タイ;国王が公の場に(2015/12/16)
軍事政府による批評家や活動家の拘束はここ数か月で増え続けている。病院から連行されたり、米大使までもがその発言で取り調べられている。そんな中、健康が心配された国王は誕生日式典、政府行事にともない公の場に姿を見せた。一方で巷では国王の愛犬についての映画が劇場で人気となっている。ところがその愛犬をネット上で侮辱したとして”侮辱罪”が言い渡されるなど、些細な事でさえ許されない状況となってきている。
12月15日付け
『The Guardian』 他海外メディアによると、政府への”反逆罪”で37年の禁固刑を言い渡されている工場員が国王のペットの犬に関する侮辱の容疑がかけられていると報じている。タイでは王家への批判、名誉棄損、侮辱行為には最高で15年までの禁固刑が科せられる。
タナコーン・シリパブーンは国王が拾った雑種犬ペット”トンデーン”をネット上で”皮肉を込めて”コメントしたとして起訴されている。...
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12月15日付け
『The Guardian』 他海外メディアによると、政府への”反逆罪”で37年の禁固刑を言い渡されている工場員が国王のペットの犬に関する侮辱の容疑がかけられていると報じている。タイでは王家への批判、名誉棄損、侮辱行為には最高で15年までの禁固刑が科せられる。
タナコーン・シリパブーンは国王が拾った雑種犬ペット”トンデーン”をネット上で”皮肉を込めて”コメントしたとして起訴されている。国王は2002年この愛犬に関する本を出版、今年アニメ映画化(題名”トンデーンさん;インスピレーション”)され劇場2位の人気である。
タナコーンの弁護士アノン・ヌンパ氏は「インターナショナル・ニューヨークタイムズ」紙を通して「具体的に愛犬の何を侮辱したのか詳細が明らかにされていない。まさか国王の愛犬が法に関わるとは予想もつかなかった。」と述べている。当愛犬不敬事件に関するニューヨークタイムズ紙の記事は火曜、現地印刷会社の意図により掲載されなかった。このような措置はタイ不景気についてのみ書かれていた記事を含め今回で4回目となる。昨年5月の当政権発足以来不敬罪で男性一人がフェイスブックに王室への侮辱を投稿したとして30年の禁固刑となっている。
タナコーンも公園記念碑の建設に関する軍の腐敗をフェイスブックで扇動したとして先週起訴され、今週月曜まで拘束されていた。
軍事政府は、批評家に対する不敬罪を行使するが、多くのタイ人は2005年国王が誕生日の演説で彼が人間であり反対意見も受け入れると述べた事を振り返る。
現在88歳となった在位世界最長プミポン国王は、第二次世界大戦終戦以来影響力を持っており、流血と反乱の政治的分裂になくてはならない重要な存在感を示してきた。しかし、王の体調不良による皇太子への王位継承問題や、軍による暫定2年とした時間枠での民主主義への復帰に国民の不安が高まっている。
最近着任した米国大使グリン・デイヴィス氏も不敬罪で取り調べが行われている。タイ警察によると、大使は演説の中で、軍事政府を称賛しつつも軍事裁判所による前例のない長期実刑判決を批判したとのことである。タイ警察は大使の外交特権は保障されるとしている。
12月15日付け
『ロイター』 は次のように報道している。
反政府活動家シラウィット・セリチワット氏は、ラチャダー刑事裁判所が火曜日、25歳の活動家サネット・アナンタウォン氏解放の懇願書を拒否したと述べた。
報道関係者の裁判所法廷での取材は許可されていない。ヒューマン・ライト・ウォッチ(*注)によるとサネット氏は日曜、手術を待っている病院で覆面警官らにより連行された。ヒューマン・ライト・ウォッチ アジア支部長ブラッド・アダムス氏は「タイ軍部は病床から活動家を連行するほど非情な手段に出始めた」と述べる。対する軍スポークスマン、コロネル・ウィンチャイ氏は「サネット氏の拘束時の容体は安定しており、健康診断後病院の支払いを済ませている所だった。ともかく、我々は容疑者の健康に留意しており医師による検診を行い、彼の病状に異常がない事を確かめた。今後も適切な処置を受ける予定である。」と述べている。
警察によるとサネット氏は軍関係者が過去の王を称えるために軍によって建てられた公園の資金調達に関わる不正疑惑を裏付けたとされる画像をフェイスブックに再投稿したとの嫌疑が掛けられた。アダム氏は、「タイはクーデター以来、軍事政権を批判し投獄されることが日常茶飯事となった。我々が出来ることがあるとすればフェイスブック上で「いいね」を押すことだ。」と述べている。
(*注);ニューヨークを拠点とする国際的な人権NGO。世界各地の人権侵害と弾圧を止め、人権を守ることを目的とし、世界90か国で人権状況をモニターしている。
12月15日付け
『CBS NEWS』 は別の女性逮捕につき、次のように報道している。
6月に政府への反対をフェイスブック投稿したことで7年の刑が言い渡された女性の名は、弁護士によるとチャヤパー・Cという名であることが分かった。人権擁護タイ弁護士グループによると、刑が確定したことで当初の14年の刑から減刑となった。
12月15日付け
『Thai PBS』 は国王について次のように報道している。
国王が軍事裁判所の裁判官と地方検事の就任宣誓式典に出席した。式典は午後5時過ぎ、国王の入院先の病院に隣接した14階のホールで行われた。
