世界にニュースを配信しているAP通信社は、軽犯罪事件については今後、容疑者が逮捕されても実名を報道しない方針を示している。インターネット上に個人情報が長期間残り、当事者の社会復帰などの妨げとなるのが理由だという。殺人等の重罪事件については、市民の安全を考慮しこれまで通り実名報道を行うとしている。
6月15日付米国
『ザ・ヒル』は「AP通信、今後は軽罪事件での容疑者の実名報道をしない」との見出しで以下のように報道している。
AP通信社は、軽犯罪事件については今後、容疑者が逮捕されても実名を報道しない方針を示している。同社は、ネット上に実名情報が長期間保存され、当事者の求職や社会復帰の妨げとなりかねないというのが理由だという。
また読者にとり有益な情報であるか検討し、必要ないと判断される場合は、公平性を維持したうえで、追加記事には犯人確保という以上の報道はしない。...
全部読む
6月15日付米国
『ザ・ヒル』は「AP通信、今後は軽罪事件での容疑者の実名報道をしない」との見出しで以下のように報道している。
AP通信社は、軽犯罪事件については今後、容疑者が逮捕されても実名を報道しない方針を示している。同社は、ネット上に実名情報が長期間保存され、当事者の求職や社会復帰の妨げとなりかねないというのが理由だという。
また読者にとり有益な情報であるか検討し、必要ないと判断される場合は、公平性を維持したうえで、追加記事には犯人確保という以上の報道はしない。実名を非掲載とする以外にも、実名が出ている軽罪記事へのリンクも付けも行わず、(読者の目を引くように)特徴的だという基準で顔写真を掲載することはないという。
これらの措置は軽犯罪のみに適用され、殺人等の重大事件については、市民の安全を考慮し、これまで通り実名報道を行うとしている。
同日付オランダ『BNOニュース』は「AP通信が軽罪容疑者の実名報道中止へ」との見出しで以下のように報道している。
世界最大手ニュース機関の一つであるAP通信社は15日、今後軽犯罪などの報道においては実名を公表しない旨を発表した。また、見た目の理由から顔写真を掲載するのも止める方針だという。「AP通信のニュースは広範囲に配給されており、記事内で実名が報じられた容疑者が後に求職や復帰をする際に困難となる可能性がある」と標準担当副社長ジョン・ダニシェフスキー氏は声明で述べている。
軽犯罪について、追加報道がされない場合には、容疑者の実名は今後伏せて報道されることとなる。これは、詳細が特異だと判断される記事にも適用される。
容疑者の実名情報は一般的に地元住民以外には価値がないと判断される。顔写真により人物が特定できるという理由から、写真も掲載しない方針だという。また、容疑者の見た目から判断し、写真や記事を掲載することも止める。このような顔写真は、ローカル局のウェブサイトの写真ギャラリーに使用されることもあり、ニュースの価値や市民の安全という理由よりも、酷い写真だということに注目が集中する傾向があるためだという。
弁護士でテレビタレント、そして今年のニューヨーク地方裁判官に立候補しているパーソナリティのエリザオリンズは、AP通信の決定について「とても大きな動き。市民を守る弁護士として、事件が解決し何年経っても報道により人生を狂わされた人を見てきた」と述べている。
また、同日付米国『AP通信』は、「軽罪に関する報道として、裸や酔ってバーで踊り逮捕された人などの報道があるが、地域限定や全国的に関心は集めるものの、翌日には忘れられてしまう程度のものだ。だが、逮捕者の名前は容疑が取り下げられたり、釈放されてからもネット上に永久的に残っており、そのため仕事を得る機会を失ったり、クラブに所属したり起業する際に妨げとなることもある。」
「ボストングローブ紙など他の機関でも同様の動きがあり、ネット上に名前が残っている人からの要望からという場合もある。2018年の Dwyerの調査によると、ニュース機関の8割では、アーカイブから記事を削除する規定が約5年前からあるが、明文化はされておらず社内での議論も十分ではない。」としている。
閉じる