トルコの原子力発電所計画は、エルドアン大統領にとっても将来のエネルギー源を担う重要な計画であったが、当初の原子力発電所計画の継続が困難になっている。
ウクライナ戦争のロシア企業への制裁の影響でトルコ南部メルスィン県の地中海沿岸に建設中のアックユ原子力発電所の完成が大幅に遅れるという。当初、2023年がトルコにとって建国100年の記念の年となるので、それに合わせてアックユ発電所の運転開始を予定していた。...
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トルコの原子力発電所計画は、エルドアン大統領にとっても将来のエネルギー源を担う重要な計画であったが、当初の原子力発電所計画の継続が困難になっている。
ウクライナ戦争のロシア企業への制裁の影響でトルコ南部メルスィン県の地中海沿岸に建設中のアックユ原子力発電所の完成が大幅に遅れるという。当初、2023年がトルコにとって建国100年の記念の年となるので、それに合わせてアックユ発電所の運転開始を予定していた。
アックユ原子力発電所の4基の原子炉が完成後には1200MWの発電能力を有し、トルコの電力需要の10%を担うことを目標としていた。さらにトルコはアックユ原子力発電所プロジェクトにより、東のカスピ海と西のEU諸国の間に位置する電力ハブ拠点としての役割を果たしたいと目論んでいた。
また、アックユ原子力発電所はトルコにとって必要に迫られていた。すなわち、トルコは、G20の一員として少なくとも化石エネルギーからクリーンエネルギーへの転換を図ることが差し迫った課題であり、原子力エネルギーへの転換はその目的に合致するものと考えていた。
この計画には、2010年、カナダ、フランス、ロシアが入札し、最終的にはロシアのロスアトム社が選定された。ロシアの多くの銀行が原子力発電所建設の資金提供を行っている。ロスアトムが建設と運転を担うことになり、トルコは25年間、発生電力量の代金をロスアトムに支払う契約になっていた。
しかし、ロシア企業への今回の制裁で、総額200億ドル(=約2.6兆円)規模のプロジェクトへのロシアの銀行からの資金提供が継続できなくなっている。トルコのエルドアン大統領は厳しい立場に追い込まれている。
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