オランダ政府は、17世紀から19世紀後半にかけて奴隷取引に関する大西洋条約に加盟していたことを正式に謝罪表明するに当たって、種々の施策の準備作業を行っている。オランダは、奴隷制度の廃止を1863年にフランスや英国より各々15年、30年遅れで行っている。オランダ当局はこれまで長い沈黙を保っていたがようやく11月4日に多くの報道機関に奴隷制度に関する謝罪を正式に行うことを発表した。
ところでオランダでは世論調査で国の奴隷制度に対する謝罪に同意する国民の割合がたったの35%しかないことを受け、マーク・ルッテ首相としては謝罪によって国民の分断を生じるのではないかとの危惧を持っていた。...
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オランダ政府は、17世紀から19世紀後半にかけて奴隷取引に関する大西洋条約に加盟していたことを正式に謝罪表明するに当たって、種々の施策の準備作業を行っている。オランダは、奴隷制度の廃止を1863年にフランスや英国より各々15年、30年遅れで行っている。オランダ当局はこれまで長い沈黙を保っていたがようやく11月4日に多くの報道機関に奴隷制度に関する謝罪を正式に行うことを発表した。
ところでオランダでは世論調査で国の奴隷制度に対する謝罪に同意する国民の割合がたったの35%しかないことを受け、マーク・ルッテ首相としては謝罪によって国民の分断を生じるのではないかとの危惧を持っていた。
そのため、ルッテ首相は専門家たちから構成される諮問委員会を2020年に検討を依頼した。その後、米国でアフリカ系米人のジョージ・フロイドが警官により殺害された事件があり、人種差別に対する反対運動が盛り上がりもあり、諮問委員会はオランダ政府に正式な謝罪を勧告した。諮問委員会はさらにオランダでの学校教育において若い世代に植民地時代の歴史を伝えることも推奨した。
西インド会社(WIC)は海上貿易の姉妹会社、東インド会社(VOC)とともに1650年から1730年の期間、奴隷取引に関する大西洋条約に基づいて取引を行っていた。WICは現在のベナンやガーナもしくはアンゴラを起点に奴隷を集め、カリブ海沿岸のスリナムなどの大規模サトウキビ農園に奴隷を売買したという。 オランダのライデン大学の試算によると、オランダは大西洋条約に基づく奴隷取引に5-7%の割合で関与し、55-60万人のアフリカ人が取引されたと見られる。
オランダとしては奴隷制に対する謝罪の意味で、大西洋条約時代の歴史教育の普及に2億ユーロ(=約300億円)、奴隷制に関する博物館建設に2700万ユーロ(=約41億円)の予算を計画している。
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