中国との関係修復を目指す豪州労働党政権、米・英国に倣って国防省施設内設置の中国製監視カメラ撤去か【米・豪州メディア】
12月21日付GLOBALi「
豪州外相;中豪国交樹立50周年を迎え4年振りに訪中」で報じたとおり、昨年5月に政権奪取した労働党政権は、保守党政権時代に冷え込んだ中国との関係を修復しようと中国側に積極的にアプローチしている。しかし、こと情報監視に関わる件は別で、国防省はこの程、同省施設内設置の中国製監視カメラに疑念が生じた場合、即刻撤去する意向を表明している。
2月9日付米
『AP通信』は、「豪州国防省、中国製監視カメラ撤去の意向」と題して、同省が設置している中国製監視カメラに怪しい監視システムが組み込まれていないか精査するため、同カメラを撤去する意向であると報じている。
豪州国防省は2月9日、同省施設内に設置された中国製監視カメラを撤去して、情報漏洩に繋がる怪しい監視システムが組み込まれていないか精査すると表明した。
豪州メディア報道によると、豪州政府内では、国防省・外務貿易省を含めた全省庁内で、少なくとも913台の監視カメラ・インターホン・電子エントリー装置(スマートエントリー)・映像録画装置が、中国のハイクビジョン(杭州海康威視数字技術、2001年設立)及びダーファテクノロジー(浙江大華技術、2001年設立)製造のものであるという。...
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2月9日付米
『AP通信』は、「豪州国防省、中国製監視カメラ撤去の意向」と題して、同省が設置している中国製監視カメラに怪しい監視システムが組み込まれていないか精査するため、同カメラを撤去する意向であると報じている。
豪州国防省は2月9日、同省施設内に設置された中国製監視カメラを撤去して、情報漏洩に繋がる怪しい監視システムが組み込まれていないか精査すると表明した。
豪州メディア報道によると、豪州政府内では、国防省・外務貿易省を含めた全省庁内で、少なくとも913台の監視カメラ・インターホン・電子エントリー装置(スマートエントリー)・映像録画装置が、中国のハイクビジョン(杭州海康威視数字技術、2001年設立)及びダーファテクノロジー(浙江大華技術、2001年設立)製造のものであるという。
両社は、中国共産党政府が一部株を保有する半官半民企業である。
米政府は昨年11月、同国内の通信ネットワークを保護するためとして、両社を含む複数の中国通信機器メーカー製の通信機器や監視カメラの導入を禁止する措置を講じている。
英国政府も同時期、ハイクビジョン製監視カメラを同政府省庁施設内に設置することを禁止している。
リチャード・マールズ副首相兼国防相(55歳、2022年就任)は豪州メディア『ABCニュース』のインタビューに答えて、当該カメラ等に監視システムが組み込まれていないか精査するとした上で、“もしかかる事態が判明したら、当然当該カメラ等は撤去されることになる”と語った。
豪州政府内では、首相府・内閣府及び農業省を除く全ての省庁内にハイクビジョン及びダーファ製の防犯・監視カメラが設置されていた。
『ABCニュース』によると、豪州戦争記念館(1941年開館)及び傷害保険庁(2013年設立)も中国製監視カメラを撤去する意向だという。
野党・自由党のサイバーセキュリティ担当のジェームズ・パターソン氏(35歳、ビクトリア州選出上院議員)は、豪州内務省が政府省庁内にどれ程の中国製防犯・監視カメラ等が設置されているのか即答できなかったことを受けて、各省庁には6ヵ月以上前から本件を精査するよう要求していたとして(行動遅滞について)非難した。
同氏は、“両社は、中国国家安全保障法(2015年制定)に基づき、中国国家諜報活動等に協力することが求められている”とした。
