産油国サウジアラビアが、2060年までに同国の温室効果ガス排出の実質ゼロを目指すと表明。2050年が目標の米国より10年遅れる。新たなエネルギーへの投資や植林にも力を入れるとする一方、世界の石油市場での主導的な役割は変わらないとしている。
10月24日付
『ロイター通信』は「最大産油国サウジアラビアが2060年に排出ゼロ目標」との見出しで以下のように報道している。
サウジアラビアのムハンマド皇太子が23日、「循環型炭素経済プログラム」により、化石燃料を主体とする温室効果ガスの排出量を2060年までに「ネットゼロ」とする目標を発表。今月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前に、サウジグリーンイニシアティブ(SGI)にて発言。...
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10月24日付
『ロイター通信』は「最大産油国サウジアラビアが2060年に排出ゼロ目標」との見出しで以下のように報道している。
サウジアラビアのムハンマド皇太子が23日、「循環型炭素経済プログラム」により、化石燃料を主体とする温室効果ガスの排出量を2060年までに「ネットゼロ」とする目標を発表。今月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前に、サウジグリーンイニシアティブ(SGI)にて発言。
ムハンマド皇太子とエネルギー相は、気候変動対策を講じるとするが、石油の重要性は変わらないとし、石油市場の安定化に努めるとしている。2030年までに炭素の排出量は半減し、メタンガスについても2020年比3割削減の取り組みに参加するという。
サウジアラムコのナセルCEOは、石油を「悪魔化」することは逆効果だと指摘。同社は石油、ガスの生産能力を拡大しつつ、50年までに同社の排出量実質ゼロを目指すとしている。サウジ国営メディアによると、国連のグテレス事務総長は、サウジ側との電話会議で排出削減のイニシアティブを歓迎したという。
10月23日付米国『NPR』は「サウジアラビアが2060年の温室効果ガスゼロ排出目標を表明」との見出しで以下のように報道している。
最大の産油国の一つであるサウジアラビアが2060年の温室効果ガス排出ゼロ目標を発表。100以上の国が取り組む気候変動対策に参加する。国内の排出削減を目標とするが、石油や天然ガスへの投資の抑制はせずエネルギー市場をリードすることに変わりはないという。
ロシアや中国と肩を並べ2060年をゼロ目標とする同国は、2030年までに4億5000万本の植林、荒廃した広大な土地の再生、首都リヤドをサステイナブルな都市とすること目指す。リヤドでの環境フォーラムでアブドゥラジズ・ビンサルマンエネルギー相は、「エネルギー資源の輸出による経済成長が国の主力であることは明白」としている。今後石油の需要が増すとされる中国やインドへの輸出に力を入れるとされる。
「カーボン循環経済」アプローチで、排出ゼロを目指すとするが、短期、中期的に削減する方法、排出ピークがいつとなるかについては発言していない。アラブ首長国連邦も今月、2050年のCO2排出ゼロに参加すると発表したが、目標達成方法の詳細は示せていない。
産油国諸国は、急速な燃料シフトは、ベーシックエネルギーへのアクセスに乏しい貧国や人口の少ない国に影響が大きいと主張しており、サウジアラビアも温室効果ガスは、化石燃料だけを指すものではないとの主張を行ってきた。
国際環境NGOグリーンピースの文書によると、サウジは、カーボンキャプチャー技術の推進で、各国の石油燃料使用の継続を狙うとみられ、実証されていないこの技術で、更に温室効果ガス排出を増やし、後から大気中より炭素を取り除けるとの楽観論に頼るものとみられる。
イギリスのチャールズ皇太子もリヤドでのフォーラムに参加。居住を脅かすほどの中東の気温上昇現象を指摘した。バイデン米政権の気候変動問題担当ジョン・ケリー代表は24、25日サウジを訪問し3日間のフォーラムに参加する予定。
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