インド(1947年英国より独立)は近年の経済発展が目覚ましく、国内総生産(GDP)の世界ランキングでは宗主国の英国(6位)を抜いて5位に躍進している。しかし、主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)を初めて自国開催するに当たって、会議場至近にあるスラム街を潰して貧困事態を隠蔽しようとしている。
9月5日付
『ロイター通信』は、インドがG-20サミットを初開催するに当たって、会議場至近にあるスラム街を潰して外国要人から貧困事態を隠蔽しようとしていると報じた。
インドはこの程、G-20サミットを初めて首都ニューデリー(人口約25万人)で9月9~10日に開催する。
しかし、住宅都市省のハーディープ・シン・プーリ大臣(71歳、2017~2021年在任)が2021年に議会に報告したところによると、デリー首都圏(人口約2,200万人)には約1,350万人の貧困層がおり、その多くが国有地に勝手にバラックを建てて居住していることから、名実ともに先進国の仲間入りをしたいインド政府にとって看過できない問題であるとする。...
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9月5日付
『ロイター通信』は、インドがG-20サミットを初開催するに当たって、会議場至近にあるスラム街を潰して外国要人から貧困事態を隠蔽しようとしていると報じた。
インドはこの程、G-20サミットを初めて首都ニューデリー(人口約25万人)で9月9~10日に開催する。
しかし、住宅都市省のハーディープ・シン・プーリ大臣(71歳、2017~2021年在任)が2021年に議会に報告したところによると、デリー首都圏(人口約2,200万人)には約1,350万人の貧困層がおり、その多くが国有地に勝手にバラックを建てて居住していることから、名実ともに先進国の仲間入りをしたいインド政府にとって看過できない問題であるとする。
特に、G-20サミット開催会場となる2023年7月新築のプラガティ・マイダン国際会議場から500メートルと至近の国有地に、ジャンタ・キャンプと名付けられたスラム街が展開している。
そこで、ナレンドラ・モディ首相(72歳、2014年就任)政権は、国有地に違法に建築された家屋を撤去する旨通達を出し、居住者らに立ち退きを要求した。
居住者の一部及び支援者らがデリー高等裁判所に立ち退き命令の差し止めを提訴したが、同高裁は政府側の請願を認定した。
この裁定に基づき、同政権は居住者らに対して5月31日までの立ち退きを命令し、期限翌日早朝からブルドーザーによる違法建築物撤去作業に入った。
住宅都市省のカウシャル・キショア大臣(63歳、2021年就任)が今年7月に議会に報告したところによると、4月1日~7月27日の間で230エーカー(93ヘクタール、約1平方キロメートル)弱の美化整備が実施されたという。
これに対して、ホームレス支援活動を行っている総合開発センター(2001年設立、本部ニューデリー)創設者のスニル・クマール・アレディア専務理事は、“政府は、美化運動の名の下にバラックを壊し弱者を追い払おうとしている”とし、“かかる行動を起こす前に、居住者らに転居に十分な時間を与えるだけでなく、転居先を用意する等の支援策が必須である”と非難した。
同専務理事はプラガティ・マイダン国際会議場事務局の事務員として働いているが、同理事の住居も整備対象となって壊されてしまったため、自身の通勤はもとより、2人の子供たちの学校をどうするか等深刻な問題に直面している。
ある住民A氏は『ロイター通信』のインタビューに答えて、“(G-20サミット出席の)外交要人が当地に訪れることによって、我々貧困層にとって何か恩恵があるかも知れないと期待したが、結果は全く逆(住居が廃墟化)で、彼らはただ集まって飲み食いするのに過ぎない”と嘆いている。
また、別の住民B氏は、父親と共に13年間もジャンタ・キャンプで暮らしていたが、突然の退去命令とともに住居の打ち壊しに遭って途方に暮れ、『ロイター通信』の取材に対して、“政府は美化運動と言っているが、それは貧困層を追い出すことではないはずで、(G-20サミット開催の間)もし貧困層を隠したいならカーテンやシートを張って隠せば済むことだ”と吐露した。
なお、クマール専務理事は、10キロメートル(6.21マイル)離れた場所で月家賃2,500ルピー(30.21ドル、約4,380円)の1ルームを賃貸することにしていたが、子供たちの通学上の不便さに耐えきれないということで、今年8月、ジャンタ・キャンプの中で破壊されなかった地域に戻り、現在は月3,500ルピー(42.29ドル、約6,130)の家賃を払って住んでいる。
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