その上で同氏は、“これら防犯・監視機器で収集された情報・映像・録音等のデータが、密かに中国に送信されているのかどうか我々は知る由もない訳で、もし情報漏洩がなされていたとするなら、豪州国民にとって深刻な権利侵害になる”と警鐘を鳴らしている。
同日付豪州『ABCニュース』は、「連邦政府、設置防犯カメラが中国政府に接続されているかの疑念で“困惑”」と題して詳報している。
政府省庁内を詳細にチェックしたところ、中国政府と直接繋がっている中国メーカー製造の監視カメラが900台以上設置されていることが判明した。
米及び英国政府が、中国のハイクビジョン及びダーファ製の防犯・監視カメラにスパイウェア(注後記)が組み込まれている恐れがあるとして両社製品の導入禁止措置を講じたことから、豪州政府としても至急詳細をチェックする必要に迫られている。
野党・影の内閣サイバーセキュリティ担当相のパターソン上院議員は、省庁の中にはどれ程の中国製監視カメラが設置されているのか分からない部門があると指摘した上で、“政府には、中国製監視カメラに疑念を抱かせる機能が付いているのかどうか等、全省庁に対して可及的速やかにチェックのための行動計画を策定するように求める”と強調した。
連邦政府では、首相府・内閣府・農業省を除く全ての省庁に中国製防犯・監視カメラ類が装備されている。
司法省では、29ヵ所で合計195もの中国製防犯・監視機器が発見されているが、保安情報機構(防諜機関)にはひとつも設置されていなかった。
また、司法省傘下の連邦警察庁では、セキュリティ上の理由で当該機器の有無含めて詳細は明らかにされなかった。
一方、国防省では、全部でいくつあるのか不詳としたが、少なくとも1台設置されていることが分かった。
マールズ国防相は、省内をくまなく調べ、もし疑念ある防犯・監視機器が発見されたら即時撤去するとコメントしている。
なお、外務省では、詳細を明らかにしなかったが、少なくとも28の防犯・監視機器が設置されていることが分かっている。
また、財務省では115、金融庁では112の中国製機器が設置されていることが判明している。
一方、パターソン上院議員は、当該中国2社は、中国政府が行っている新疆ウィグル自治区におけるウィグル族への“ひどい”人権蹂躙と集団監視について、直接関与していることが分かっているとし、この点から言ってもとても容認できることではない、とも主張している。
(注)スパイウェア:ユーザーに関する情報をユーザーが意図しない形で収集し、それを情報収集者である特定の企業・団体・個人等に自動的に送信するマルウェア(悪意あるソフトウェア)。
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オーストラリア独立記念日に、数千人の先住民及び擁護団体が”英国による侵略の日”として抗議活動【欧米メディア】
1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ぶ独立記念日である。しかし、先住民や擁護団体は、1778年に英国艦隊がオーストラリア大陸を植民地とするために入境してきた“侵略の日”だとして、全国で抗議活動を展開している。
1月26日付
『ロイター通信』は、「数千人が、オーストラリア・デイは“侵略の日”だと叫んでデモ行進」と題して、先住民や彼らを擁護する団体が、英国からの独立記念日ではなく英国による“侵略の日”だと抗議して、全国でデモ行進を行ったと報じている。
1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ばれる、英国からの独立記念日である。
しかし、先住民のアボリジニや彼らの権利擁護の活動をしている団体が、英国艦隊が植民地化のためにシドニー湾に“侵略してきた日”だと抗議して、全国で数千人がデモ行進を行った。...
