かつて、近くて遠い国同士であった日本と韓国は、2015年末の「慰安婦問題日韓合意」を契機に、近くて近い国同士になってきていた。
当時の北朝鮮が、核・ミサイル開発を促進し、日韓両国にとって大変な脅威となっていたことから、相互に助け合うためにも必要不可欠な動きとみられていた。
しかし、2代続いた保守政権を倒して政権を奪還した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮との融和政策及び対中関係重点方針を掲げたことから、2015年の日韓合意の不履行、徴用工に対する個人損害賠償是認判決支持含めて、これまでの対日政策と異なる対応をしてきている。...
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かつて、近くて遠い国同士であった日本と韓国は、2015年末の「慰安婦問題日韓合意」を契機に、近くて近い国同士になってきていた。
当時の北朝鮮が、核・ミサイル開発を促進し、日韓両国にとって大変な脅威となっていたことから、相互に助け合うためにも必要不可欠な動きとみられていた。
しかし、2代続いた保守政権を倒して政権を奪還した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮との融和政策及び対中関係重点方針を掲げたことから、2015年の日韓合意の不履行、徴用工に対する個人損害賠償是認判決支持含めて、これまでの対日政策と異なる対応をしてきている。
そうした中で12月下旬、韓国軍艦による海上自衛隊哨戒機に対する火器管制レーダー照射問題が発生した。
これまでのところ、日韓双方は自国の主張が正しいとして徹底抗戦の構えをみせている。
本邦メディアは、日本政府及び防衛省発表内容を伝え、日本側主張が正しいと報道している。
一方、韓国メディアも、公共放送の『KBSニュース』含めて、韓国国防部(省に相当)の公式見解を支持する報道に徹している。
ただ、海外メディアをみてみると、他に大きく報道すべき事案・事件が数多あることからか、レーダー照射問題を取り上げているところは、次のとおり余り多くなく、かつ、どちらの主張が正しいとの論調もない。
1月17日付米『ボイス・オブ・アメリカ』:「日韓外交問題は地域安全保障の関係から長期化はしまいと専門家は分析」
・徴用工への個人賠償判決に基づく日系企業の資産差し押さえ、また、レーダー照射問題から、現下の日韓関係はかなりギクシャクしている。
・しかし、大方の専門家は、東アジア地域の安全保障のため、日韓の相互協力が不可欠なことを理解しているため、この問題が長期化することはないとみる。
・すなわち、日韓双方にとって、朝鮮半島の非核化は大きな共通認識及び達成不可欠なゴールであるからである。
1月19日付香港『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』:「日本、韓国軍のレーダー照射問題で新たな証拠を示す予定」
・韓国国防部の発表が事実に則していないとして、日本政府は、韓国軍によるレーダー照射を裏付ける新たな証拠を公表するとしている。
・最終的には、訪米中の岩屋毅防衛相が、1月20日に帰国してから判断する。
これに関して、1月18日付韓国『朝鮮日報』は、訪米中の岩屋防衛相が1月16日、米国防総省のパトリック・シャナハン長官代行と面談し、レーダー照射問題について日本側説明を一方的に行った、と報じている。
その際、“日本の植民地時代に接収された独島(日本名竹島)”の近海で遭難した北朝鮮漁船を捜索中の韓国沿岸警備艇に“日本のスパイ機”が異常接近した等々、刺激的な表現を使用しており、韓国読者が“またしても日本の悪行の数々のひとつ”と捉えないか懸念される。
一方、民間レベルでみてみると、例えば2018年の訪日外国人観光客数は、全体3,120万人の内、韓国からの訪問客は750万人と、2011年の東日本大震災発生年に166万人へと前年比▼32%減少したときを除き(全体では622万人と前年比▼28%減少)、右肩上がりで大きく上昇してきている。
すなわち、国と国とでは外交問題でギクシャクしていても、若者を含めた一般の韓国人は、日本を好いてくれているため、韓国人の海外旅行者全体約2,600万人のうち、30%近くも日本を訪問先に選んでくれていると解釈できる。
従って、日韓外交史において、「三・一運動100周年」(注後記)という、韓国にとって政治的に重要な記念日が迫っていることもあり、何とかそれ以前に、民間レベルの交流を重視して、本問題が収束されることが望まれる。
(注)三・一運動:1919年3月1日に日本統治時代の朝鮮で起こった日本からの朝鮮独立運動。韓国では肯定的評価され、3月1日を三一節として祝日に指定している。しかし、北朝鮮では“失敗したブルジョア蜂起”と否定的な評価をしている等、南北での見解に差がある。なお、同運動を仕掛けたグループが発表した「独立宣言」では、“朝鮮という民族国家が発展し幸福であるためには独立を確立すべきこと、朝鮮の独立によって日本及びそこに住む人々との間に正しい友好関係を樹立すること”などが宣言の骨子となっており、必ずしも抗日全面戦争ではなかった。
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習近平(シー・チンピン)国家主席が2012年に就任以降、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の暴走もあって、中朝関係は非常に冷え込んでいる。更に、今年に入ってからの中国による度重なる対北朝鮮制裁強化のため、北朝鮮が中国を名指しで非難することも度々起こっていた。しかし、習国家主席の長期強力政権が確立することに畏敬の念を抱いてか、北朝鮮政府が中国共産党大会開催を祝福するメッセージを発信した。一方、中国が密かに北朝鮮向けに武器供与をしていたとの裏情報もあり、北朝鮮側が秋波を送った真意は謎である。
10月18日付米
『ジ・エポック・タイムズ』オンラインニュース(
『ロイター通信』配信):「関係が緊迫している中、北朝鮮が中国の党大会開催に祝辞」
北朝鮮の国務委員会(最高政策指導機関)は10月18日、最近の中朝関係緊迫の中、同日に開幕した中国共産党全国代表大会(十九大)の開催を祝福するメッセージを送った。同委員会は、中国独自の社会主義を進めて偉大な発展を遂げたと称賛している。
中国外交部(省に相当)の陸慷(ルー・カン)報道局長は10月18日の定例会見で、北朝鮮の朝鮮労働党も含めて多くの海外政党、政治団体、政府高官から祝電を受領した旨発表した。
韓国の政府高官や専門家の多くは、北朝鮮が十九大開催に合せてミサイル発射実験を断行するのではと懸念していたが、習国家主席が十九大で大演説をした当日は、北朝鮮に何ら不穏な動きはみられなかった。
なお、中国の商務部は、9月12日に国連安全保障理事会で採択された追加制裁決議に準じて、中国国内の北朝鮮の資本等を来年1月までに退去させるとの通告を行っている。
一方、10月19日付韓国『KBSニュース』:「米専門家:中国が北朝鮮向けに武器供与と明言」
“近づく中国の崩壊”の著者である米国の章家敦(チャン・チアトゥン、ゴードン・チャン、弁護士・作家、66歳)氏は、10月18日の『Foxニュース』のインタビューで、中国が北朝鮮に武器供与していると明言した。
同氏によると、7月に北朝鮮が実施した大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験には、中国製の発射台が使用されたとする。また、昨年8月及び今年の2月・5月に行われた潜水艦発射ミサイルの実験に使われたものは、中国のJL-1潜水艦発射ミサイルの改良型とみられるとしている。
そして同氏は、トランプ大統領が訪中した際、中国側とこの点について突っ込んで討議すべきと強調した。
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