ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45歳、2019年就任)は当初、12月5日に米上院議会にオンラインで出席し、ウクライナへの資金支援継続を訴える予定であった。しかし、突然この予定を見送り、代わって12月6日晩に日本がオンライン形式で主催する主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)に出席することになった。同大統領は、今年5月に広島において対面形式で開催されたG7サミットにも出席しており、居心地の良い方を選択したとみられる。
12月6日付
『AFP通信』は、ウクライナのゼレンスキー大統領が、米上院議会でのビデオ演説を突然中止したものの、日本主催のオンライン形式で開催のG7サミットにはビデオ参加することになったと報じている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12月5日、米上院議会でビデオ演説を行い、ウクライナへの資金援助の継続につき直訴する予定であったが、突然キャンセルした。
上院多数党院内総務のチャック・シューマー議員(73歳、2021年就任、ニューヨーク州選出民主党員、1999年初当選)は、“最終段階”で不測の事態のために同大統領の出席が見送られたが、ウクライナ情勢に関わる支援態勢等について予定どおり議会で討議するとしている。...
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12月6日付
『AFP通信』は、ウクライナのゼレンスキー大統領が、米上院議会でのビデオ演説を突然中止したものの、日本主催のオンライン形式で開催のG7サミットにはビデオ参加することになったと報じている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12月5日、米上院議会でビデオ演説を行い、ウクライナへの資金援助の継続につき直訴する予定であったが、突然キャンセルした。
上院多数党院内総務のチャック・シューマー議員(73歳、2021年就任、ニューヨーク州選出民主党員、1999年初当選)は、“最終段階”で不測の事態のために同大統領の出席が見送られたが、ウクライナ情勢に関わる支援態勢等について予定どおり議会で討議するとしている。
上院共和党は、ジョー・バイデン大統領(81歳、2021年就任)の民主党政権が、亡命制度の改革と国境警備の強化を受け入れることを条件に、ウクライナへの追加資金供与を支持するとしているが、民主党はこれを拒否している。
ウクライナ戦争勃発後2年近くが経過するが、米国によるウクライナ援助資金はそろそろ底を尽きかけていて、ゼレンスキー大統領としては、600億ドル(約8兆8,200億円)余りの追加援助を含めた緊急支援パッケージについて直訴することを目論んでいた。
これに対して、松野博一官房長官(61歳、2021年就任)は12月6日午前、当日夜に岸田文雄首相(66歳、2021年就任)が主導するオンライン形式で開催のG7サミットに同大統領がビデオ参加する旨発表している。
今年11月にG7外相会議が日本で開かれた際、G7グループはウクライナ支援を“取り止めることは決してなく”、また、“戦争が継続する限り、ウクライナ側に立つ”ことも表明していた。
一方、米国議会でウクライナ支援継続問題に亀裂が生じ始めているのと同様、来週後半(編注;12月14~15日)にブラッセル(ベルギー)で開催される欧州連合(EU、1951年前身設立)サミットにおいても、ウクライナ支援継続に対して問題提起される可能性がある。
何故なら、ウラジーミル・プーチン大統領(71歳、2000年就任)の数少ない盟友であるハンガリーのオルバーン・ビクトル首相(60歳、2010年就任)が、EUサミットにおいてウクライナ支援問題を議題から外すよう強く要求しているからである。
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世界のダイヤモンド産出量は、ロシアが30%超と長い間首位に君臨し、2位のアフリカ南部ボツワナや3位のカナダを大きく引き離している。2022年2月下旬にロシアがウクライナに軍事侵攻したことから、米国は同年4月に早速ロシアのダイヤモンド採掘企業アルロサ(注後記)を制裁対象としたものの、ダイヤモンドの世界流通システムが複雑で抜け穴の多い制裁となっている。そうした中、欧州連合(EU、1958年前身設立)が、世界最大のダイヤモンド取引拠点を抱えるEU加盟国ベルギーの抵抗を抑えてロシア産ダイヤモンド禁輸措置に踏み切ろうとしている。
9月27日付
『AFP通信』は、EU及びベルギーのダイヤモンド専門家がインドを訪問し、対ロシア政策の一環でロシア産ダイヤモンドを制裁対象にするかどうか難しい決断をしようとしていると報じた。
ダイヤモンドの世界生産シェアは、ロシアが長い間圧倒的に首位を堅持している。
そこで、米国は昨年4月、ロシアのウクライナ軍事侵攻を理由にロシアの世界最大のダイヤモンド採掘企業のアルロサを制裁対象とした。...
