アメリカのバイデン大統領は就任1周年を迎える前日の19日、昨年11月以来となる久しぶりの記者会見を開いた。しかし、バイデン大統領はウクライナ問題に対する回答で、ロシアに侵入を促すかのような発言をしたことが波紋を呼んでいる。
『AP通信』によると、会見前半、バイデン大統領は、手元のリストをもとに特定の記者に呼びかけるという、予め設定された流れを守って会見をすすめていた。しかし、「CNNの記者が、混乱を招いたアフガニスタン撤退と新型コロナウイルスの検査キット不足など、アメリカ人の多くが政府の能力に懸念を抱いていることに言及した質問を投げかけたことをきっかけに、大統領は暴走し始めた」という。「大統領は手当たり次第に記者を当て始め、極めて伝統的な大統領記者会見が、2時間近くに及ぶ全く別のものになった。」
そうした中、政治専門誌『ザ・ヒル』によると、バイデンは、ロシア軍による「小規模な侵攻」であれば、米国からそれほど攻撃的な反発を受けないかもしれないと示唆した。この発言はソーシャルメディアで話題になり、記者会見の後半で2人目の記者がバイデンにこの件について再度質問した。しかし、その質問への受け答えにも失敗し、今度はロシアの限定的な侵攻となれば、NATO側からの統一した対応が難しくなることをほのめかした。
同誌は、「バイデンの饒舌さは、過去に問題を起こしたことがあるが、19日に再びそれが証明された。」と伝えており、「問題の核心は、バイデンの発言が弱々しく、臆病に聞こえたことであり、プーチンはこれを最大限利用することが懸念される。」と述べている。「特に、今回、ロシアとの交渉におけるアメリカ政府のアプローチは、本気であることを示すことにあった。しかし、バイデンは記者会見で、明白な理由もなく、自らの戦略に墓穴を掘ってしまった」。また、「国内政治の面では、このような発言は、民主党は世界の舞台では弱々しいとする保守派の非難を一層強めるものとなる。」と指摘している。
米日刊紙『ロサンゼルスタイムズ』と英『デイリーメイル』によると、ホワイトハウスと西側諸国首脳は20日、ウクライナへの侵攻を阻止することを目的とした数週間に及ぶ米国主導の激しい外交が台無しになることがないよう、バイデン大統領の失言による被害の収拾に努めたという。
バイデン大統領は翌日の20日、用意された原稿を読み上げ、「プーチン大統領にははっきりと伝えている。誤解はない。もしロシアの部隊がウクライナの国境を越えるならば、それは侵略である。一致された、厳しい経済制裁で対応することになる」と述べた。
英国のジョンソン首相は、「どんな規模であれ、ウクライナへの侵攻は、ウクライナだけでなく、ロシアにとっても大惨事となるだろう」と述べた。また、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はCNNで、「ロシアはウクライナに対して軍事力を行使しない」ように呼びかけ、バイデンの発言は侵略を促すものではないと説明した。
一方、ウクライナの大統領は、自国への「小さな」侵攻でさえも破滅的であり、「大国には、小さな侵略や小国というものは存在しないことを認識してもらいたい。愛する人を失うことに対し、取るに足りない死傷者、少しだけの悲しみなどは存在しない」と反論した。同国の外相は、「小規模な侵略」は「半分攻撃的」であると言っているようなもので、非論理的であると指摘した。
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