タイでは昨年のクーデターにより軍事政権が発足した。国民から絶大な人気で崇められている国王は今月88歳を迎える高齢で後継者問題で依然から国民は不安を抱いていた。それに加え経済も低迷し、犯罪率が増えているようだ。そんな中、現地版ニューヨークタイムズ紙の紙面上で、現地印刷会社によって掲載を取り消された記事があった。そこには、鋭い口調でタイの現状を捉えた言葉が綴られていた。
12月1日付け
『BBC』によると、1日火曜、タイでニューヨークタイムズ紙1面と6面の一部が白紙で発行されたと報じた。オンライン版では削除された記事は見ることができる。現地印刷会社は「AP通信」を通して記事は「不適切」との理由で削除したとコメントしている。
タイは2014年5月のクーデター以来軍事政権下にあり、反逆罪での逮捕が相次ぐ。政府がこの措置に関与したとの情報は得られていない。87歳のプミポン・アドゥンラヤデート国王はここ数年体調を崩しており、政治的分裂と暴動が加速したタイ社会において秩序と安定のシンボルである国王の病状に国民は敏感になっている、と報じている。...
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12月1日付け
『BBC』によると、1日火曜、タイでニューヨークタイムズ紙1面と6面の一部が白紙で発行されたと報じた。オンライン版では削除された記事は見ることができる。現地印刷会社は「AP通信」を通して記事は「不適切」との理由で削除したとコメントしている。
タイは2014年5月のクーデター以来軍事政権下にあり、反逆罪での逮捕が相次ぐ。政府がこの措置に関与したとの情報は得られていない。87歳のプミポン・アドゥンラヤデート国王はここ数年体調を崩しており、政治的分裂と暴動が加速したタイ社会において秩序と安定のシンボルである国王の病状に国民は敏感になっている、と報じている。
12月2日付け
『VOAタイ』(オンラインタイ語版)では、同様の事実関係を記載した上で、当記事を書いた筆者トーマス・フラー氏の名前も明記している。
12月1日付け
『Newsweek』では、同様の事実関係を報じ、現地印刷会社、イースタンプリンティング社の役員は、この記事は軍事政権と”瀕死の国王”の後継者について「不適切」な記述があったため削除されたと述べた、と報じた。
タイでは軍政府への侮辱は3~15年の禁固刑が科せられている。
今回の記事の削除は、インターナショナル・ニューヨーク・タイムズや編集者の意図ではない、と空欄中央部には綴られている。この印刷会社は今年9月22日付け当紙でも、タイ軍政府に関する記事を「非常に慎重に扱うべき」との理由で掲載を拒否している。
ここ数年でタイの言論の自由は地に落ちた。2015年の”国境なき記者団”の世界報道自由指数によれば、タイは今年180国中134位となった。(2002年は65位、2004年は59位)
国境なき記者団によると、当局は報道局への圧力やジャーナリストの拘束により「巧みに」軍政を押し進めている、と報じている。
12月1日付け
『The Guardian』によると、先月、印刷コスト高を理由に、タイ現地版ニューヨークタイムズは今年末で現地版を廃止する意向を発表した、と報じている。
又、通常ジャーナリストは王室取材においては自己規制で行ってきたが、当軍政下では知識人や政治家を拘束し批判を取り締まっている。多くは”態度の改め”を理由に逮捕、”拘束プログラム”に沿って数百人を尋問してきた。当局によると、2年の間に暫定的に数段階を経て民主化を進めるとして反対派を抑えてきている。軍事政権首相のプラユット・ジャンオーチャー氏は、このプログラムは政権の秩序を乱す批判に対処するものだとしている。又、先月ウェブニュース「カオソッド」を通して政権批判をする大学関係者らの安全は保障できない、と述べたとされる。「法を恐れないなら、好きにしてよい。もし怖れを知らないなら、誰かに銃で撃たれたり、手榴弾を投げられても、それに甘んじねばならない。」
さて、11月29日付け
『ニューヨークタイムズ』オンライン版には今回削除された記事が載っている。「Thai Economy and Spirits Are Sagging(落ち込むタイの経済と精神)」と題した記事の中では、間もなく88歳を迎える”神のような存在”が9月以来公の場に姿をみせず、軍事政権がいかに独裁的で、タイの経済が低迷し、凶悪事件が増えており、人々が怒り嘆いている様子を報じている。
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