末期患者の“死ぬ権利”法案がカリフォルニア州議会で可決(2015/09/14)
末期患者が医師の処方によって死を選択する権利を認める法案が米国カリフォルニア州議会を通過し、州知事がこれに署名するかどうかに注目が集まっている。
9月12日付
『NBCニュース』は、カリフォルニア州議会が、末期患者が合法的な医療で自らの命を絶つ権利を認める法案を可決したと伝えた。“終末期選択に関する法律”と呼ばれるこの法律は、余命6ヵ月以内の患者に対し、医師から致死量の医薬品投与を受ける選択肢を認めるものである。この物議を醸す法律については、カトリック教会が強く反対しており、法王フランシスコの米国訪問を前にして、カトリック教徒である州知事に圧力をかけている。...
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9月12日付
『NBCニュース』は、カリフォルニア州議会が、末期患者が合法的な医療で自らの命を絶つ権利を認める法案を可決したと伝えた。“終末期選択に関する法律”と呼ばれるこの法律は、余命6ヵ月以内の患者に対し、医師から致死量の医薬品投与を受ける選択肢を認めるものである。この物議を醸す法律については、カトリック教会が強く反対しており、法王フランシスコの米国訪問を前にして、カトリック教徒である州知事に圧力をかけている。また、共和党や一部の民主党員、終末期患者に死を強要することにつながると主張する障害者の支援団体なども反対している。
一方、モンタナ州、ニューメキシコ州、オレゴン州、バーモント州、ワシントン州などはすでに同様の法律が施行されている。この法案は、脳腫瘍と診断されたブリッタニー・メイナードというカリフォルニア州に住む29歳の女性が尊厳死を希望してオレゴン州に赴き、合法的に自らの命を絶ってから10ヵ月後に上程された。この事例が有名となり、“死ぬ権利”に対する運動が急速に盛り上がった。 カリフォルニア州医師会は、今年になって、30年もの間自殺ほう助に反対するとしてきた立場を撤回している。
9月11日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、オレゴン州など米国の4州で成立している特定の患者に対する致死医療を認める法案がカリフォルニア州議会上院で可決され、ジェリー・ブラウン州知事の署名待ちとなったと報じている。
カリフォルニアの法案は、オレゴン州の法律をモデルにして修正を加えた10年間の時限立法であり、医師は死を希望する患者と個別に面談し、本人以外から死への強要がないことを確認しなければならない。“尊厳死”運動の指導者たちは、個人の自由と選択の自由を認めるものと評価し、この法律の施行が転換点になると期待している。しかし、加州大学医学部教授のアーロン・ヘリアティ医師が懸念するように「法案には強要に関する規定はあるが、低所得層で一部適用外保険に加入している患者は、医療費が膨大になったとき家族からの死んでほしいという圧力を感じることになりかねない」などと反対する声も多い。
9月12日付
『タイム』は、先週金曜日にカリフォルニア州議会上院で“終末期選択に関する法律”が可決され、ジェリー・ブラウン州知事の判断に注目が集まっていると報じている。
この法案は、オレゴン州の“尊厳死に関する法律”を基にしたもので、本年8月のカリフォルニア州特別議会に再上程されたものである。この法案に署名するか拒否権を行使するかはブラウン州知事次第であるが、州知事は態度を明らかにしていない。州知事事務所は手続的な問題として、法案は医療財政の取り組みを議論するために招集された特別議会に再上程されており、審議の場として不適当ではないかと述べている。ただし、これが拒否権を示唆しているものとは限らない。ブラウン州知事は非常に哲学的で道徳的側面を重視する人物であり、10月11日の署名期限までこの問題については相当熟慮するだろうと報じている。
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ローマ教皇が“聖年の期間中”妊娠中絶の赦免を布告(2015/09/02)
9月1日付
『ロイター通信』は、ローマ教皇ポープ・フランシコが全ての司祭に対し、カトリック教の“聖年”の間、妊娠中絶をした女性を正式に赦免する権限を与えると報じた。
カトリック教の教えでは、妊娠中絶は重大な罪として自動的に破門され、権限のある司祭によってのみ赦免が与えられる。しかし、教皇は、12月8日から来年11月26日までの聖年の間、女性が“心から悔恨している”場合には聖職者全員が赦しを与えることができると布告した。...
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9月1日付
『ロイター通信』は、ローマ教皇ポープ・フランシコが全ての司祭に対し、カトリック教の“聖年”の間、妊娠中絶をした女性を正式に赦免する権限を与えると報じた。
カトリック教の教えでは、妊娠中絶は重大な罪として自動的に破門され、権限のある司祭によってのみ赦免が与えられる。しかし、教皇は、12月8日から来年11月26日までの聖年の間、女性が“心から悔恨している”場合には聖職者全員が赦しを与えることができると布告した。教皇フランシスコは、1300年の歴史の中で初めてのヨーロッパ人以外の教皇であり、タブーとされているテーマに対し寛容である。一方で、教皇は教会の妊娠中絶への反対の立場を撤回するものではないとしており、バチカンの公報は、「これは、決して罪の重大さを軽減するものではなく、慈悲を広げるものである。今のところ、聖年の期間に限る」と述べている。
9月1日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、この布告は前例が無い訳ではなく、教皇ジョン・パウロ2世が2000年の聖年の間同様の赦免をおこなったとしながらも、「教皇フランシスコが、カトリック教をより慈悲深く温かいものにしたいという意志を示したもの」と評している。
バチカンは、教皇も教会も妊娠中絶反対の姿勢を変えたわけではないと述べている。ローマカトリック法のもとでは、妊娠中絶は告白をして赦免を受けない限り自動的に破門されることになる。妊娠中絶は、通常は主教(ビショップ)から赦免が与えられる必要がある「留保された罪」と考えられている。
米国では、ほとんどの主教が司祭に対しこの権限を与えているが、多くの国ではそうではなく、赦免を求める女性は遅延や妨害や拒絶に直面することになる。教皇の布告は一年間、これを円滑に進めることができる。ボニファティウス8世が西暦1300年に、聖地への巡礼が危険すぎるとしてローマへの巡礼を勧告して以来、25年毎に聖年を祝っており、教会はこの聖年の間にいろいろな罪を赦免する慣わしになっている。聖年の間は、懺悔や可能であればローマへの巡礼が推奨される。
9月1日の
『NBCニュース』では、教皇の布告に関する識者の見解を紹介している。カトリック教評論家のジョン・アレン氏は、教皇の発表は教義の公式な変更ではないとし、「妊娠中絶を一時的に容認することは、リベラル派カトリック信者には歓迎されるだろうが、保守派からは反発が出るだろう」と述べている。バージニア・コモンウェルス大学のアンドリュー・チェスナッツ宗教学教授は「この発表により、教皇は慈悲深く、信仰を失った教徒を迎え入れようとする戦略家という評価ができあがることになる」と評する。また、「教皇の故郷であるラテンアメリカは、世界中のカトリック教徒の40%を占めているが、皮肉なことに世界中で一番妊娠中絶が多い。世界中の多くの女性が、妊娠中絶という大罪により教会から締め出されている。」と話す。
“バチカンの内幕:カトリック教会の権力と組織”の著者であるトーマス・リース司祭は、「教皇は教会を野戦病院に例えて、人を叱るのではなく傷ついた者を手当する場所であると述べている。教皇フランシスコのメッセージは、神の慈悲と加護を強く訴えたいとする教皇の願いに沿うものである」とコメントしている。
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