫と人類の進化」の中で、クリストファー・コロンブス(1451~1506年)ら植民地開拓者らが、米大陸の先住民が昆虫を食用としているのを見て、“地球上で最も残虐なこと”と評したことから、それ以降欧州を中心に昆虫食について毛嫌いする事態を招いてきたと批評している。
ただ、シンガポールの南洋理工大(1991年設立の国立大学)言語学部門のケリー・マトウィック上級講師(言語・食糧研究)によれば、グルメは長い時間をかけて変化する可能性があるとする。
同講師は、例えば、ほとんどの人にとって異質な概念であった日本のスシ(食用生魚の意)は当初、江戸時代の低階級労働者に屋台で提供されていたが、今や日本のみならず世界で著名なグルメとなっているとする。
また、“貧乏人の鶏肉”とされていたロブスターも、米北東部では囚人や奴隷が食していたが、今や高級食材となっているからだという。
かかる状況下、シンガポールはそれまで食用昆虫の輸入を制限していたが、今年7月、食用としてのコオロギ、カイコ、バッタ、ミツバチなど16種類の昆虫の輸入を解禁している。
この流れを受けて、シンガポールにおいて「世界に提供される食用昆虫」と題する国際会議が開催され、600人余りの科学者・起業家・環境保護運動家らが参加した。
その際、シンガポール在のシェフのニコラス・ロウ氏やニューヨークを拠点とするジョセフ・ユン氏が中心となって、コオロギを食材とした主食・デザート等の料理を提供し、人気を博している。
研究によれば、コオロギはタンパク質が豊富であるだけでなく、家畜に比して飼養に当たって水や土地が非常に少なくて済むことが分かっている。
しかし、ユン氏は、“我々はコオロギ料理をもっとおいしくしなければならない”とし、“何故なら、昆虫が持続可能な栄養豊富な供給源で、食糧安全保障に対処しうるといくら主張しても、人々の食欲をそそって主食に育て上げることは難しいからだ”と吐露している。
次に日本について言えば、2014年に昆虫食専門店TAKEOが立ち上げられて繁盛している。
同店の最高戦略責任者(CSO)佐伯真二郎氏(40代、2011年設立のNPO法人食用昆虫科学研究会理事長)は、“最も大事なのは顧客の興味を引くことだ”とし、“何故なら、いくら環境問題を論じても、顧客はすぐに食用としては考えてくれないからだ”とコメントした。
そこで同店では、昆虫を食べない顧客を差別しないため、昆虫食以外に昆虫食ではないメニューも揃えている。
また、同店の三浦みち子店長によれば、“肉や魚が不足していた内陸では伝統的にバッタ・カイコ・スズメバチが食されていて、第二次大戦時の食糧不足の時代に再び注目されていた”とし、現代においても通じる道はあるする。
しかし、昆虫食専門家によれば、昆虫を食べる人たちが貧困と結び付けられていることから、逆に昆虫食への抵抗が高まっているとする。
ニューヨーク拠点のユン氏は、“今や誰でもがインターネットを通じて外国の文化を容易に垣間見ることができるため、長らく昆虫を常用食としてきたアジア・アフリカ・南米の人たちが、昆虫を食することを恥と考えるようになっている”と懸念を表明している。
なお、昆虫食ビジネスの将来性については、上述どおりまだ不確実なところが多いため、産業規模としては4億~14億ドル(3億300万~10億6千万ポンド、約570~2,000億円)と見込みに大きな幅がある。
閉じる