今年8月半ば、米軍がアフガニスタンから撤退した途端、イスラム主義勢力タリバン(1994年から活動、求道者の意)が同国全土を瞬く間に制圧した。そして、米軍撤退を機に、中国が早速同国に近寄り始めている。そうした中、タリバン側から、今後中国からの巨額投資が期待されているとの表明がなされたが、米国政府関係者は皆懐疑的である。
10月17日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国、タリバンが中国からの対アフガニスタン投資期待との表明に懐疑的」
米高官や無党派の政治専門家が10月15日、中国がアフガニスタンに数十億ドル(数千億円)の投資をする準備をしているとタリバン関係者が発言したことに対して、懐疑的な反応を見せた。
まず、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(42歳)は、アフガニスタン経済が破綻している以上、米国政府としては、中国が同国への影響力を強めていくことへの懸念よりも、困窮しているアフガニスタン人を如何に支援していくか、ということの方に関心を払っているとコメントした。...
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10月17日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国、タリバンが中国からの対アフガニスタン投資期待との表明に懐疑的」
米高官や無党派の政治専門家が10月15日、中国がアフガニスタンに数十億ドル(数千億円)の投資をする準備をしているとタリバン関係者が発言したことに対して、懐疑的な反応を見せた。
まず、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(42歳)は、アフガニスタン経済が破綻している以上、米国政府としては、中国が同国への影響力を強めていくことへの懸念よりも、困窮しているアフガニスタン人を如何に支援していくか、ということの方に関心を払っているとコメントした。
同報道官は『VOA』のインタビューに答えて、“米国政府は、国際社会と連携して、如何に人道支援をしていくかという点と、彼らが真に望むことに応えられるよう、適切な関係者らに直接はたらきかけていくことに注力している”と付言した。
タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官(42歳)は今週初めにカブールで、今後中国からの数十億ドルの投資と引き換えに、中国人労働者やその資産について安全を保障することとした、と表明していた。
同報道官は、“中国はアフガニスタンのいくつかの分野への投資に興味を示しており、我々は今後詳細について交渉したいと考えている”とも言及した。
同報道官によると、“具体的一例として、メス・アイナク地区(同国最大の銅鉱山と仏教遺跡を有する、カブールから40キロメートル南東)への投資を中国は考えており、我々も同地域開発のためにその投資を必要としている”という。
中国は、2013年より主導する「一帯一路経済圏構想」の一環で推進している、陸上及び海上のシルクロードへ連結させる「中国・パキスタン経済回廊」開発計画に、イランに加えてアフガニスタンも参画するようはたらきかけてきていた。
しかし、ワシントン本拠のシンクタンク、ハドソン研究所(1961年設立)南・中央アジア部門のフセイン・ハッカーニ代表(65歳、パキスタン出身ジャーナリスト)は、今回の中国によるアフガニスタンへの投資の話は、“多分に希望的観測”と評価されるとする。
何故なら、数十億ドルも巨額を投資するとしたら、当然毎年数百万ドル(数億円)のリターンが条件となるが、現在のアフガニスタン経済状況から考えて、それは全く無理な話であるからだとする。
同代表によれば、中国はこれまで僅か3,100万ドル(約35億円)の人道支援を行っているだけである以上、“これを以て、数十億ドルもの投資の用意があると期待させるのには無理がある”という。
従って、中国としても、同国に巨額投資を行う前に、国際社会が如何にタリバン政権を承認するかを見定める必要があると考えているはずだとする。
ともかく、米国の競争相手とされる中国もロシアも、まだ正式にタリバン政権を認めておらず、彼らとしても、タリバンが平和維持を約束すると表明しているものの、政治的安定や安全保障上の環境が整うまで、同国への投資はできないとみられる。
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