6月22日付Globali「北朝鮮の脅威に日米が強硬対応」の中で触れたとおり、北朝鮮に1年半余り拘束された後に解放された米国人学生の死去に伴い、米朝間の緊張が更に高まる恐れから、万が一の北朝鮮暴走に備えて、日米ともにミサイル防衛等緊急対応を取り始めた。その一環で、かねて日米共同で開発に着手していた、海上配備型迎撃ミサイル“SM-3ブロックⅡA”について、この程2度目の発射実験を実施したが、今回は失敗した模様で、悪戯に金正恩(キム・ジョンウン)委員長を喜ばせてしまったとみられる。
6月23日付米
『CNNニュース』:「日米共同開発のミサイル迎撃システムの実験失敗」
日米がかねて開発を進めていた、イージス艦搭載ミサイル迎撃システム“SM-3ブロックⅡA”の発射実験がハワイ沖で実施されたが、失敗に終わった模様である。
同システムは、準中距離及び中距離弾道ミサイルを海上から迎撃するもので、6月21日(現地時間)に2度目の発射実験を行ったもの。今年2月に行われた最初の実験は成功に終わっている。
なお、同システムは、一度に100発のミサイルを追跡可能なAN/SPY-1レーダーと組み合わされており、目下韓国に配備されつつある終末高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)と同様、中国の安全保障が脅かされるとして、中国が強く反発している。
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「日米共同開発の迎撃ミサイル発射実験、標的撃ち落としに失敗」
日米による“SM-3ブロックⅡA”システム開発は、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発の脅威に備えるためのものである。また、日本独自に、現在配備のPac-3パトリオット迎撃ミサイル(陸上発射型)の高度化にも取り組んでいる。
なお、米軍は、“SM-3ブロックⅡA”システムが搭載可能となる巡洋艦を22隻、駆逐艦を62隻保有し、日本の場合、現在はイージス駆逐艦6隻だが、これを更に増やす計画である。
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「米海軍、ミサイル迎撃実験に失敗」
米ミサイル防衛局は6月21日、ハワイ沖の米軍駆逐艦“ジョン・ポール・ジョーンズ”から“SM-3ブロックⅡA”ミサイルの発射実験を行ったが、標的を撃ち落とすことができなかったと発表した。
米軍が5月30日にバンデンバーグ空軍基地で行った、陸上発射型弾道ミサイル迎撃システム(GMD)によるICBM撃ち落とし実験は成功していた。
なお、米当局は、今後データを解析して失敗原因の分析を進めるとしており、これ以上の詳細はコメントしないという。
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世界銀行(WB)が、今年2度目の2017年世界経済見通しを発表した。それによると、日本については輸出や設備投資の伸びなどで、昨年より成長が加速すると分析し、また、世界経済についても、貿易や資源価格の改善などで、同じく昨年からは成長が加速すると見通した。
6月5日付米
『USAトゥデイ』(
『AP通信』配信):「WB、今年の世界経済成長率を2.7%と予想」
WBは6月4日、資源価格の安定と貿易の伸びによって、今年の世界経済成長率が2.7%、また、2018年は2.9%達成可能と見通した。いずれも、2016年の2.4%から改善するとしている。
WBによれば、2014年から始まった資源価格下落によって、世界経済は2年間低迷したが、今年について原油価格は24%、また、非エネルギー資源価格も4%上昇し、更に、世界貿易も4%と、直近3年間で最も大きく伸びると予想した。
主要国別成長見通しは以下のとおり。
・米国:2016年の1.6%から2017年は2.1%成長へと躍進。
・欧州圏(17ヵ国):2016年の1.8%から2017年の1.7%と若干減速。
・日本:2016年の1%から2017年は1.5%成長が見込まれ、2013年以来最速の伸び。
・中国:2016年の6.7%から2017年は6.5%、また、2018年は6.3%へと漸減傾向。
WBの世界経済見通し分析報告主担当エコノミストのアヤーン・コウズ氏は、経済環境が好調と予測される今こそ、各国は不必要な規制の撤廃や企業間の競争促進等によって、生産性の向上に努めるべきであると説いている。
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「WB、世界経済は“脆弱な回復”だと見通す」
国際通貨基金(IMF)が2017年世界経済見通しを3.5%と予測しているのに対して、WBは2.7%と低く、また、2018年も2.9%と見積もり、更に、新興国についても2017年は4.1%、2018年は4.6%と見通している。
WBのジム・ヨン・キム総裁は、世界経済の回復基調はまだ脆弱であるが、回復に向かっていることは確かであるので、この機会を捉えて各国には、制度や市場構造改革という長期戦略を立案・実施していくことが望まれるとコメントした。
同日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「WBエコノミスト:世界経済危機のリスクが漸く薄まったとコメント」
WBエコノミストのコウズ氏は、直近4年間で初めて、世界経済を危機に陥れる新たなリスクが表れなくなっているとコメントした。具体的には、原油価格の再下落、2度にわたる米利上げ、更には欧州における主要選挙結果等、当初懸念されていた事態は大きなリスクとはなっていないと述べた。
更に同氏は、WB世界経済見通し報告発表直前に、トランプ大統領が米経済にとって不公平として2015年パリ協定(気候変動対策)離脱を宣言したが、WBの使命は、世界各国に気候変動対策の必要性を促していくこと、すなわち、クリーン・エネルギー開発、環境保護的農業、持続的な都市開発、更には大災害危機管理を推し進めていくことであることから、同大統領の発言には何ら影響を受けないと付言した。
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「WB、2018年の世界経済成長率は直近7年で最高値となると予測」
WBが6月4日にリリースした“世界経済見通し2017年6月版”によると、先進国の経済成長率は1.9%伸び、新興国も昨年の3.5%から4.1%に改善されると予想されることから、世界経済は今年2.7%成長、更に2018年には2.9%成長が見込まれるという。
WBのキム総裁は、製造業や貿易の伸び、新興国の経済回復、更には資源価格の安定等によって、世界経済成長見通しは明るく、来年は直近7年間で最高となると予測しているとするが、最近取沙汰されている保護貿易主義が蔓延してくるようだと、これらの成長見通しが阻害される恐れがあるとコメントした。
同日付中国
『チャイナ・デイリィ』(
『新華社通信』配信):「WB、2017年の世界経済成長率は2.7%で変わりなしと発表」
WBは、先進国の需要回復、中国を中心とした輸出入貿易の伸び、更には資源価格安定による資源輸出の改善によって、昨年僅か2.5%の伸びであった世界貿易高は、2017年には4%改善する見通しだと発表した。
WB見通しの内訳は、先進国の経済成長率が昨年の1.6%から2017年は1.9%に改善、また、新興国の場合、昨年の3.5%が2017年は4.1%に大きく改善すると見通している。ただ、先進国の成長率が2018年1.8%、2019年1.7%とペースダウンするのに対して、新興国は、2018年4.5%、2019年4.7%と堅調に推移すると見込んでいる。
なお、中国の場合、2017年の6.5%成長が、2018年及び2019年とも6.3%と若干減速するとWBはみているが、依然世界の中では高い成長率である。
WBのキム総裁は、世界経済見通しは明るいとみているが、貿易規制の強化や政策の不確実性が世界経済の成長を阻害する恐れがあるので、今後の動静を慎重にみていく必要があるとコメントしている。
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