1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ぶ独立記念日である。しかし、先住民や擁護団体は、1778年に英国艦隊がオーストラリア大陸を植民地とするために入境してきた“侵略の日”だとして、全国で抗議活動を展開している。
1月26日付
『ロイター通信』は、「数千人が、オーストラリア・デイは“侵略の日”だと叫んでデモ行進」と題して、先住民や彼らを擁護する団体が、英国からの独立記念日ではなく英国による“侵略の日”だと抗議して、全国でデモ行進を行ったと報じている。
1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ばれる、英国からの独立記念日である。
しかし、先住民のアボリジニや彼らの権利擁護の活動をしている団体が、英国艦隊が植民地化のためにシドニー湾に“侵略してきた日”だと抗議して、全国で数千人がデモ行進を行った。
ニューサウスウェールズ州都のあるシドニー市街では、デモ隊がアボリジニの旗を掲げて練り歩いたり、先住民の慣習である煙を焚く儀式を執り行った。
他の都市でも、同様の抗議活動が行われていて、豪州『ABCニュース』報道によると、南オーストラリア州アデレードでは約2千人が参加したという。
首都キャンベラでは、アンソニー・アルバニージー首相(59歳、2022年就任)が先住民の人たちを尊重している、と演説していたが、その先住民は遥か6万5千年も前から豪州の地に移り住んできていた。
同首相は、“世界で最古の文化を継承してきた先住民とともに、豪州の独特な特性として認識していこう”と訴えた。
ただ、同首相は、「オーストラリア・デイ」は先住民にとって“苦難の日”と理解するも、この祝日を変更する考えはないとしている。
豪州市場調査会社ロイ・モーガン(1941年設立、メルボルン本拠)の世論調査によると、約3分の2が“オーストラリア・デイ”のままで良いとしていて、“侵略の日”とすべきだと回答したのは3分の1で、この結果は1年前と同じ比率だという。
この日の扱いについて多くの議論がされる中、例えば豪州最大の半官半民の通信会社テルストラ(1975年設立、本社メルボルン)は今年、従業員に1月26日を祝日とせずに出勤し、代替休日を取得することを容認した。
同社のビッキー・ブレイディ最高経営責任者(CEO)はSNS上で、“(235年前の)オーストラリア・デイ以降、多くの先住民が生命・文化等を蔑ろにされてきており、祝日と捉えるかどうか含めて一考する時期に来ている”と語り、彼女自身も出社している。
総人口2,500万人の豪州には、88万人の先住民が暮らしているが、経済的にも社会指標上でも劣っており、政府は“格差が定着”してしまっていることを理解している。
ただ、昨年半ばに返り咲いた中道左派の労働党政権は、先住民のことをしっかり認識し、また、彼らの生活に影響を与えるような決定を行う場合に事前に相談する等について、憲法上でも明文化するかどうか国民投票を行う考えを持っている。
同政府は、年内に国民投票を実施できるよう、3月に必要な法整備を行う意向である。
同日付『ザ・ガーディアン』紙は、「植民地問題に関わる討論が沸騰する中、数千人が豪州の独立記念日に侵略の日と叫んでデモ行進」として詳報している。
豪州の祝日当日、植民地化された当国の歴史について政治的にも社会的にも考察すべきだとの声が上がる中、豪州全土で数万人が抗議のデモ行進を行った。
メルボルン大学(1853年設立の公立大)のマルシア・ラントン教授(71歳、人類学・地理学専問、アボリジニ出身)は1月26日、オーストラリア・デイは植民地化を祝う日であってはならず、“いい加減に嘘をつくのは止め、豪州の過去の悲惨な歴史を見直すべきだ”と訴えた。
1月26については19世紀以降認識されてきていたが、オーストラリア・デイと呼ぶ祝日となったのは1994年になってからである。
しかし、それ以降、豪州の先住民が過去から現在に至るまで如何に虐げられてきたか、との問題提起が日増しに強くなってきている。
そこで、かつては花火を上げ、祭りで賑わう日であったが、今年のオーストラリア・デイ当日には、先住民や彼らを擁護する団体が、“侵略の日”、“生存の日”、“統治された日”等と叫んでデモ行進を行っている。
近年では、“オーストラリア・デイの期日変更”運動が盛んになっていて、シドニーでは、アボリジニ出身のリンダ=ジュン・コウ氏が、数千人の群集を前にして、白人の豪州人のための日ではなく、“235年前(1788年)から、彼らは私たちの文化や慣習を消し去ろうとしてきたが、私たちは今もこの地に留まっていて、どこへも行っていない”と訴えた。
