保守的な自民党政権が今春を目処に、新型コロナウィルス(COVID-19)を季節性インフルエンザ等と同じ感染症分類(注後記)に移行させる方向で検討に入るとした。これに対して、個人の権利・自由をより保障する米国では、COVID-19の感染再爆発の事態を受けて、再びマスク着用の義務化を図ろうとしている。
1月22日付米
『リーガル・インサレクション』オンラインニュース(2008年設立の保守系メディア)は、「バイデン政権、公共交通機関利用時のマスク着用義務化復活を画策」と題して、保守的な日本が“屋内でのマスク着用不要”と緩和の意向を示しているのに、バイデン政権が連邦地裁判決に不服申し立てをして、マスク着用義務化が遂行できるように画策していると報じている。
COVID-19が再び猛威を振るう中(編注;オミクロン変異株の亜系統XBB1.5が主流)、バイデン政権は、公共交通機関利用時のマスク着用義務化政策を再採用できるよう画策している。
実は、フロリダ州連邦地裁が昨年4月、米疾病予防管理センター(CDC、1992年設立)がマスク着用を義務化するのは違法だとの判決を下していた。
『ワシントン・イグザミナー』紙(2013年創刊の保守系メディア)によると、国務省がこの程、第11巡回区連邦控訴審(1981年設置、南部フロリダ・アラバマ・ジョージア州管轄)に不服申し立てを行い、1月17日の審理で、CDCにはCOVID-19感染拡大防止の目的で、飛行機・列車・バス等の公共機関利用時におけるマスク着用を義務化できる権利を有すると主張している。
これに対して、原告の保守系団体“健康の自由を守る基金”の代理人弁護士は、“もしマスク着用義務化が公共衛生上緊急を要することであるとするなら、もっと早く対応しておくべきで(昨春の一審後9ヵ月も経ってからの)不服申し立ては矛盾している”と反論した。
更に、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)の一連の発言とも矛盾している。
すなわち、同大統領は昨年9月、『CBS』(1927年開局)のドキュメンタリー番組「60ミニッツ」(1968年放送開始)のインタビューに答えて、“COVID-19への対応は必要である”としながらも、“世界的流行は終焉した”とコメントしている。
また、同大統領は、昨年9月半ばに開催されていた「北米国際自動車ショー」(1907年開始)で『CBS』のインタビューに答えて、“来場した誰もマスクを着用していないことから、日常が戻った”とも言及していた。
一方、日本では慎重ながらも、COVID-19を季節性インフルエンザと同類の感染症に移行するかどうかの検討を始めようとしている。
岸田文雄首相(65歳、2021年就任)は1月20日、COVID-19を現在の感染症2類から5類に分類することになろうと発言した。
もしこれが実施されると、屋内の公共の場所でのマスク着用は推奨されず、また陽性者や濃厚接触者の自主隔離義務も適用されなくなる。
すなわち、他の主要国同様、緊急公共衛生対応策に固執するのではなく、COVID-19との共生を模索しようとしているのである。
1月20日付ニュージーランド『NZヘラルド』紙(1863年創刊)は、「米政府、機上でのマスク着用義務化の無効判決に不服申し立て」と詳報している。
米フロリダ州連邦地裁判事が昨年4月、CDCには公共交通機関利用時のマスク着用義務化を施行する法的権利はないとの判決を下していた。
しかし、米司法省は今年1月17日、3人の判事で構成される米連邦第11巡回区控訴審に不服申し立てを行った。
CDCはかつて、COVID-19感染拡大防止策の一環で、飛行機等搭乗の際はマスク着用義務化政策を打ち出そうとしていたが、トランプ政権(2017~2021年)によって差し止められていたが、バイデン大統領が2021年1月に就任するや否や、当該政策が施行されていた。
今回の控訴審では、CDCが当該政策施行前に、国民に是非を問いかけていなかったことが争点のひとつとなっている。
国務省代理人のブライアン・スプリンガー弁護士は、COVID-19感染症の深刻度から、緊急を要するため当該政策の事前公示は必要とされないと主張した。
同弁護士は、“機上の乗客がマスク着用という簡単な行為をしないかった場合、感染症が拡大して犠牲者を多く生み出す可能性が予見できることから、当該施策は国民に問うことを省略して施行できる”と強調した。
これに対して、個人・団体5つのグループから成る原告団を代理するブラント・ハダウェイ弁護士は、CDCは一審判決に従おうとしなかったばかりか、同判決の不服申し立てをしようともしていなかったと反論した。
同弁護士は、もしCDCがマスク着用施策は“国民の生死”に関わる問題だとしているなら、(不服申し立て等)もっと早い段階で行動を起こしているべきだったとも付言した。
なお、欧州連合は中国からの旅行客にマスク着用を推奨すると決めているが、これは、中国がこれまで長い間採用していたゼロコロナ政策を突然緩和したことに伴い、感染爆発が発生しているための防御措置である。
一方、多くの国では、飛行機・バス・列車・タクシー等を利用する場合のマスク着用義務は撤廃されている。
