インドのエビ養殖問題(2024/03/21)
市場に多く出回っているインド産の養殖エビに関して、他のアジア地域同様、労働搾取や環境への影響が問題視され始めているという。
3月21日付米
『ABCニュース』(AP通信):「インドの海老産業:AP通信の報道より」:
米国で消費されているエビのシェアはインド産がトップで、米国内の殆どの大型食料品店や飲食店で取り扱われている。その一番の理由は消費者にとって低価格なことだが低価格には訳がある。
2月AP通信がインド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州の労働環境を取材。シカゴの人権団体「コーポレート・アカウンタビリティ・ラボ」が20日発表した調査報告書では、危険な労働者の搾取状況が伝えられている。...
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3月21日付米
『ABCニュース』(AP通信):「インドの海老産業:AP通信の報道より」:
米国で消費されているエビのシェアはインド産がトップで、米国内の殆どの大型食料品店や飲食店で取り扱われている。その一番の理由は消費者にとって低価格なことだが低価格には訳がある。
2月AP通信がインド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州の労働環境を取材。シカゴの人権団体「コーポレート・アカウンタビリティ・ラボ」が20日発表した調査報告書では、危険な労働者の搾取状況が伝えられている。
米国では、一人あたり一年間のエビ消費量は5ポンド(約2.3キロ)を超え、魚介類の中でも最も人気がある。多くの米国人は米国産の食品を好んで買うが、エビの場合は国内産の割合がわずか5%で、あまり店頭に並ばず値段も高い。
1970年代、米国は世界でエビの養殖が最も盛んな国だった。その後エビはご馳走となり、20年の間にアジアで養殖技術が発展し、市場には輸入品が出回った。
インドが主要なエビ供給国となったのは、メディアがタイの魚介産業の荒れた実態を報じてからだった。2015年当時市場を占めていたタイ産エビの禁輸運動により、2千人が強制労働から開放された。現在、インド産エビは、米国で消費されるエビの40%を占めている。
インド南東部アーンドラ・プラデーシュ州では、エビ養殖のため新たに作られた孵化場や池が地域の水や土壌を汚染し、米など作物が育たないという。池からトラックで運ばれたエビは、加工所に運ばれ、女性従業員が素手か不清潔な手袋をで、冷えたエビの皮むき作業をする。多くのインド人は、地域的貧困、借金、失業に喘いでおり、このような仕事の機会しか貧困から抜け出す手段がない人も多い。
米国向けが労働搾取に関係があるかは断定はできないが、インド産エビを販売する米大手企業は、人権侵害や環境的ダメージを遺憾とし調査の意向を示している。
米国側で、低価格のエビが生産者を搾取している点も指摘されている。「コーポレート・アカウンタビリティ・ラボ」は、インド企業は生活が成り立つ賃金を支払い、労働安全衛生法を遵守すべきで、米国企業へはエビの価格見直しを、インドと米国政府へは現行法の遵守を求めている。
同日付『AP通信』:「インドのエビ産業の危険な労働環境に関する報告書」:
米国ではエビが最も消費されている魚介類だが、消費者の間でインド産エビへの懸念が高まっているという。
殆どの米国人は国内産を選ぶのだが、実際店頭に並ぶ国内産は5%のすぎず、強制労働や環境へのダメージとなる生産をさけるシステム上の欠陥が多い。
インドでも、大手企業の加工施設は衛生管理や労働基準が満たされているが、一方、米国輸入業者からは見えないところで、非常に狭い不衛生な施設があるのだ実態で、インド当局による環境への影響や規制違反への調査が十分でない。
メキシコ湾では多くのエビが取れるが、アジアに比べ、人的、環境標準が厳しく、費用がかさむ問題がある。昨年地域当局は、市場の95%を占める輸入低価格のエビと競争できないとの理由で、漁業災害宣言による財政支援を求めた。ルイジアナ州などの小規模経営の養殖業者はかつないほど倒産の危機に追い込まれているという。
