国連児童基金(UNICEF、1946年設立)によると、「持続可能な開発目標(SDGs、注後記)」の中に児童婚の慣習廃絶目標が掲げられているが、依然世界では2億人以上の女子が児童婚を強いられているという。インドでは、2006年に18歳未満の女子の婚姻を違法とする法整備がなされているものの、現実的に無視されていて児童婚の慣習がはびこっている。そこで、世界第6位の経済規模を誇るまでになったインドとしても、名実ともに先進国の仲間入りをすべく、児童婚の悪習廃絶に向けて取り締まりに本腰を入れ始めている。
2月3日付欧米
『ロイター通信』は、「インドの警察、児童婚取り締まりの一環で1800人余りを摘発」と題して、児童婚を取り締まる一環で、1800人余りの違反者が逮捕されたと報じている。
インド北東端のアッサム州の警察は2月2日から3日にかけて、違法な児童婚を取り締まる一環で相手方男性及びそれを主導した関係者1800人以上を逮捕した。
同州のヒマンタ・ビスワ・サリマ首相(54歳、2021年就任)は2月3日、『ロイター通信』のインタビューに答えて、児童婚という悪習を根絶するための本格的な取り締まりに着手したところだと語った。...
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2月3日付欧米
『ロイター通信』は、「インドの警察、児童婚取り締まりの一環で1800人余りを摘発」と題して、児童婚を取り締まる一環で、1800人余りの違反者が逮捕されたと報じている。
インド北東端のアッサム州の警察は2月2日から3日にかけて、違法な児童婚を取り締まる一環で相手方男性及びそれを主導した関係者1800人以上を逮捕した。
同州のヒマンタ・ビスワ・サリマ首相(54歳、2021年就任)は2月3日、『ロイター通信』のインタビューに答えて、児童婚という悪習を根絶するための本格的な取り締まりに着手したところだと語った。
同首相は、“児童婚が、母親及び乳児死亡率高止まりの主要因だ”として、取り締まり強化の意義を強調した。
インドでは、18歳未満の女子の婚姻は違法とされているが、当該法は公然と無視されている。
国連によると、世界で依然2億2300万人もの女児が児童婚を強いられていて、その大半がインドによって占められているという。
UNICEFの2020年報告によると、インドでは毎年150万人近くの女児が児童婚を強いられているという。
同首相は、“イスラム教徒からヒンズー教徒・キリスト教徒に至るまで、茶畑部族(注2後記)に属する人々のうち、この悪質な社会犯罪を犯した男性や主導者らを逮捕するに至った”と語った。
更に同首相は、児童婚禁止法に違反したと特定される人が総勢4400人に上るとも付言している。
2月4日付インド『ザ・ヒンドゥ』紙(1878年創刊の英字紙)は、「児童婚取り締まりの一環で、アッサム州ビスワナ地区で139人逮捕」と詳報している。
アッサム州のサリマ首相による、児童婚の悪習廃絶発令に基づき、同州地元警察がビスワナ地区だけで違反者139人を逮捕した。
同州のナビン・シン署長は2月3日の記者会見で、“2日間にわたる一斉取り締まりの結果、同地区の139人含めて、アッサム州全体で2044人の違反者を逮捕しており、また、容疑案件含めて合計4074件が特定されている”と発表した。
同署長は、“サリマ首相から2ヵ月前、アッサム州で違法な児童婚が横行しているので、徹底的に捜査するよう指示を受けた”とした上で、“その捜査を踏まえて、全州において2日間にわたり一斉取り締まりを実施した”と付言した。
同署長によると、逮捕者の中には、キリスト教司祭及びイスラム教裁判官が合計52人にも上ったという。
(注1)SDGs:2015年9月に国連総会で採択された、持続可能な開発のために必要不可欠な、向こう15年間の新たな行動計画。2030年までに達成するべき目標として、17の世界的目標と169の達成基準が示された。
(注2)茶畑部族:インド宗主国の英国が19世紀、アッサム州が茶栽培に適しているとして、大規模栽培を行うためインド各地から労働者を集め、同州での作業に従事させた。それ以来脈々と続いた茶葉栽培に従事している部族を形成し現在に至る。同州人口の約20%を占める。
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