式典には憲法裁判所所長、防衛大臣、防衛省の事務次官、国軍の最高司令官、陸海空軍司令官、検事総長が出席した。
12月15日付け
『BBC』 によると、王室により放送されたテレビ映像でプミポン国王は9月以来元気な姿を国民に見せた。国王は肺感染症等の様々な治療を受けているが、健康の詳細について皇室当局は明らかにはしていない。ここ数年間は入退院を繰り返しており、胆嚢除去手術と水頭症の治療を受けている。6月には退院直後バンコクのシリラート病院に再入院した。12月5日の誕生日には恒例だった演説が2年連続して中止となったが、ワチラロンコン皇太子が主催する誕生日を祝うサイクリングイベントが11日に行なわれた。
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N.Y.タイムズのある記事がタイ現地版で白紙に(2015/12/03)
タイでは昨年のクーデターにより軍事政権が発足した。国民から絶大な人気で崇められている国王は今月88歳を迎える高齢で後継者問題で依然から国民は不安を抱いていた。それに加え経済も低迷し、犯罪率が増えているようだ。そんな中、現地版ニューヨークタイムズ紙の紙面上で、現地印刷会社によって掲載を取り消された記事があった。そこには、鋭い口調でタイの現状を捉えた言葉が綴られていた。
12月1日付け
『BBC』 によると、1日火曜、タイでニューヨークタイムズ紙1面と6面の一部が白紙で発行されたと報じた。オンライン版では削除された記事は見ることができる。現地印刷会社は「AP通信」を通して記事は「不適切」との理由で削除したとコメントしている。
タイは2014年5月のクーデター以来軍事政権下にあり、反逆罪での逮捕が相次ぐ。政府がこの措置に関与したとの情報は得られていない。87歳のプミポン・アドゥンラヤデート国王はここ数年体調を崩しており、政治的分裂と暴動が加速したタイ社会において秩序と安定のシンボルである国王の病状に国民は敏感になっている、と報じている。...
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12月1日付け
『BBC』 によると、1日火曜、タイでニューヨークタイムズ紙1面と6面の一部が白紙で発行されたと報じた。オンライン版では削除された記事は見ることができる。現地印刷会社は「AP通信」を通して記事は「不適切」との理由で削除したとコメントしている。
タイは2014年5月のクーデター以来軍事政権下にあり、反逆罪での逮捕が相次ぐ。政府がこの措置に関与したとの情報は得られていない。87歳のプミポン・アドゥンラヤデート国王はここ数年体調を崩しており、政治的分裂と暴動が加速したタイ社会において秩序と安定のシンボルである国王の病状に国民は敏感になっている、と報じている。
12月2日付け
『VOAタイ』 (オンラインタイ語版)では、同様の事実関係を記載した上で、当記事を書いた筆者トーマス・フラー氏の名前も明記している。
12月1日付け
『Newsweek』 では、同様の事実関係を報じ、現地印刷会社、イースタンプリンティング社の役員は、この記事は軍事政権と”瀕死の国王”の後継者について「不適切」な記述があったため削除されたと述べた、と報じた。
タイでは軍政府への侮辱は3~15年の禁固刑が科せられている。
今回の記事の削除は、インターナショナル・ニューヨーク・タイムズや編集者の意図ではない、と空欄中央部には綴られている。この印刷会社は今年9月22日付け当紙でも、タイ軍政府に関する記事を「非常に慎重に扱うべき」との理由で掲載を拒否している。
ここ数年でタイの言論の自由は地に落ちた。2015年の”国境なき記者団”の世界報道自由指数によれば、タイは今年180国中134位となった。(2002年は65位、2004年は59位)
国境なき記者団によると、当局は報道局への圧力やジャーナリストの拘束により「巧みに」軍政を押し進めている、と報じている。
12月1日付け
『The Guardian』 によると、先月、印刷コスト高を理由に、タイ現地版ニューヨークタイムズは今年末で現地版を廃止する意向を発表した、と報じている。
又、通常ジャーナリストは王室取材においては自己規制で行ってきたが、当軍政下では知識人や政治家を拘束し批判を取り締まっている。多くは”態度の改め”を理由に逮捕、”拘束プログラム”に沿って数百人を尋問してきた。当局によると、2年の間に暫定的に数段階を経て民主化を進めるとして反対派を抑えてきている。軍事政権首相のプラユット・ジャンオーチャー氏は、このプログラムは政権の秩序を乱す批判に対処するものだとしている。又、先月ウェブニュース「カオソッド」を通して政権批判をする大学関係者らの安全は保障できない、と述べたとされる。「法を恐れないなら、好きにしてよい。もし怖れを知らないなら、誰かに銃で撃たれたり、手榴弾を投げられても、それに甘んじねばならない。」
さて、11月29日付け
『ニューヨークタイムズ』 オンライン版には今回削除された記事が載っている。「Thai Economy and Spirits Are Sagging(落ち込むタイの経済と精神)」と題した記事の中では、間もなく88歳を迎える”神のような存在”が9月以来公の場に姿をみせず、軍事政権がいかに独裁的で、タイの経済が低迷し、凶悪事件が増えており、人々が怒り嘆いている様子を報じている。
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