17日開幕のテニス全豪オープンで、大会4連覇と4大大会21度目の優勝が懸かっていたノバク・ジョコビッチ選手が、ビザを取り消され出場できずに国外退去となった。祖国セルビアでは国民的英雄の送還に落胆の声が聞かれている。
1月16日付豪
『ABC』:「豪政府に怒るセルビア人、理由は様々」:
セルビア人の多くはノバク・ジョコビッチ選手の強制送還を決めた豪政府に批判を向けるが、その理由は複雑で、自国の英雄を称えるという点に留まらない。
同選手はセルビア南部ノベルグラード市の祖父のアパートで過ごしたが、ここは1990年後半のコソボ紛争で同市を襲った爆弾を逃れた場所だ。戦争が続いたセルビア人には30年程楽しい記憶はなく、ノバクはやっと国民に希望を与えた存在なのだという。...
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1月16日付豪
『ABC』:「豪政府に怒るセルビア人、理由は様々」:
セルビア人の多くはノバク・ジョコビッチ選手の強制送還を決めた豪政府に批判を向けるが、その理由は複雑で、自国の英雄を称えるという点に留まらない。
同選手はセルビア南部ノベルグラード市の祖父のアパートで過ごしたが、ここは1990年後半のコソボ紛争で同市を襲った爆弾を逃れた場所だ。戦争が続いたセルビア人には30年程楽しい記憶はなく、ノバクはやっと国民に希望を与えた存在なのだという。
感染症の専門家で政府のコロナ対策を批判するラドヴァノビッチ医師は、「ポピュリスト政府は人気取りのため、ワクチン普及と同時に、ワクチン反対派をも増やした。国民はその複雑なメッセージに困惑し、ワクチン接種率は今も約50%しかない」という。
豪のアレックス・ホーク移民相は、先週のビザ取り消しは「健康と人々への影響を考えた上での決定」とした。
ジョコビッチ氏は、ワクチン反対を表明してはいなかったが、豪政府に決定をきっかけとし、今や反ワクチンの象徴的存在だ。
ベルグラードにある研究社会開発センターのコバチェビッチ弁護士は、「ジョコビッチほど有名な富裕層で、影響力のある人の扱いがこれなら、豪州への移民はどれほど力不足かというのが明らかとなった。ある意味、豪政府の嫌がらせともいえる。弁護士に大金を払える人でも、テニス界の最高の選手にこの扱いなら、他の皆がその対象となりうる」と懸念する。
同日付『AP通信』:「ジョコビッチ選手が豪から送還されても、ワクチン議論は継続」:
ジョコビッチ選手送還という豪の決定は下ったのだが、その対応について世論は割れている。
ジョコビッチ選手は、以前に感染歴があることで、ワクチン免除での豪オープン出場が許可されたが、入国に際し、当局から免除は無効だと送還される政治劇を繰り広げた。同氏は祖国セルビアで絶大な支持を得ており、セルビアの首相は、豪を批判し彼の帰国を歓迎すると述べた。また、反ワクチン派にとっても英雄と崇められル存在で、今月16日にはオランダで行われたデモ行動で、彼を支持するポスターも掲げられていた。
ジョコビッチ選手の件での議論は続いており、豪の国民への影響を考慮しビザを取り消す豪の厳格な特例を認めさせる結果となったが、なんでも普通と違ったアプローチを好む同氏に、コロナワクチンに関してもリーダーシップを発揮してほしかったとの意見もある。
一方で、批判的な声もある。イタリアのテニス選手、アドリアーノ・パナッタ氏は、「送還は当然だ。ビザを出せるはずない。大きな間違いを犯し、国際的な問題を生じさせた」イタリアのニュースで述べている。フランスのアリーゼ・コルネ選手は、意見を述べる立場にないが、「ノバクは選手の先頭に立ってくれる人だが、誰も逆に味方になれなかった」とツイッターで述べている。
コロナ対策に変更がない限りは、ジョコビッチ選手は次のグランドスラムである5月からの全仏オープンへの出場権を保持しており、ワクチン未接種の選手用の「ヘルスバブル」での滞在が可能だという。ウィンブルドンも同様で、イギリスは試合やトレーニングに参加せず宿泊施設での隔離を条件に、渡航する選手へのコロナ規制免除を行っている。全米オープンを開催する全米テニス協会は、ワクチン接種条件については連邦や州政府の規則に従う方針を示している。
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