1962年に勃発した中印国境紛争以来、ヒマラヤ山脈における中国とインド間の領土問題での対立は依然続いている。昨年半ば及び今年初めにも、武力衝突が発生しており、双方とも一歩も引かない構えである。そうした中、冬季に豪雪のために通行が不可能となる同地区に、インドが9億ドル(約1千億円)余りをかけてトンネル・橋を建設し、通年での往来を可能とする計画を推進している。
9月30日付
『AP通信』:「インド、カシミール地方で戦略上有益なトンネル掘削工事を推進」
世界最高峰のヒマラヤ山脈の西端にあるカシミール地方は、インドが実効支配しているが、その北東接のアクサイチンを実効支配している中国とは、しばしば国境問題で衝突を繰り返してきている。
そうした中、インドがこの程、9億3,200万ドル(約1,025億円)を投じて、合計4本のトンネルを開通させて、インド北端のジャンムー・カシミール州都のスリーナガルから同地方中央のラダック(2019年にインドが連邦直轄地に指定)まで、通年での往来を可能とさせようとしている。...
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9月30日付
『AP通信』:「インド、カシミール地方で戦略上有益なトンネル掘削工事を推進」
世界最高峰のヒマラヤ山脈の西端にあるカシミール地方は、インドが実効支配しているが、その北東接のアクサイチンを実効支配している中国とは、しばしば国境問題で衝突を繰り返してきている。
そうした中、インドがこの程、9億3,200万ドル(約1,025億円)を投じて、合計4本のトンネルを開通させて、インド北端のジャンムー・カシミール州都のスリーナガルから同地方中央のラダック(2019年にインドが連邦直轄地に指定)まで、通年での往来を可能とさせようとしている。
インド高官によれば、最初の6.5キロメートル(4マイル)のトンネルは既に開通し、スリーナガルから避暑地であるソナマルグまで、冬場でも行けることになったとし、これは同国にとって初めての事態だという。
そして、これらのトンネルはインドにとって最長かつ最標高(3,485メートル、1万1,500フィート)に位置するトンネルになるという。
カラコルム山脈(ヒマラヤ山脈西端)のラダックでは、実効支配線(LAC、注後記)を挟んで、直近でもインドと中国が16ヵ月余りも小競り合いを繰り返している。
両国とも、同地方には各々数万人の兵士、戦車や戦闘機を配備して、領土問題で一歩も引かない体制を敷いている。
かかる背景から、インドが進めているトンネル・橋建設計画は、今後の対中政策において有効となるとみられている。
専門家によれば、トンネル開通で物流のみならず、軍事上のアクセスも容易になり、戦略的活動を実行しやすくなるという。
なお、当該トンネル建設工事は2026年に完成と見込まれているが、9月28日に建設サイトを訪問したインドのニティン・ガッカーリ道路輸送・ハイウェイ担当相(64歳)は、2024年の下院総選挙までには完了させたいと発言している。
(注)LAC:かつてのジャンムー・カシミール藩王国の領域において、1962年の中印国境紛争の後に設定された、インドと中国との支配地域を分ける境界線。
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