日本は、欧米やアジアの一部の国と違って、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題が収束しない段階での外国人への門戸開放に否定的であった。しかし、ここへきて漸く重い腰を上げ、6月から外国人旅行者の受け入れを再開する運びとなった。ただ、保守的傾向の強い高齢者が全人口の3分の1以上を占めていることもあるのか、直近のアンケート調査の結果、大多数の日本人は依然門戸開放に消極的である、と米メディアが報じている。
5月11日付米
『CNBCニュース』は、「日本、6月から外国人旅行者受け入れを再開する予定であるも、多くの日本人は不満」と題して、それまでも保守的傾向にあった日本人の多くが、かつての観光立国の掛け声よりも、COVID-19感染再爆発を懸念して門戸開放に消極的だと報じている。
アジア諸国の多くは、外国人旅行者受け入れを再開しているが、欧米諸国にとって訪問先としての人気度が高い日本は依然閉鎖したままである。
ところが、ここへきて漸く変化の兆しがみえる。
すなわち、岸田文雄首相(64歳、2021年就任)が訪問先のロンドンで5月5日、6月に外国人旅行者受け入れを再開すると発表したからである。
しかし、多くの国の住民は大抵、感染防止のための入境制限措置が緩和されることを歓迎するが、日本人の多くはこの動きに否定的である。
これまでも日本人の多くは、COVID-19感染問題発生前から国内旅行を好んでいて、「観光庁(JTA、2008年設立)」の資料によると、2019年における国内旅行関連売上高は21兆9千億円(1,670億ドル)にも上る。
一方、JTAによると、同年の外国人観光客は約3,200万人と、10年前の680万人から大幅に増加したものの、大手経営コンサルティング会社「ベイン&カンパニージャパン(1982年設立)」の奥野慎太郎シニアパートナーは、訪日観光客の消費額は日本の国内総生産(GDP)の5%以下であることから、“政府も、他産業に先駆けて観光産業を優先した政策を取るまでの必要性を感じていない”と分析している。
そして、『NHK』が直近で行ったアンケート調査の結果、回答者の65%以上が、入国制限の継続を望んでいるどころか、むしろ緩和に反対するとの声を上げていることが判明した。
この背景には、比較的に保守的傾向のある65歳以上の高齢者が、全人口の3分の1近くを占めることが挙げられる。
訪日観光客向けガイドツアーを運営している「ジャパン・ローカライズド(2017年設立)」の宮本大代表によると、COVID-19問題前には多くの観光客を案内していた京都において、余りにも多くの観光客が詰めかけたことに辟易した地元住民が、(コロナ禍で)“静寂さが戻った”と歓迎しているとの声を聞いているという。
また、京都を中心にバックパッカー(低予算の個人旅行者)相手のツアーを請け負っていた「クラフト旅」のリー・シアン・チー事業開発責任者も、“多くの京都住人が、観光客が増えすぎて閉口していたが、今は20年前の静かな京都に戻って安堵している”と述べているという。
同社自身も、コロナ禍の最中で外国人顧客が激減したことより、“オンライン・ツアー”事業を展開していたが、諸外国で観光客受け入れが再開し始め、その“オンライン・ツアー”自身の需要も減り始めているという。
なお、岸田首相が、日本においても外国人旅行者受け入れを再開すると表明しても、2021年に僅か25万人に落ち込んだ訪日旅行者が以前のように簡単に増えることはないとみられる。
何故なら、地元紙の報道では、日本入国に当たって、ワクチン接種や陰性証明、更には自主隔離の必要性などが条件付けられるばかりか、少人数のパッケージツアーが受け入れ対象とされているからである。
ただ、「日本政府観光局(JNTO、2003年設立、正式名称:独立行政法人国際観光振興機構)」が『CNBCニュース』に語ったところによると、まだ訪日観光客受け入れに関して、何ら具体的な指示を受けていないという。
従って、日本人にとって、外国人観光客が増えすぎて辟易することになるのはまだ当分先の話とみられる。
同日付マレーシア『ベルナマ』(マレーシア国営通信、1968年設立)は、「日本、6月から1日2万人までの観光客受け入れ再開」と題して、日本が少しずつ観光客受け入れを増やしていくと報じている。
