ルモンド紙は「2015年のノーベル医学生理学賞は科学だけでなく政治的」意味あいがあるとして注目し、「選考機関であるスウェーデンのカロリンスカ研究所は、ノーベル賞授与によって、長年顧みられなかった熱帯の寄生虫疾患にスポットライトを当てた」と、その意義を語る。
『レゼコー紙』、
『リベラシオン紙』によると、3人の共同受賞者のうち、中国のト・ユーユー氏はマラリアに対する新たな治療法の発見によって受賞した。...
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ルモンド紙は「2015年のノーベル医学生理学賞は科学だけでなく政治的」意味あいがあるとして注目し、「選考機関であるスウェーデンのカロリンスカ研究所は、ノーベル賞授与によって、長年顧みられなかった熱帯の寄生虫疾患にスポットライトを当てた」と、その意義を語る。
『レゼコー紙』、
『リベラシオン紙』によると、3人の共同受賞者のうち、中国のト・ユーユー氏はマラリアに対する新たな治療法の発見によって受賞した。ト・ユーユー氏は伝統的な中国漢方と欧米の医学との狭間で成功した点で特異で、「ブレンドの象徴」と形容される。ヨモギ科のクソニンジンからの抽出物で、マラリアの治療の発見者として受賞した。またキャンベル氏と大村氏が発見した新薬アベルメクチンによって、河川盲目症とフィラリア症の発症が減少した事で受賞した。
大村氏が土壌から抽出したアベルメクチンの誘導体であるイヴェルメクチンは世界保健機関(以下WHO)の必須医薬品リストに載っている。ルモンド紙は新薬発見だけでなく、共同開発した米メルク社が失明を引き起こす河川盲目症撲滅のために無料で薬を提供した事にも触れる。WHOは「前例のない寄付」とたたえ、「治療の大規模キャンペーンのお蔭で寄生虫疾患の大部分を制御できた」と功績を評価する。重要な選考基準である「人類への貢献」度はこの点でも大きいようだ。特に国境なき医師団(MSF)の執行ディレクターは「最も顧みられることのない途上国の農村部で何百万という命を救った」点で「この10年で様々な実績を塗り替えた」点で「大きな価値を持つ」と評価する。
ルモンド紙は「今回の受賞は南国を打ちのめす感染症の惨状への取組みを刺激するに違いない」と期待を寄せ「ノーベル賞を審査するカロリンスカ研究所はアフリカなど南国がおかれる状況について強力なメッセージを送った」とパリのビジャ病院の熱帯感染症の教授達の見解を共有する。「現在の研究開発は、高収益市場における高価格のシステムに基づいているため、病気治療の供給になっていない」と指摘し、「2008年にノーベル賞を受賞したHIV感染の医薬と違い、寄生虫による疾患研究は資金不足」である現実に触れる。「今回の受賞を、発展途上国で無視されてきた患者のニーズに応じる研究開発を優先するための措置と持続可能な資金提供の形を喚起するもの」として受け止めるべきと提言する。現在でもマラリア感染者の50万人以上が死に至り、2013年の感染者数は2億人と見積もられ、アフリカの主な死亡原因のままで子供の死亡原因の9割を占める。
ルモンド紙がこの受賞を「非常に政治的影響がある医学賞」と形容する通り、社会を動かす力を持つ発見と受賞は「人類への貢献」が重視されるノーベル賞の真髄といえるのではないだろうか。
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