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9月27日付
『AFP通信』は、EU及びベルギーのダイヤモンド専門家がインドを訪問し、対ロシア政策の一環でロシア産ダイヤモンドを制裁対象にするかどうか難しい決断をしようとしていると報じた。
ダイヤモンドの世界生産シェアは、ロシアが長い間圧倒的に首位を堅持している。
そこで、米国は昨年4月、ロシアのウクライナ軍事侵攻を理由にロシアの世界最大のダイヤモンド採掘企業のアルロサを制裁対象とした。
同社は、ロシアに年間45億ドル(約6,660億円)の収入をもたらしている。
しかし、ダイヤモンドの流通システムは複雑で、たとえアルロサ産ダイヤモンドを輸入停止にしても、取引拠点までの販路では原産地証明が取得できても、それ以降、カットや研磨の段階でロシアに次ぐ生産量を誇るアフリカのボツワナやカナダ産等と一緒にされてしまうと、それ以降の流通ルートでは制裁措置そのものが有名無実化してしまう。
すなわち、カットされたダイヤモンドの84%、研磨ダイヤモンドの50%を扱う、世界最大の取引拠点のベルギー・アントワープ(毎日おおよそ2億2千万ドル、約326億円の取引高)でも、また、世界第2位のインド・スーラト(インド北西部グジャラート州港湾都市)においても、ロシア産ダイヤモンドがボツワナ産やカナダ産等と混ぜてカット、及び研磨されて対外向けに出荷されることになった時点で、ロシア産とは呼べず、制裁対象から除かれてしまうからである。
しかし、対ロシア制裁を強化したいEUとしては、ベルギーを説得してもロシア産ダイヤモンド制裁措置を実現したいため、今週(9月25日の週)、それぞれの専門家が実態調査の一環で、インドのスーラト、及びもうひとつの拠点であるムンバイ(インド西海岸のマハーラーシュトラ州の港湾都市)を訪問している。
インド2拠点での取引には、150万人もの雇用が生み出されていて、輸出入取引高は300億ドル(約4兆4,400億円)にも上る。
更に、ベルギーやインドにおけるカット・研磨後のロシア産ダイヤモンド取引に透明性を持たせようとしても、イスラエル・ドバイの他、近年では中国南部広東省の広州(コワンチョウ)・深セン(シェンチェン)も主要取引拠点に成長しつつある。
テルアビブ(イスラエル)在住のダイヤモンド市場アナリストのエダーン・ゴラン氏は、“一言で言えば、ダイヤモンドは採掘から店頭販売の段階までに多くの人・業者を経由するものなので、販売段階で原産地証明を具現化するのはほぼ困難である”とコメントしている。
更に同氏は、“例えばアントワープやテルアビブのダイヤモンド取引業者が、ロシア産にそれと近似したボツワナ産やカナダ産を混ぜてカット・研磨して流通ルートに乗せれば、その時点で当該ダイヤモンドは「原産地混在」の商品とされてしまうからだ”とも付言した。
すなわち、“かかる方法によって、取引業者は対ロシア制裁の対象からはずされた「原産地混在」ダイヤモンドを売り捌くものであり、これは違法でも何でもない”と断言している。
また、ニューヨーク在のダイヤモンド市場アナリストのポール・ジムニスキー氏は、“例えば自動車について言えば、世界中の部品を使用してもそれが日本で組み立てられ完成品となれば、それは明らかに日本車と呼称される”とし、“それと同様のことがダイヤモンドでも適用されるので、米国が対ロシア制裁でロシア産ダイヤモンドを対象にしても制裁効果が弱いという理由がそこにある”とコメントしている。
ニューヨークを中心に、米国におけるダイヤモンド取引は世界全体の半分を占めるが、その中には多くのロシア産ダイヤモンドが混在しているということになる。
かかる背景もあって、テルアビブのゴラン氏は、“仮に原産地の追跡調査や紐付けが可能になるようなシステムを開発・導入しても、どこの取引拠点の業者も一斉に当該システム準拠を約することが必要不可欠だが、それは現実的ではないだろう”し、“また、仮に技術的に追跡調査が可能となったとしても、1カラット(0.2グラム)当り4~6ドル(600~900円)のダイヤモンドまで手間暇かけて原産地紐付けをすることに賛同する業者は全くいないであろう”から、EUがベルギーを説得して、米国と同様の対ロシア追加制裁でロシア産ダイヤモンドを新たな制裁対象としようとしても、非現実的だと言わざるを得ない、と強調している。
(注)アルロサ:1992年設立の世界最大のダイヤモンド採掘企業。世界シェアの27%を占める。ロシア政府が37%株式保有。
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