5月11日付『NHK』報道によると、日本政府は6月から、外国人旅行者の受け入れについて、これまでの枠を倍増して1日2万人までとする意向だとしている。
所謂ゴールデンウィークが終わって、COVID-19感染問題の深刻化に至っていない状況から、検疫等の水際対策によって、受け入れ観光客を増やすことは問題ないと判断したとみられる。
政府関係者によると、少人数のパッケージツアーであれば、早ければ今月から受け入れ条件緩和措置が取られる見込みだという。
日本では、昨年11月下旬よりCOVID-19感染者再急増を受けて、日本に居住していない外国人の入国を禁止する措置が講じられてきていた。
ただ、日本が、主要7ヵ国(G-7)の中で最も厳しい入国制限措置を長期間にわたって続けていることから、観光業界含めて多くの事業関係者から厳しく批判されていた。
実際問題、昨年11月以降の外国人入国者数は1日当たり3,500人に制限され、それが今年3月1日に5千人、3月14日に7千人、そして4月10日に1万人と僅かずつの増加に留まっていた。
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米国でしばらく小康状態だったガソリン価格が再び上昇し、今週過去最高値を更新した。米国自動車協会(AAA)によると、1ガロンのガソリンの平均価格は現在4.37ドルで、3月11日に記録したこれまでの最高値を上回っている。
米
『NBCニュース』によると、わずか1週間で1ガロン19セントから30セント値上がりしたミシガン州、オハイオ州、ニュージャージー州で最も高値を記録した。この価格高騰は、10日に100ドル前後で推移している原油価格の上昇と直接結びついている。
AAA広報担当のアンドリュー・グロス氏は声明で、「石油のコストがガソリンスタンド店頭価格の半分以上を占めているため、より高価な石油はより高価なガソリンにつながる。」と述べた。また、夏のドライブシーズンが近づくにつれ、価格はさらに上昇する可能性があると指摘した。
燃料価格・需要調査アプリの「ガスバディ」によると、現在の原油価格の高騰は、ウクライナ戦争と西側の対ロシア制裁によって引き起こされているという。ガスバディの石油分析部門の責任者は、「ロシアの石油はますます市場から姿を消し、夏のドライブシーズンを前に需要が回復する一方で、供給を圧迫している。夏に向けて燃料価格に関する良いニュースはほぼない。精製品の在庫が急落し続ける中、平年並み以上のハリケーンシーズンが来た場合、製油所の生産能力が追い付かなくなり、問題は悪化する可能性がある」と述べている。バイデン政権は、石油戦略備蓄から数千万バレルの石油を放出することで、ガソリン代を緩和しようとしたが、この措置は価格に持続的な影響を与えることはほとんどなかった。
さらなる要因として、ガソリンの 国内生産の停滞が指摘されている。与党民主党は、石油会社がパンデミック時に多額の損失を出し、投資家にお金を返そうとしていることが原因だとし、4月に公聴会を開き、石油会社が手をこまねいていると非難した。シェブロン社のマイケル・ワースCEOは、「原油や天然ガス、ガソリンやディーゼル燃料などの精製品の市場価格をコントロールすることはできず、価格高騰を容認してはいない」と、議会公聴会で反論した。
米『CNN』によると、バイデン大統領は10日のホワイトハウスでの演説で、インフレとガソリン価格の上昇は新型コロナウイルスやロシアのウクライナ戦争が要因であると述べた。大統領は演説の中で、石油戦略備蓄から1日100万バレルの原油放出を指示し、バイオ燃料販売拡大のための緊急対策を実施するなど、ガソリン価格の引き下げに向けて政権がいくつかの措置をすでにとってきたことを指摘した。また、億万長者をはじめとする超富裕層への増税や、高齢者向けの公的医療保険メディケアに薬価交渉を任せることで何百万人ものアメリカ人の処方薬価格を引き下げる案を挙げ、こうした措置がインフレを抑えるのに役立つだろうと述べた。
一方、CNNの最新の世論調査では、民主党の経済ビジョンが自分たちのビジョンと一致していると考えるアメリカ人は3分の1以下であることが示された。
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