アルバニージー首相は1月26日、現政権としてオーストラリア・デイの期日変更を提案する考えはないと表明したが、「ガーディアン紙重要世論調査」によると、期日変更を支持する豪州人は、2019年に15%だったが、2022年には20%、そして今年は26%と漸増してきている。
そこで、活動家らは、期日変更の必要性が益々高まってきていると主張している。
しかし、オーストラリア・デイを尊重するグループ、例えば保守党のピーター・ダットン自由党党首(52歳、2022年就任)は、先住民と英国人の文化・歴史が融合した特異性を有する豪州を祝うオーストラリア・デイは必要不可欠であり、“我々の国民性を誇りに思うべきで、ひとつの歴史を壊して別の歴史を作りあげる必要はない”と強調している。
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近年、韓流ブームを背景に、韓国語は世界でも最も急速に成長しつつある言葉の一つとなっているという。米国では、中国語を学ぶ人が平均して多かったが、人権問題をめぐり米中関係が悪化したのに合わせて中国語学習熱も沈静化しているという。
1月17日付米
『CNN』:「Kポップや韓国ドラマが世界進出、次は韓国語」:
韓国語を学ぶ時期としてはこれ以上ない時期だ。近年、韓国語は世界でも最も急速に成長しつつある言葉の一つで、「韓流」ブームと呼ばれた現象を背景に、あらゆる市場でこれまで安定した人気を誇っていた中国語の人気を上回ってきている。
世界で500万人のユーザーをもつ学習アプリ「Duolingo」によると、2022年韓国語を学んだ人は最も多かった。とりわけ多いのが南・東南アジアで、フィリピンが最も多い。タイ、インドネシア、パキスタンでも大差なく人気だという。
人口の多さからも中国語は「未来のビジネス言語」になると長い間考えられてきたため、韓国語に続いて今も人気を博しているのだが、過去7年間(Duolingoでは)8位に留まっている。韓国語は日本語に次ぐ2位となっている。
このような韓国語の人気上昇は、韓国文化を世界に発信する「韓流」人気によるものだと専門家や教師らは言う。過去20年超、韓国はKポップや韓国ドラマ、美容製品やファッションそして食を世界に発信してきた。国際的文化発信地として、2021年にはオックスフォード英語辞典に韓国発の新語20語以上が追加されるまでになった。
この現象は韓国政府の後押しにもよるもので、1990年代から韓国文化を音楽やメディアで広める戦略をとってきた結果だが、今韓国は「韓国語」を世界的に広めようとしている。
これまで何十年も、海外で学ばれる主なアジア言語は中国語や日本語に限られてきたのだが、韓国のアーティストやディレクターの人気から、過去10年で変化が見られている。それと平行して韓国語への関心の高まりも数字に現れており、現代言語協会の調べでは、米国内の韓国語学校への入学者数が、2002年には5000人だったのに対し、2016年には14000人に増加している。同様に英国でも、韓国語コースを受講する学生が、2012年から2018年には増加している。
同日付米『ABCニュース』:「韓国:Kポップや韓国ドラマの次は韓国語を世界へ」:
韓国語の人気拡大は偶然ではない。韓国政府は様々な文化面な商機と合わせて韓国語の宣伝にも努めてきた。
韓流ブームにより、韓国は「発展した西欧に引けを取らない社会的レベルにある」とアジア諸国に訴求した。過去10年、韓国教育省は韓国語教師らをアジア諸国へ派遣。近年は、ラオス、ミャンマー、タイなど多くの国が、外国語カリキュラムに韓国語を加えている。政府系語学学校は、世界中に244校のラーニングセンターを開設。これらは韓国語への関心を保つ目的で行われていると教育省も認めている。
専門家は、韓国語を学ぶ学生の目的は様々だと指摘。韓国にルーツを持たず、韓国文化に純粋に興味をもつ人にとって「韓流」は重要な要素だが、韓国にルーツを持つ人々にとっては、韓国在住や、より良いコミュニティに属したいという動機による場合が多いという。インスタグラム等のSNSの台頭も、国際的な文化交流を促進し、韓国語学習者増加に大いに貢献したとみられる。
地域的違いでは、米国の学生は、好きな歌手や俳優に話しかけるため等、より文化を楽しむために学ぶ傾向にある一方、東南アジアの学生は、韓国や自国の外資系企業で職を得る等、より目的意識を持って学んでいるという。
韓国への旅行者も増えており、東南アジアからが全体の4割以上を占め、留学生では全体の3割となっている。
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