12月1日付「中国人民元がIMF国際準備通貨の仲間入り」の中で触れたとおり、人民元が国際通貨基金(IMF)の理事会で、IMFが起用する「主要通貨」(注後記)のひとつに加えることが決定された。しかも、正式採用される2016年10月時点の構成比を、米ドル、ユーロに次ぐ3位に据えることとしている。IMFの決定は、予め予想されていたことではあるが、昨日引用された以外のメディア報道について紹介したい。
11月30日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用)は、「IMFの事務局は既に11月13日の報告書で、人民元が国際貿易取引で広く、また、自由に使用されていると評価していた。人民元が、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円に加えられることは、経済規模世界第2位の中国にとって、規模だけでなく信用力も世界に認められるところとなり、各国中央銀行初め、多くの金融機関での人民元の利用が、益々広がると期待される。」とし、「なお、人民元の為替レートは中国当局が管理相場制を敷いているが、(今年8月から一部制度変更して)人民元の対米ドルの基準値を、前日終値を重視して決めることとしたため、このままの体制で人民元が主要通貨の仲間入りをするとなると、これまで以上に米ドルの重要性が増すことになる。」と報じた。
12月1日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「人民元のIMF主要通貨入りで、これまで中国中央銀行が行ってきた人民元為替レート介入は制限が加えられることとなり、益々為替市場に委ねられることになろう。」とし、「IMF主要通貨の構成内容の変更は、1999年にドイツ・マルクとフランス・フランがユーロに取って代えられて以来のことである。IMFのラガルド専務理事は11月30日、中国の過去数年の金融改革を評価するとの発言をした。」と伝えた。
また、同日付英
『ジ・インディペンデント』紙は、「人民元は現実的には、他主要通貨のように自由に取引できる状況ではないのに(編注;当局の為替管理体制の他、投資目的などでは国境を越えた人民元の遣り取りに規制)、IMFは“自由に取引可能”と評価して、主要通貨の仲間入りをさせた。」と批評した。
一方、同日付中国
『新華社通信』は、「習主席は11月中旬にアンタルヤ(トルコ)で開かれた主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)において、人民元がIMFの主要通貨に採用されれば、IMFの特別引出し権(SDR)の利用価値が増し、また、世界の金融システムの安定化に寄与することになる、と訴えていた。なお、人民元の主要通貨入りで、多くの中央銀行や民間の金融機関が人民元持ち高を増やすことになろう。ただ、それが飛躍的に増えるかどうかは、為替市場が決めることであるので、中国当局には更なる金融改革が求められることになろう。」と報じた。
(注)主要通貨:IMFが、加盟国に資金を融通するための「特別引出し権(SDR)」と呼ばれる準備通貨を構成する通貨で、これまでは米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円の4通貨であった。SDRは、上記4通貨の為替レートに構成比を加味して、毎日価値が算出される。11月30日現在の価値は1SDR=約1.37ドル(約169円)。
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