林芳正外相(62歳、2021年就任)は目下、欧州連合(EU、1951年前身設立)主催の「インド太平洋閣僚会合」(注後記)に出席している。そして、同会合で林外相が、中ロの軍事連携促進でアジアのみならず欧州にも深刻な事態を招くと警鐘を鳴らす演説をしたと欧米メディアが報じている。
5月14日付米
『ABCニュース』や英国
『ジ・インディペンデンス』紙等は、
『AP通信』記事を引用して、林芳正外相がスウェーデンで開催された「インド太平洋閣僚会合」で、直近の中ロ軍事連携はアジアのみならず欧州にとっても深刻な事態を招きかねないと強い懸念を表明したと報じている。
林芳正外相が5月13日、EU及びスウェーデンが共催した「インド太平洋閣僚会合」で演説したもので、ロシアによるウクライナ軍事侵攻以来、アジアにおいて促進している中ロ軍事連携は、欧州にも深刻な影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしている。
同外相は、“ウクライナ軍事侵攻で、国際秩序の根幹が大きく揺らいでいることから、国際社会が一致団結して対抗していく必要がある”とした上で、“さもなくば、ウクライナ問題に止まらずに他地域においても、平和と安定を損ないかねない事態が起こり得る”と訴えた。
日本政府は、かねてよりウクライナ支持を強く打ち出している。
実際、岸田文雄首相(65歳、2021年就任)は今年3月、習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)が訪ロしてウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)と会談していた同時期に、ウクライナ首都キーウを電撃訪問していた。
同外相は更に、“中国は、東シナ海及び南シナ海における領有権に関わり、一方的に現状変更しようとしているばかりか、台湾に対しても武力で威圧しようとしている”と非難した上で、“中ロ両国は直近でも、日本列島周辺で両国軍艦・爆撃機による示威行動を展開している”と糾弾した。
その上で同外相は、“ロシアのウクライナ軍事侵攻以来、もはや欧州とアジア地域の安全保障は切っても切れない状況になっている”と繰り返して警鐘を鳴らした。
一方、インドやパキスタン等は、ウクライナ戦争の即時停戦を呼びかけたが、ロシアとの関係を慮ってか、ロシアを非難するコメントは控えている。
なお、当該国際会議には中国は招待されていない。
(注)インド太平洋閣僚会合:EUとEU議長国スウェーデンが5月13日に共催した、EU加盟国閣僚と日本や韓国などインド太平洋諸国との閣僚会合。安全保障や気候変動対策などの幅広い課題の解決に向けた連携強化を確認することが目的。覇権主義的な中国の動きを視野に、EUとしても影響力を拡大し、アジアの巨大経済圏に接近したい思惑を有する。EU加盟27ヵ国に加えてインド太平洋地域の約30ヵ国が出席。
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