米国税関国境警備局は、強制労働による輸入品規制しており、近年では、中国の綿製品、コンゴ民主共和国の金、ドミニカ共和国の砂糖の輸入を規制しているが、インド産への規制はない。
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豪州北東のグレートバリアーリーフ、地球温暖化やエルニーニョ現象で広範囲にわたり深刻なサンゴ礁白化【欧米メディア】(2024/03/18)
豪州北東クイーンズランド州の沖合には、グレートバリアーリーフ(GBR)と呼ばれる世界最大のサンゴ礁群生地帯である。これまで何度かそのサンゴ礁群が白化現象(注後記)に見舞われてきたが、直近の海洋科学者らの調査で、再び広範囲にわたって白化現象が認められ、同現象がGBRを越えて更に南方まで広がっていることが分かった。
3月15日付
『ロイター通信』、3月16日付
『豪州ABCニュース』は、豪州北東岸に広がるGBRが、地球温暖化やエルニーニョ現象による海水温上昇で新たに白化現象に見舞われていることが判明したと報じている。
豪州の海洋科学者グループは3月15日、クイーンズランド州北方に広がるGBRにおけるサンゴ礁群の白化現象が益々深刻化していると発表した。
GBRは、同州北東海岸沖に2,300キロメートルにわたって広がる、世界最大のサンゴ礁群生地帯である。...
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3月15日付
『ロイター通信』、3月16日付
『豪州ABCニュース』は、豪州北東岸に広がるGBRが、地球温暖化やエルニーニョ現象による海水温上昇で新たに白化現象に見舞われていることが判明したと報じている。
豪州の海洋科学者グループは3月15日、クイーンズランド州北方に広がるGBRにおけるサンゴ礁群の白化現象が益々深刻化していると発表した。
GBRは、同州北東海岸沖に2,300キロメートルにわたって広がる、世界最大のサンゴ礁群生地帯である。
ジェームズ・クック大(1970年設立の公立大)のマヤ・スリニバサン博士率いる海洋科学調査グループが公表したもので、同州北部タートル・グループ国立公園(ケアンズの約300キロメートル北、約10キロメートル沖)内の6つの島周辺のサンゴ礁群が被害に遭っていることが確認されたという。
同博士は『ロイター通信』のインタビューに答えて、“特に浅瀬で見られた白化現象は、かなり壊滅的だった”としながらも、“すべてまだ白化の段階にあり、水温が時間とともに下がる限り、まだ回復できる”との希望を述べた。
ただ、“気候変動現象に伴う海水温上昇は深刻で、当該白化現象を止めるには至らない恐れがある”とも言及している。
豪州NPO法人気候変動評議会(2013年設立)のサイモン・ブラッドショー主任研究員も、“現下で起こっているサンゴ礁群の白化現象は、陸上での山火事の惨事に相当する”とし、“この急激な変化は、サンゴ礁にとってより大きな危険であり、このまま改善されなければ、サンゴ礁再生が不可能となって後戻りできない地点を越えてしまう恐れがある”と警鐘を鳴らしている。
GBR海洋公園管理局(1975年設立)によると、長期にわたる海洋調査研究の結果、直近8年間で5度もの深刻な白化現象が発生しているという。
しかし、最近の調査では、GBR南端のバンダバーグ・ハービーベイ沖から南部の州都ブリスベン沖のモートン湾までの地帯においても、白化現象がみられるようになっているという。
クイーンズランド大(1909年設立の公立大学)本拠のサンゴ礁監視プログラムのダイアナ・クライン代表は、“バンダバーグ・ハービーベイからモートン湾までのサンゴ礁に白化現象がみられるのは、GBRに起こっている同現象が拡大していることを意味する”とし、“気候変動によって毎年海水温が上昇しており、この傾向が今後も続くと予想されることから、サンゴ礁の白化現象は更に深刻になる”と強調している。
(注)白化現象:造礁サンゴに共生している褐虫藻が失われることで、サンゴの白い骨格が透けて見える現象。白化した状態が続くと、サンゴは共生藻からの光合成生産物を受け取ることができず壊滅。サンゴの白化の原因は、温暖化等による海水温の上昇と考えられている。
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