9月14日付米
『AP通信』は、「サムスン、2050年までにクリーンエネルギー依存度100%達成との目標設定」と題して、韓国のサムスン電子が、世界に展開している自社工場において、050年までにクリーンエネルギー依存度100%を達成するとの目標を掲げたと報じている。
韓国のサムスン電子は、世界に展開している傘下の工場において、2050年までにクリーンエネルギー依存度100%を達成するとの目標を掲げた。
同社は、コンピューターメモリーチップ、スマートフォン等の世界トップメーカーで、環境対策活動を標榜する数百社が加盟している「RE100プロジェクト(注1後記)」において最大の電力消費企業である。
同社の9月14日付声明によると、2030年までにスマートフォン・テレビ・その他家電製造工場におけるカーボンニュートラル(注2後記)を達成し、2050年までに世界に展開する半導体含めた全ての工場でクリーンエネルギー100%を達成するとしている。
このため、同社では2030年までに7兆ウォン(50億ドル、約7,150億円)を投じて、様々なクリーンエネルギー用諸設備の建設等に充てるとする。
同社の韓中熙最高経営責任者(ハン・チョンヒー)は声明文で、“総合的な環境対策計画を立案し、気候変動問題の脅威に対応していくことが使命と考える”と言及している。
同社の株主の1社であるオランダの年金基金運用会社APG(2008年設立)などは、韓国におけるエネルギー戦略に“偉大な貢献”をすることになろうと称賛している。
しかし、環境問題専門家が評しているように、APGも、韓国政府が当初の気候変動対策を後退させる意向を表明したばかりであるので、むしろサムスン電子の大胆な対応策に悪い影響を与えるのではないかと懸念している。
今年5月に政権に返り咲いた保守党の尹錫悦大統領(ユン・ソギョル、61歳)は直近で、クリーンエネルギー促進政策の一環で原子力発電を推進する意向を示したものの、現下の景気後退局面から、同国の65%の電力源となっていた石炭及び天然ガス火力発電の急激な依存度削減は難しいと表明していた。
韓国における再生可能エネルギー依存度は2021年実績で僅か7.5%であり、経済協力開発機構(OECD、1948年前身組織設立、1961年現組織に改組)加盟38ヵ国平均の30%を大きく下回っている。
しかし、尹政権は、前リベラル政権が掲げた“2030年までに再生可能エネルギー依存率30%”との目標から“21%”へと後退させている。
なお、サムスン電子の全世界工場での昨年の電力使用量は25.8テラワットアワーと、ソウルの全世帯が消費する電力量のほぼ2倍であり、世界の大手IT企業-グーグル・アップル・メタ(前フェイスブック)・インテル・台湾積体電路製造(TSMC)よりも遥かに多いので、同社の積極政策は世界におけるクリーンエネルギー政策に好影響を与えるものと期待する声もある。
9月15日付韓国『KBSニュース』(1973年開局の公共放送局)は、「サムスン電子、2050年までにカーボンニュートラル達成との目標を発表」として、韓国最大企業のサムスン電子が大胆な環境対策を発表したと報じている。
サムスン電子は9月14日、環境に優しいマネジメントシステムや技術開発促進によって、2050年までにカーボンニュートラルを達成するとの戦略を公表した。
同社は、“クリーンエネルギー依存度100%”を達成するとする活動を行っている「RE100プロジェクト」への正式加盟を決断したことに伴う戦略であると説明した。
この戦略実行のため、2030年までに7兆ウォンと投下するとした上で、“二酸化炭素回収・貯留(CCS、注3後記)”技術開発促進も行い、2030年以降に半導体製造工程での適を目論んでいる、とも言及している。
(注1)RE100 プロジェクト :事業活動によって生じる環境負荷を低減させるために設立された環境イニシアチブのひとつ。英国を拠点に活動する国際環境NGO の クライミット・グループ (TCG、2003年設立) が2014年に創設。事業運営に必要なエネルギーを100%、再生可能エネルギーで賄うことを目標とする。「Renewable Energy 100%」の頭文字から RE100 と名付けられた。主な加盟企業は、(日)イオン・リコー・大和ハウス・積水ハウス・和民、(米)アップル・マイクロソフト・グーグル・GM・シティグループ・バンクオブアメリカ・ゴールドマンサックス・ウォルマート・ブルームバーグ通信、(英)アストラゼネカ・HSBC・ヒースロー空港・マークス&スペンサー・バーバリー、(独)BMW・コメルツ銀行、(仏)ダノン食品・アクサ保険・ロクシタン・フランス郵政公社、(スイス)ネスレ・UBS等。
(注2)カーボンニュートラル:環境化学用語のひとつ、または製造業における環境問題に対する活動の用語のひとつ。カーボンオフセット、排出量実質ゼロという言葉も、同様の意味で用いられる。何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素を同じ量にする、という考え方。
(注3)CCS:通常、セメント工場やバイオマス発電所などの大規模な汚染源からの廃棄物である二酸化炭素を回収し、貯留場所に輸送し、大気の影響のない場所、通常は地下の地層に堆積させるプロセス。目的は、重工業により大気中に大量の二酸化炭素が放出されるのを防ぐことであり、二酸化炭素排出による地球温暖化や海洋酸性化への影響を緩和するための潜在的な手段。
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