女性のアルコール摂取が男性と並ぶ(2016/10/26)
豪の大学の研究チームによる、欧米のアルコール消費に関する68の論文をまとめた調査研究では、長年男性が飲むものと考えられてきたアルコールの摂取量が近年女性もほぼ同じレベルになっていることが分かった。特に若い女性でその傾向が見られるという。専門家は、アルコール消費における男女差の縮小の背景には、男女の社会的役割の変化や女性をターゲットにした甘い飲料の影響もあると見られるという。女性のアルコール摂取拡大により、公的な健康対策が急がれるという。
10月25日付米
『CNNニュース』は「女性のアルコール摂取量が男性とほぼ並ぶとの研究結果」との見出しで次のように報道している。
オンライン医学雑誌「BMJオープン」に掲載された1891年~2001年生まれの4百万人を対象とした研究によると、歴史的には男性のアルコール摂取が多かったが、現在では女性の摂取量が若者を中心に上昇しているという。20世紀初頭には、男性のアルコール量は女性の倍でアルコール関連の罹患率は3倍以上だったが、現在は、男女の摂取量がほぼ同量。...
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10月25日付米
『CNNニュース』は「女性のアルコール摂取量が男性とほぼ並ぶとの研究結果」との見出しで次のように報道している。
オンライン医学雑誌「BMJオープン」に掲載された1891年~2001年生まれの4百万人を対象とした研究によると、歴史的には男性のアルコール摂取が多かったが、現在では女性の摂取量が若者を中心に上昇しているという。20世紀初頭には、男性のアルコール量は女性の倍でアルコール関連の罹患率は3倍以上だったが、現在は、男女の摂取量がほぼ同量。1980年代以降生まれの若い世代では、女性1に対し男性は1.1倍アルコールを飲み、健康問題が生じるほど飲む人は女性の1.3倍に留まった。
この研究は、1980~2014年に公表された世界の68の研究論文を分析したもの。研究の多くは北米、欧州のもので西洋の傾向を読み取れるが、今後はさらに多くの国々での研究が必要。これまで、アルコール消費の性差の研究が存在していたが確証データはなかったため、時代による変遷を調査したという。研究では、男女差が縮まった理由について、男女の社会的役割の変化を挙げている。
米疾病管理予防センターによると、アルコールを長期間大量に摂取すると心臓病、高血圧、脳卒中、肝臓病や消化器系の疾患を引き起こすが、「消費が増えた理由を解明することは効果的治療を行うのに重要」だという。アルコール依存症には効果的治療があると周知させるのは重要だが、女性への偏見から治療が行き届いていない問題がある。男女差がなくなっていることから医療関係者は女性の依存患者を注視すべきだとする。
10月24日付英
『ガーディアン』は「各国の研究論文で女性は男性と同じくらいアルコール摂取」との見出しで以下のように報道している。
今や女性も男性と同じくらいアルコールを摂取するため、女性の健康被害件数も追いつく事態となっていることが、オーストラリアのサウスウェールズ大学の研究チームの100年間4百万人を調査した研究により明らかとなった。「BMJオープン」で発表されたこの研究は、1980年以降の68の研究論文から男女のアルコール消費の変遷を調査。1891年~1910年生まれの男性は女性の3倍の摂取量、健康を害する率は3倍以上だった。一方、1991~2000年生まれでは量、健康率ともに、男女がほぼ同等となっている。
女性のアルコールが増えた原因の一つは、若い女性をターゲットにした甘い商品開発、低価格の消費キャンペーンによるもので、ある研究では、女性の消費が上回るという。また、理由の一つには、かつて男性がしていた仕事に女性が就き、仕事上や仕事帰りに付き合いで飲む必要が出てきたことが挙げられる。2011年の英国国家統計局の調査によると、役員クラスや専門職に就く女性は平均より平日に飲む機会が多いという。
今回の研究により、女性の健康への影響と対策の必要性が見えてきた。研究チームは、結果として女性を対象とした公的な健康対策が必要だと述べている。