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1月26日付
『ロイター通信』は、「数千人が、オーストラリア・デイは“侵略の日”だと叫んでデモ行進」と題して、先住民や彼らを擁護する団体が、英国からの独立記念日ではなく英国による“侵略の日”だと抗議して、全国でデモ行進を行ったと報じている。
1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ばれる、英国からの独立記念日である。
しかし、先住民のアボリジニや彼らの権利擁護の活動をしている団体が、英国艦隊が植民地化のためにシドニー湾に“侵略してきた日”だと抗議して、全国で数千人がデモ行進を行った。
ニューサウスウェールズ州都のあるシドニー市街では、デモ隊がアボリジニの旗を掲げて練り歩いたり、先住民の慣習である煙を焚く儀式を執り行った。
他の都市でも、同様の抗議活動が行われていて、豪州『ABCニュース』報道によると、南オーストラリア州アデレードでは約2千人が参加したという。
首都キャンベラでは、アンソニー・アルバニージー首相(59歳、2022年就任)が先住民の人たちを尊重している、と演説していたが、その先住民は遥か6万5千年も前から豪州の地に移り住んできていた。
同首相は、“世界で最古の文化を継承してきた先住民とともに、豪州の独特な特性として認識していこう”と訴えた。
ただ、同首相は、「オーストラリア・デイ」は先住民にとって“苦難の日”と理解するも、この祝日を変更する考えはないとしている。
豪州市場調査会社ロイ・モーガン(1941年設立、メルボルン本拠)の世論調査によると、約3分の2が“オーストラリア・デイ”のままで良いとしていて、“侵略の日”とすべきだと回答したのは3分の1で、この結果は1年前と同じ比率だという。
この日の扱いについて多くの議論がされる中、例えば豪州最大の半官半民の通信会社テルストラ(1975年設立、本社メルボルン)は今年、従業員に1月26日を祝日とせずに出勤し、代替休日を取得することを容認した。
同社のビッキー・ブレイディ最高経営責任者(CEO)はSNS上で、“(235年前の)オーストラリア・デイ以降、多くの先住民が生命・文化等を蔑ろにされてきており、祝日と捉えるかどうか含めて一考する時期に来ている”と語り、彼女自身も出社している。
総人口2,500万人の豪州には、88万人の先住民が暮らしているが、経済的にも社会指標上でも劣っており、政府は“格差が定着”してしまっていることを理解している。
ただ、昨年半ばに返り咲いた中道左派の労働党政権は、先住民のことをしっかり認識し、また、彼らの生活に影響を与えるような決定を行う場合に事前に相談する等について、憲法上でも明文化するかどうか国民投票を行う考えを持っている。
同政府は、年内に国民投票を実施できるよう、3月に必要な法整備を行う意向である。
同日付『ザ・ガーディアン』紙は、「植民地問題に関わる討論が沸騰する中、数千人が豪州の独立記念日に侵略の日と叫んでデモ行進」として詳報している。
豪州の祝日当日、植民地化された当国の歴史について政治的にも社会的にも考察すべきだとの声が上がる中、豪州全土で数万人が抗議のデモ行進を行った。
メルボルン大学(1853年設立の公立大)のマルシア・ラントン教授(71歳、人類学・地理学専問、アボリジニ出身)は1月26日、オーストラリア・デイは植民地化を祝う日であってはならず、“いい加減に嘘をつくのは止め、豪州の過去の悲惨な歴史を見直すべきだ”と訴えた。
1月26については19世紀以降認識されてきていたが、オーストラリア・デイと呼ぶ祝日となったのは1994年になってからである。
しかし、それ以降、豪州の先住民が過去から現在に至るまで如何に虐げられてきたか、との問題提起が日増しに強くなってきている。
そこで、かつては花火を上げ、祭りで賑わう日であったが、今年のオーストラリア・デイ当日には、先住民や彼らを擁護する団体が、“侵略の日”、“生存の日”、“統治された日”等と叫んでデモ行進を行っている。
近年では、“オーストラリア・デイの期日変更”運動が盛んになっていて、シドニーでは、アボリジニ出身のリンダ=ジュン・コウ氏が、数千人の群集を前にして、白人の豪州人のための日ではなく、“235年前(1788年)から、彼らは私たちの文化や慣習を消し去ろうとしてきたが、私たちは今もこの地に留まっていて、どこへも行っていない”と訴えた。
アルバニージー首相は1月26日、現政権としてオーストラリア・デイの期日変更を提案する考えはないと表明したが、「ガーディアン紙重要世論調査」によると、期日変更を支持する豪州人は、2019年に15%だったが、2022年には20%、そして今年は26%と漸増してきている。
そこで、活動家らは、期日変更の必要性が益々高まってきていると主張している。
しかし、オーストラリア・デイを尊重するグループ、例えば保守党のピーター・ダットン自由党党首(52歳、2022年就任)は、先住民と英国人の文化・歴史が融合した特異性を有する豪州を祝うオーストラリア・デイは必要不可欠であり、“我々の国民性を誇りに思うべきで、ひとつの歴史を壊して別の歴史を作りあげる必要はない”と強調している。
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