(注)感染症分類:感染症法(1998年制定)に基づく分類で、重症化リスクや感染力に応じて1~5類に分類。COVID-19は現在、結核・重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じ2類で、“入院の勧告・就業制限・外出自粛の要請、及び屋内でのマスク着用”が発出される代わりに“検査・治療費全額公費負担”が適用。一方、季節性インフルエンザ・梅毒と同じ5類では、“行動制限なし、屋内でのマスク着用原則不要”とされる代わりに“検査・治療費個人負担”が適用される場合がある。
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1月4日付米
『CBS』:「ロシアがウクライナを攻撃しているドローンに米国の技術を使用」:
ウクライナを攻撃しているロシアのドローンはロシア製かイラン製だが、その技術は欧州や米国製となっている。
キーウで撃墜されウクライナ軍が押収したドローン「オルラン10」はロシアの無人航空機(UAV)で、そのモジュール内のチップはスイスの「U-Blox」製だった。チップの役目は方向測定で、それがなければドローンは飛行方向を見失う。
ウクライナ政府は、過去4ヶ月の間に、ロシア製やロシアが改造したイラン製ドローンの中には、米国のマキシム・インテグレーテッドやマイクロチップ・テクノロジー製のものがあるとしている。だがこれらは携帯電話など通常の製品にも使われている。
一方、ウクライナ国内でロシアは独自のGPSに当たる衛星測位システム「GLONASS」を利用している。1970年代にソ連軍により開発され、現在22基の衛星が運用されている。市民も利用できるが、現在はロシア軍にとって、最前線やウクライナの市街地での軍用機やドローン攻撃に欠かせないものとなっている。
ウクライナ当局は、少なくとも米6社が「GLONASS」に対応したチップを製造しているとしている。これらの企業が自社製品がロシアやイランに利用され、米国の制裁法に違反していることを知っているかは確認されていないが、マイクロチップやマキシムなど殆どの企業の社内規約では、軍事目的の技術使用は制限されている。
スイスの半導体製造業「U-Blox」は、侵攻開始以降ロシア企業との関係を絶っているとするが、部品は「禁輸対象ではない」という。民間での使用も含むため、流通状況のチェックは難しいという。入国管理資料によると、欧州や米国企業のマイクロチップ製品は、中国やマレーシアなどの第三国を通じ、ロシアへ流通しているとみられる。
問題となっている米国製チップは、GPSやガリレオなど、他の衛星ナビゲーション・システムにも対応している。専門家は、ドローン攻撃の正確性がロシア軍には魅力となっているため、GLONASSへの対応をやめ、ドローン攻撃の正確性を低下させることが人命を救うことにつながるとする。既に非対応のチップを製造している企業もある一方、「U-Blox」社は「理論上は可能だ」としながらも、社内での検討を要するとしている。
現在もロシアのドローン攻撃は継続している。昨年9月以降の攻撃は600基以上とみられる。今月2日ゼレンスキー大統領は、今週ウクライナ軍は2日間で80基以上を撃墜したと発表している。
同日付米『CNN』:「イラン製ドローンから米国の10数企業の部品が見つかる」:
ウクライナ諜報部の評価によると、10数社以上にわたる欧米企業製の部品が、ウクライナへの攻撃に使われたイラン製ドローンから見つかったという。
この評価は昨年米当局と共有されており、ドローン供与でイランを批判するバイデン政権がかかえる問題を示している。
ホワイトハウスは先月、イラン製ドローンに使用されている欧米技術由来の半導体やGPSモジュール等を調査する作業部会を設置。ウクライナで押収されたイラン製ドローン「シャヘド136」52基のうち、40基が米国の13企業で製造されたものだったことが判明した。残る12基は、カナダ、スイス、日本、台湾、中国製だったという。
米当局は、制裁の強化や、製造元にサプライチェーンのさらなる監視を求め、ドローンを購入し再販している第三の流通業者を特定する等の対策を検討している。
制裁を受けつつも、イランには技術を入手する豊富なルートがあるとされる。例えば、撃墜されたドローンの製造元であるイラン航空機製造工業株式会社(HESA)は、2008年から既に米国の制裁対象となっている。
ロシアやイランにとって、西欧の制裁をくぐり抜け製品を入手するには、ダミー会社設立が最も手軽な方法だ。マイクロエレクトロニクス業界は特定の困難な第三の流通業者や再販業者に依存している部分がある。米当局によると、ロシアはまた、イランの支援をうけた独自のドローン工場の建設を準備しているという。
ロシアはウクライナ全土を対象にドローン攻撃を継続しているため、イランのドローン製造を止めることが急務となる。専門家は、米政府の制裁強化のためには、現地でベンダーやレセラーを調査するより多くのリソースや人員が必要だという。ドローンに部品が使われていた米国企業は、許可外での使用を批判し、業界全体で取り組むべき問題だとしている。
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