世界保健機関派遣の専門家が漸く中国入り、しかし果たして真実を探し出させるか?【米メディア】
既報どおり、世界保健機関(WHO)の専門家が7月11日、5月のWHO総会決議に基づいて漸く中国入りした。新型コロナウィルス(COVID-19)の宿主は何で、どのようにしてヒトヒト感染が発生したのか等解明されることになるのか注目される。ただ、受け入れる中国側が、WHOに対して元のウィルスが欧州や米国起源である可能性についても調査するよう言い出しており、依然政治的問題を中々切り離せそうもない。
7月10日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「WHO専門家、COVID-19発生源調査のため中国入り」
WHOから派遣された専門家チームが7月10日、中国入りした。
目的は、昨年末に武漢(ウーハン)の海鮮卸売市場から感染が拡大されたとされるCOVID-19の発生源を調査することである。
WHOのタリク・ジャサレビッチ報道官は、派遣されたのは獣医と疫学専門家で、7月11日に中国側専門家と会い、“調査対象項目等”につき打ち合わせると発表した。...
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7月10日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「WHO専門家、COVID-19発生源調査のため中国入り」
WHOから派遣された専門家チームが7月10日、中国入りした。
目的は、昨年末に武漢(ウーハン)の海鮮卸売市場から感染が拡大されたとされるCOVID-19の発生源を調査することである。
WHOのタリク・ジャサレビッチ報道官は、派遣されたのは獣医と疫学専門家で、7月11日に中国側専門家と会い、“調査対象項目等”につき打ち合わせると発表した。
同報道官が『VOA』に語ったところによると、“COVID-19の宿主は何で、どういった経緯でヒトへの感染まで広がったのかを解明すること”としている。
今回のWHOの調査は、政治的に微妙な時期に行われることになる。
何故なら、ドナルド・トランプ大統領は既に、WHOが中国の操り人形になっていることを理由に、来年半ばを以てWHOからの脱退を国連宛に正式通告しているからである。
マイク・ポンペオ国務長官も7月9日、“WHOは本来、世界流行の恐れがある感染症について前広に世界に注意喚起すべきであるのに、(中国に忖度して)時間稼ぎばかりして中々具体的指針を発表しようとしなかった”と改めてWHOを非難するコメントを発表している。
一方、中国外交部(省に相当)の趙立堅(チャオ・リーチアン)報道官は7月10日、“中国が要請して、WHOによるCOVID-19由来の調査が行われることになった”と強調して、国際社会から指摘されている中国政府の透明性の欠如との批判をかわそうとしている。
ただ、WHOの最新の報告によれば、中国でCOVID-19感染拡大について最初にWHO本部に報告したのは、中国政府ではなくWHO中国支所の駐在員だったという。
同駐在員は、武漢市公衆衛生委員会の12月31日付ウェブサイトに、“ウィルス性肺炎”の症例が出ていると記載されていることを発見して本部に報告したとし、同時に、中国当局からは今年1月3日まで何ら関係情報の連絡は受けていないとしている。
WHOの取り決めによれば、加盟国は公衆衛生に影響を及ぼす恐れのある事案については、事態把握後24時間以内にWHO宛に報告するよう義務付けられている。
一方、同日付『ブライトバート』オンラインニュース:「中国、WHOに対して米国のCOVID-19発生源調査も行うよう要求」
ポンペオ国務長官は7月9日、中国のCOVID-19感染流行に関わる様々な問題があったことを改めて言及した上で、“中国は今回のWHO調査チームを受け入れたものの、果たして適切な調査が行われるように対応してくるのか懸念している”とコメントした。
このコメントに反発して中国外交部の趙報道官は7月10日、同長官のコメントは“偽善ぶった”ものだと非難した上で、“中国は大国として今回の責任について、米国よりよく理解している”と強調した。
また同報道官は、“米国はWHOからの脱退を宣言しているのに、今回のWHO調査チームに中国が協力しようとしている件について、一体どういう立場で物申すのか”と非難している。
更に同報道官は、WHOは“米国におけるCOVID-19発生源の実態も調査すべき”だとも付言した。
なお、中国疾病予防管理センターは7月10日、最近の北京におけるCOVID-19感染拡大は、武漢で発生したCOVID-19とは明らかに違い、欧州等から持ち込まれたウィルスの可能性があると発表している。
中国国営メディア『環球時報』も、北京やその他都市で新たに感染流行しつつあるウィルスについて、広範囲の試験研究を行った結果、武漢で感染拡大したウィルスとは決定的に異なるもので、欧州や中南米等から輸入された冷凍食品に付着したウィルスが国内で感染を広げつつあることが判明していると報じている。
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米中間緊張が高まる中、中国側要請(?)で米中外交トップ間ハワイ会談設定【米・フランスメディア】
米中両国関係は、今年に入ってからだけでも、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行、香港に関わる新たな反民主化法案、更には米国の人種差別問題再燃等々、お互いが相手を責め、また、マスメディアも対立を煽る論調で報じていることから、一触即発の緊張感が漂っている。そうした中、米国側の責任追及の手を緩ませたいと期待してか、中国側の要請で米中外交担当トップが急遽会談することになった。ただ、会談予定は一日だけで、大きな成果は期待できないものの、ヒートアップした双方の熱冷まし効果はあるかも知れない。
6月15日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「香港及び軍縮問題が米中会談の議題」
中国国営メディアが、米中間の対立を煽る最中、米中の外交担当トップが秘密会談を持つことになった。
6月17日にハワイで開かれることになった両国会談には、マイク・ポンペオ国務長官(56歳)と楊潔篪(ヤン・チエチー、70歳)中央外事活動委員会弁公室主任が出席予定である。
6月22日には、米ロ軍縮会議がウィーン(オーストリア)で開催される予定であることから、米国側は中国にも同会議への参加を促すものとみられる。...
