中国はこれまで、領有権問題にせよ人権問題にせよ、欧米諸国からの非難に対して、全て内政干渉拒否の姿勢を貫いてきている。そうした中、今度は、友好国ロシアの引き起こしたウクライナ軍事侵攻に伴うエネルギー価格高騰に対応するためとして、「パリ協定(注1後記)」批准の際に表明した前言を翻して、石炭鉱山の新規開発プロジェクトを推進しようとしている。
5月24日付
『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「中国の石炭鉱山増強によって世界の温室効果ガス削減実現が危機に」と題して、中国が、折からのエネルギー価格高騰に対応するため、「パリ協定」批准の際に表明した前言を翻して、石炭鉱山増産プロジェクトを推進していると報じた。
直近でリリースされた環境問題調査報告によると、中国が目下、国内石炭鉱山について169もの新規、もしくは増産プロジェクトを推進しようとしており、その結果、化石燃料の元となる石炭生産量が10%も増えることとなり、中国が当初掲げていた気候変動対策の実現を危うくしているという。...
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5月24日付
『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「中国の石炭鉱山増強によって世界の温室効果ガス削減実現が危機に」と題して、中国が、折からのエネルギー価格高騰に対応するため、「パリ協定」批准の際に表明した前言を翻して、石炭鉱山増産プロジェクトを推進していると報じた。
直近でリリースされた環境問題調査報告によると、中国が目下、国内石炭鉱山について169もの新規、もしくは増産プロジェクトを推進しようとしており、その結果、化石燃料の元となる石炭生産量が10%も増えることとなり、中国が当初掲げていた気候変動対策の実現を危うくしているという。
米NGOグローバル・エネルギー・モニター(GEM、注2後記)が5月24日に公表したもので、計画されたプロジェクトが実行されると、年間新たに5億5,900万トンの石炭が増産されることとなり、万が一“絶え間ない”温室効果ガス発生抑制策が講じられない限り、新たに年間600万トンのメタンガスが排出されることになるという。
中国は当初、気候変動対策の一環で、小規模かつ非効率鉱山を閉め、発生ガス抑制可能な石炭鉱山に置き換えていくとしていた。
しかし、今回のGEM調査報告によると、閉山するより新規・増産計画の方がスピードが速く、2030年までに石炭鉱山からのメタンガス排出量を削減して温室効果ガス発生量を減少に転じさせるとした目標達成は危うくなるとする。
習政権としては、折からのロシアによるウクライナ軍事侵攻に伴うエネルギー価格高騰に対応するため、石炭依存度を高めることにしようとしているとみられる。
GEMのライアン・ドゥリスケル・テイト研究アナリストは、“短視眼的な決定は元に戻せない恐れがある”として、“大量のメタンガスの新たな発生源となる大きなリスク”だと非難した。
メタンガスは、直近二十年で比較すると、二酸化炭素より地球温暖化効果が84倍もある。
例えば、今回の中国の石炭増産計画で追加発生する600万トンのメタンガスというのは、米国のガソリン車約1億1千万台が年間に排出する量に匹敵することになる。
(注1)パリ協定:第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたパリにて2015年12月に採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(合意)。1997年に採択された京都議定書以来18年振りとなる気候変動に関する国際的枠組みであり、同条約に加盟する196ヵ国全てが参加する枠組みとしては史上初。排出量削減目標の策定義務化や進捗の調査など一部は法的拘束力があるものの罰則規定はない。2020年以降の地球温暖化対策を定めている。2016年4月のアースデーに署名が始まり、同年9月に温室効果ガス2大排出国の中国と米国が同時批准し、同年10月の欧州連合の批准によって11月4日に発効。日本の批准は、協定発効後の同年11月8日。
(注2)GEM:世界中の化石燃料や再生可能エネルギープロジェクトの情報を収集・分析する非政府組織。2008年設立、本拠はサンフランシスコ。クリーンエネルギーを支援する情報を共有し、そのデータとエネルギー動向に関するレポートは、政府、メディア、学術研究者によって広く引用されている。
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