中国は、習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)主導の下、反政府の動き等を徹底的に取り締まるべく、2014年に反スパイ法を制定した。同法は外国人にも適用され、台湾問題や東・南シナ海領有権問題で対峙する日本政府を牽制するためか、爾来、累計16人が同法違反容疑で逮捕され、今年3月にも新たに1人が拘束されている。中国政府としては、最も敵対する米国政府に対しても強硬姿勢を示していて、この程、米国籍を有する香港出身中国人に対して同法違反容疑で終身刑の判決を下した。
5月16日付米
『AP通信』、英国
『BBCニュース』は、中国の裁判所がこの程、反スパイ法違反容疑で拘束していた中国系米国人に対して終身刑の判決を下したと報じている。
中国南東部、江蘇省(チャンスー)・蘇州(スーチョウ)の中級人民法院(地裁に相当)は5月15日、中国系米国人の梁成運氏(リャン・シンワン、78歳)に対して、反スパイ法違反容疑で終身刑を言い渡した。
同氏は、香港の永住権を有する米国人で、長年にわたり米中間の友好関係や文化交流促進に尽くしていたが、2021年4月に蘇州滞在時、中国防諜機関の地方支局によって拘束されていた。...
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5月16日付米
『AP通信』、英国
『BBCニュース』は、中国の裁判所がこの程、反スパイ法違反容疑で拘束していた中国系米国人に対して終身刑の判決を下したと報じている。
中国南東部、江蘇省(チャンスー)・蘇州(スーチョウ)の中級人民法院(地裁に相当)は5月15日、中国系米国人の梁成運氏(リャン・シンワン、78歳)に対して、反スパイ法違反容疑で終身刑を言い渡した。
同氏は、香港の永住権を有する米国人で、長年にわたり米中間の友好関係や文化交流促進に尽くしていたが、2021年4月に蘇州滞在時、中国防諜機関の地方支局によって拘束されていた。
従来、中国の裁判は非公開で行われていて、罪状等詳細は明らかにされておらず、同氏の場合も、同法院がSNS上で、“スパイ罪で有罪となり、終身刑が宣告され、かつ、政治的な権利が生涯剥奪された”と掲載されているのみである。
直近十年の米中関係は過去最悪となっており、貿易紛争に始まって、最先端技術漏洩疑惑、人権問題、台湾武力制圧懸念、更には南シナ海における一方的な海洋進出事態でことごとく対立している。
また、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)が今週広島で開催される主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)に出席した上で、対中批判の先陣を切るとみられるだけでなく、引き続いて南太平洋に回って、中国の影響力拡大を阻止すべく、太平洋諸国フォーラム(PIF、注後記)加盟国首脳らとの国際会議を主催することとなっている。
かかる背景もあって、中国政府が米国政府牽制のために、梁氏のような文化人をも厳罰に処したことは十分想像できる。
なお、中国政府は4月下旬、7月1日施行前提で反スパイ法を改定しており、それによると、スパイ容疑適用範囲が更に拡大され、国家の安全と利益に関わる情報流出に関与する行為も新たに適用されることになる。
(注)PIF:米・英国・フランス等の旧宗主国主導の南太平洋委員会(1947年設立の地域協力機構)に対抗して、島嶼国の主体性を堅持し、結束を図ることを目的として1971年設立。加盟国は、パプアニューギニア・フィジー・ソロモン諸島・ツバル・サモア等16ヵ国に援助供与国の豪州・NZを加えた18ヵ国。今年の議長国はクック諸島で、G-7サミットに招待されている。
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