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6月15日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「香港及び軍縮問題が米中会談の議題」
中国国営メディアが、米中間の対立を煽る最中、米中の外交担当トップが秘密会談を持つことになった。
6月17日にハワイで開かれることになった両国会談には、マイク・ポンペオ国務長官(56歳)と楊潔篪(ヤン・チエチー、70歳)中央外事活動委員会弁公室主任が出席予定である。
6月22日には、米ロ軍縮会議がウィーン(オーストリア)で開催される予定であることから、米国側は中国にも同会議への参加を促すものとみられる。
米高官が『VOA』に語ったところによれば、米国は中国が進める香港国家安全法制定を非難する一方、ジョージ・フロイド氏惨死問題より明らかな人種差別を放置しているのはダブルスタンダード(手前味噌の対応)だと中国高官がトランプ政権を激しく非難していることから、米中会談に“乗り気ではなかった”が、中国側からの要請に応えることになったという。
リック・スコット上院議員(フロリダ州選出共和党員)は『VOA』のインタビューに答えて、“中国共産党が、透明性を確保し、米中貿易に関わる第一段階の約束を堅持した上、人権蹂躙・米国知的財産の窃盗・南シナ海での軍事拠点化・香港における民主的権利の剥奪・台湾への脅し等々を止めない限り、米国にとって信頼できるパートナーだとはとても認めようがない”と強調している。
今回の米中会談は、米国が中国による香港の一国二制度を危うくする香港国家安全法制定を思い止まらせようとしている最中に予定されたものだが、大方の見方は、中国が米国の言いなりになることなど考えられないとする。
6月15日にポンペオ国務長官と電話会談した欧州連合(EU)の、ジョセフ・ボレル上級外交・安全保障担当委員(73歳、スペイン人政治家)は、中国にとって一番関心があるのは、香港問題より如何にして疲弊した経済を回復させるかだとした上で、“EUは、法と秩序を最重要とする観点から、米国の主張を支援する”とコメントした。
なお、米中間の外交・安全保障問題協議は、2018年11月9日に開催された米中外交・安全保障対話以来開かれていない。
そこで専門家の何人かは、今回の米中ハワイ会談で両国間の緊張緩和はほとんど望めないとみている。
オバマ政権時代に国際交流部門責任者であったブレット・ブルーエン氏は『VOA』のインタビューに答えて、米国が問題視している中国側問題は、COVID-19感染流行に関わる初期対応、米中貿易不均衡、香港反民主化、台湾問題そして南シナ海と多岐にわたるが、“中国が今回の会談で臨むのは、香港の管理強化を見逃すこと、更に言えば、最大の関心事として、COVID-19でこれ以上中国を責めないよう米国側に求めるものとみられる”とコメントした。
更に同氏は、“トランプ大統領の再選が危ういことから、敵に塩を送る意味で、中国側が新たに数十億ドル(数千億円)相当の米産品を買い付ける提案をすることで、ホワイトハウスに対して、中国への責任追及を弱めるよう要望する”とみている。
一方、米空軍元准将のロバート・スポールディング氏は、“中国が最も関心を寄せているのは経済問題”だとし、“中国の金融システムは崩壊寸前で製造業は中国から逃避しつつあるから”だとコメントした。
なお、来週(6月22日)、米ロ国防トップによる軍縮会議がウィーンで開催されるが、マーシャル・ビリングスリー軍備制限特命全権大使は、“中国も参加するよう招いているが、(仮に参加しても)中国が誠実に交渉に臨むかは疑問”だとツイートしている。
トランプ政権はかねてより、米ロ両国の戦略核兵器を半減させることを謳った、2021年2月に失効する新戦略核兵器削減条約(New START、2011年2月締結)の更新を強く表明しているが、同政権としては、これに中国の参加を望んでいる。
同日付フランス『AFP通信』:「両国間緊張の中、米中外交トップが秘密会談」
香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙報道によると、関係筋の話として、ポンペオ国務長官と楊潔篪外交担当トップが今週、ハワイで秘密会談を持つことになったという。
米『ポリティコ』政治専門ニュースや『CNN』も報じていて、場所は真珠湾至近のヒッカム空軍基地(ホノルル)だとする。
中国国営『環球時報』報道では、中国外交部(省に相当)の趙立堅(チョウ・リーチャン)報道官は、“事態が判明すれば更に説明する”とした上で、“外交ルートを通じて二国間で協議を継続している”とのみコメントしたという。
トランプ大統領はかねてより、習近平(シー・チンピン)国家主席とは盟友関係にあるとしているものの、政権の公式対応としては、共和党からの突き上げもあり、COVID-19、香港国家安全法、更には南シナ海覇権問題等より、中国を敵視していることから、今回の外交トップ会談で大きな進展が得られるとはみられない。
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