ロシアは、北大西洋条約機構(NATO、1949年設立)の東欧圏拡大に反発してウクライナに軍事侵攻したが、反って中立国のスウェーデン・フィンランドをNATO加盟へと追い込んでしまった。ただ、この動きに関し、米陸軍欧州・アフリカ合同司令部司令官は、両国への増派よりも、目下はポーランド及びバルト三国へのロシアの進軍に備える必要があると米議会で証言している。
5月27日付
『AP通信』は、「米陸軍司令官、スウェーデン・フィンランドへの増派はまだ不要と証言」と題して、米陸軍欧州・アフリカ合同司令部司令官が、新たにNATO加盟を申請した両国よりも、目下はポーランド及びバルト三国へのロシア軍進軍に警戒する必要があると証言したと報じている。
米陸軍欧州・アフリカ合同司令部司令官は5月26日に米上院において、新たにNATO加盟申請を行ったスウェーデン・フィンランド両国よりも、目下はロシア・ウクライナ戦争の波及が懸念されるポーランド及びバルト三国への警戒が優先されると証言した。...
全部読む
5月27日付
『AP通信』は、「米陸軍司令官、スウェーデン・フィンランドへの増派はまだ不要と証言」と題して、米陸軍欧州・アフリカ合同司令部司令官が、新たにNATO加盟を申請した両国よりも、目下はポーランド及びバルト三国へのロシア軍進軍に警戒する必要があると証言したと報じている。
米陸軍欧州・アフリカ合同司令部司令官は5月26日に米上院において、新たにNATO加盟申請を行ったスウェーデン・フィンランド両国よりも、目下はロシア・ウクライナ戦争の波及が懸念されるポーランド及びバルト三国への警戒が優先されると証言した。
クリストファー・カボリ合同司令部司令官(2020年就任)が米上院軍事委員会で証言したもので、同司令官は、トッド・ウォルターズNATO連合司令部作戦本部長(61歳、2019年就任)の後任として指名されたため、同委員会の指名承認を受けるための公聴会に出席していた。
同司令官は、近い将来は北欧における合同軍事演習や増派も考えられるが、目下のところは東欧への警戒が優先されるとした。
同司令官は、“NATO軍の重点先は東欧で、今後のロシア・ウクライナ戦争の展開にもよるが、暫くはこの体制で臨む必要がある”と強調した。
米陸軍はロシアのウクライナ軍事侵攻以来、8万人弱から10万2千人に増派されているが、これは北欧2ヵ国のNATO加盟とは直接関係していないとも証言している。
更に同司令官は、米軍は既に当該2ヵ国と十分連携してきており、(NATO加盟によって)今後更に両国との合同軍事演習等が頻繁になされることになろうとも付言した。
もし同司令官のNATO連合司令部作戦本部長への昇格が承認されれば、国防総省のNATO及び欧州への関与において同司令官の役割は重要となってくるとみられる。
同省の高官によれば、目下米軍はドイツ、イタリア、英国に駐留しているが、必要に応じて、ポーランドやバルト三国等東欧への派兵もカバーされることになるという。
ロシアによるウクライナ軍事侵攻以降、特に東欧諸国が米国製武器や米軍の増派をしきりに要請してきている。
ただ、カボリ司令官は、事情は理解するも、欧州における米軍の活動によってロシアとの直接衝突等に発展しないよう、十分配慮する必要があるとも言及している。
なお、同司令官はロシア関係の専門家で、ロシアにも駐留したことがあり、米統合参謀本部においてロシア担当責任者の任に就いていた。
また、同司令官は、ロシア語・イタリア語・フランス語が堪能である。
閉じる