ウクライナ人の多くは、軍事行動よりも、通貨の下落や天然ガスの価格高騰など、ロシアの侵攻に対するパニックがもたらす潜在的な経済的影響を心配しているようだと、地元の人々がラジオ自由ヨーロッパ/ラジオリバティ(RFE/RL)に語っている。
米
『ブライトバート』によると、ロシアは2014年にウクライナに侵攻し、クリミア地方を植民地化し、現在もウクライナ住民にロシアのパスポートを配布するなどして、その地方を支配している。同国東部では、2014年以降、親ロシア派の「分離主義者」がウクライナ政府に戦争を仕掛けようとしている。ロシア当局は東部の戦争とは無関係だと主張しているが、ロシア政府が同地の戦争を支援していることは周知の事実となっている。
こうした中、アメリカのバイデン大統領が今月19日、ロシアがウクライナに「小規模な侵攻」をした場合、アメリカはウクライナを防衛しないことを示唆したことから、ロシアのさらなる侵攻への懸念が高まった。バイデン大統領はまた、ロシアのプーチン大統領がまもなくウクライナ全域への正式な侵攻を開始すると予測し、国務省がウクライナに駐在するアメリカ大使館員の家族に退避命令を出したことで、国際的な緊張がいっきに高まった。
プラハを拠点としている米『RFE/RL』によると、アメリカが大使館員家族の退避命令を受けて、イギリス、オーストラリア、ドイツ、そしてカナダからも同様の警告が発せられたことに、多くのウクライナ人が動揺したという。
米ミシガン大学での博士課程の研究の為にウクライナを訪れていたジョン・ヴセツカさんは、「戦争や潜在的な脅威について議論する人は、まだ控えめではあるものの、増えている。米国、ロシア、その他からの重要な兵器の増加は無視できない。人々は自分の恐怖や不安を表現したいけれど、過剰反応だと非難されたくない。これは、誰もがある程度感じていることだ。しかしニュースの内容は、不安を助長している。」と述べている。
ウクライナの家計にはすでに危機が訪れている。12月以降、自国通貨グリブナはドルに対して約5%下落した。ウクライナ政府の借入金利は2倍以上になった。退避命令以来、グリブナはさらに半ポイント下落した。
ゼレンスキー大統領以下、ウクライナ政府関係者は、不安を和らげ、恐怖心をなくすように努めている。「これは目新しいことなのか。8年来の現実ではないか。侵略は2014年に始まったのではないのか」。大統領は国民向けテレビ演説で、ドンバスで1万3000人以上の戦闘員や市民が死亡した戦争に言及し、次のように述べた。「すべてはコントロール下にある。パニックになる理由はない」。
キエフ行政学院の学長ヴィクトール・アンドゥルシフ氏は、国民を3つのグループに分けられると言う。「戦争の拡大に備えて積極的に準備をしている人たち、戦争拡大の可能性をまったく信じていない人たち、そして、戦争が拡大するという更なる印や確かな情報を待っている人たち」であるという。また、「人々はガス料金や通貨のことをより心配している。ウクライナ人は、戦争ではなく、こうした問題を気にしている。」大統領をはじめとする政府高官は「人々を落ち着かせるための発言をしなければならない。経済的な問題であり、人々が買い物に走らないようにするために、こうした発言をしている。彼らが問題を理解していないということではない」と説明している。
『AP通信』によると、キエフ在住のアンドレイ・チェコノフスキー氏は、ウクライナ人は8年間ロシアの攻撃の脅威と共存してきたのであり、「今、我々を不安にしているのは繰り広げられている外交ゲームだ。」と述べている。一方、危機的状況にもかかわらず、大勢の人々が国会の外で集会を開き、国の税制の変更を要求し、一時は警察と衝突する場面もあった。
今回の対立では、ロシアはNATOがウクライナを加盟させないこと、旧ソ連圏諸国への駐留などを抑制することを西側から保証することを求めている。しかし、加盟させないという誓約のように、NATOが受け入れられない要求が含まれていることが膠着状態を作り出しており、多くの人は戦争で終わるしかないと懸念している。
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