テレワーク等で労働形態が多様化した今、概して自宅でも外出先でも仕事を強要される場合が多くなっている。豪州では、時間外労働が常態化しており、昨年1年間の無給労働は12兆円に相当するという。そのため仕事のメールや電話により私生活が脅かされることのないようにする「連絡遮断権」が施行される。他の欧州国でも勤務時間外の連絡を拒否できる法令がみられるものの、雇用者側からの反発もみられる。
8月26日付
『ロイター通信』:「豪州の会社員は今後勤務時間外のメールや電話を無視できる」:
豪州では、仕事のメールや電話により私生活が脅かされることのないようにする新たな「連絡遮断権」が本日26日に施行され、従業員らは多くの場合、勤務時間外の連絡対応を拒否しても罰せられることはなくなる。
コロナ禍で在宅勤務が進んだ結果、私生活が仕事のメールや電話により阻害されたことへの反発として支持されている。...
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8月26日付
『ロイター通信』:「豪州の会社員は今後勤務時間外のメールや電話を無視できる」:
豪州では、仕事のメールや電話により私生活が脅かされることのないようにする新たな「連絡遮断権」が本日26日に施行され、従業員らは多くの場合、勤務時間外の連絡対応を拒否しても罰せられることはなくなる。
コロナ禍で在宅勤務が進んだ結果、私生活が仕事のメールや電話により阻害されたことへの反発として支持されている。
昨今世界的にも、休日であっても勤務時間外にメール、SMS、電話をするのは慣例となっている。豪州シンクタンクの統計によると、豪州では2023年、労働者は平均281時間無給で働いていたという。この労働をお金に換算すると、1300億豪ドル(約12兆円)と試算された。
世界をみても、既に欧州やラテンアメリカを中心に10数カ国で既に同様の法制化が行われている。フランスでは2017年に導入され、翌年、従業員に常に電話の電源を入れておくよう要求していた害虫駆除業者「レントキル」に6万ユーロの罰金が科せられたケースがある。
緊急時に雇用主が従業員に連絡しても、理由がある場合に従業員は拒否することができる。拒否が妥当かどうかの判断は、従業員の職務、個人的状況、連絡方法や理由を考慮舌上で公正労働委員会(FWC)に委ねられることとなる。
同委員会は命令を停止させる権限をもち、違反者には1万9千豪ドル(約185万円)以下、企業には9万4千豪ドル(約917万円)以下の罰金が科せられる。
雇用主団体である「オーストラリア産業グループ」は、新ルールの適用方法の曖昧さが雇用側の混乱に繋がると指摘し、仕事の柔軟性が弱まることで経済活動も停滞すると主張している。
同日付豪『ABCニュース』:「メールや電話への対応をやめられる連絡遮断権が本日スタート」:
豪州では、数百万人の人が勤務時間外のシフトから外れることが可能となる。
連絡遮断権関連法のもと、本日から労働者には、拒否が妥当とされる場合に限り、時間外の連絡を拒む権利が与えられる。
豪州では、無給での時間外労働が普通に行われており、多くの仕事で勤務時間外でもコンタクトが取れることが期待されている。しかし、遮断権はこのような労働環境を制限する目的で設けられた。
詳細は今後決められるが、一つには、従業員15人以上の企業では遮断権が保障される。一方、中小企業の従業員には2025年8月22日から認められることとなる。
コロナ禍においてテレワークは有効な面も多かったが、常に連絡が取れるため、概して自宅でも外出先でも仕事を強要される場合が多くなっていた。雇用側には有利な面も多かったが、この新法ではその選択肢がリセットされる。
20以上の国でも同様の法律は既に設けられており、調査によると健康福祉や仕事の満足度における向上がみられている。
豪州では、通信企業「テルストラ」が、常時監視やネットワークメンテナンスが重要な通信販売業であるにもかかわらず、従業員の連絡に制限を設けている。
公正労働委員会(FWC)が今後ガイドラインを示す必要があるが、新法に関する訴訟を通して、「妥当な理由」の範囲が慣例として示されていくとしている。
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