英国のアルコール被害に取り組む慈善団体は、女性の消費は、1950年代より増加を続けているという。低価格のアルコールが生鮮食品と同じくらい手に入りやすく、家飲みが増加。飲料業界に女性への商品展開に慎重になるよう呼びかけている。
英国の最高医学責任者(CMO)のサリー・デイビスは、今年初頭、英国のアルコールのガイドラインを変更し、男女ともに週に14杯(以前は21杯)のアルコールは健康を害するとしたが、誰にでも安全という基準はないという。アルコール研究所のキャサリン・ブラウン氏は、今はドレスを着て化粧をし夜出かける前に一杯のむ若い女性向けの商品もある、大のグラス3杯は9杯に匹敵すると警鐘をならす。
女性向けのTVの宣伝も目に付く。女性は男性ほどアルコール耐性がないが、体の水分量に対して脂肪が多い。体内の水分量が少ないため、体内のアルコール分はより濃度が高くなる。女性は肝臓も男性より小さいため、アルコール分解機能も弱いのである。
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苦悩する欧州、内なるISとの闘い(2016/03/25)
3月22日、フランスに続きベルギーでもイスラム過激派による大規模なテロ攻撃により多くの死傷者が発生した。テロの背景には、欧州で生まれたイスラム移民の子弟が欧州社会への不満を抱き、中東に渡航しイスラミックステート(IS)の軍事訓練を受けた後に帰国してテロ化活動に参加するケースが増えていることや、イスラム教難民の大量流入によりテロリストの動きが探知しにくくなったなど問題がある。欧州の治安当局は、イスラム教徒居住地区の取締りを強化するなどテロ再発防止に懸命の努力をおこなっているが、決め手となる対策は無く、次のテロがいつ起きてもおかしくない状況である。
23日付
『ザ・ニューヨークタイムズ』紙は、「欧州の苦悩:内なるISとの闘い」との見出しで欧州内でのテロ攻撃への対処の難しさを報じている。
欧州の指導者らは、域内で起きた大規模なテロ攻撃についてISとの戦争であると認識しているが、問題はもっと複雑である。敵の隠れ家はパリやブリュッセルだけでなく欧州各都市のスラム街にもあり、そこはさながらミニ破綻国家を形成している。
フランスとベルギーはISが支配するシリアのラッカやその他の都市への米国の空爆に参加したが、ISの台頭を扇動した自国民にどう対処するかというより困難な問題に直面している。...
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23日付
『ザ・ニューヨークタイムズ』紙は、「欧州の苦悩:内なるISとの闘い」との見出しで欧州内でのテロ攻撃への対処の難しさを報じている。
欧州の指導者らは、域内で起きた大規模なテロ攻撃についてISとの戦争であると認識しているが、問題はもっと複雑である。敵の隠れ家はパリやブリュッセルだけでなく欧州各都市のスラム街にもあり、そこはさながらミニ破綻国家を形成している。
フランスとベルギーはISが支配するシリアのラッカやその他の都市への米国の空爆に参加したが、ISの台頭を扇動した自国民にどう対処するかというより困難な問題に直面している。彼らのほとんどはイスラム教徒移民の第3世代で、国民文化の埒外に放置された貧しい社会の中で過激思想に染まった者たちである。これらの社会は、ISによるパリ乱射テロ攻撃やブリュッセルでの爆弾テロの温床になっている。
専門家は、単に情報活動を強化し、シリアから帰国する過激活動家や戦闘員であると疑われる者のリストを共有するだけでは問題の解決にはならないと指摘する。欧州各国は、治安確保と監視や人権などへの懸念というジレンマを抱えながら、国内の脅威(人種差別や過激思想などの深刻な社会問題)に対処する戦略を作る必要がある。
政治学者らの見解によれば、イスラム教は過激派を生み出す原因ではないが、一部の若いイスラム教徒の過激な怒りの「運び役」としての役割を果たしている。ISがテロや難民を利用して脅威を与えようとしている状況では、簡単なテロの対策はない。イスラム過激派を研究するフランス人社会学者のギレス・ケペル氏は、ISは「内なる敵」の恐怖を煽って欧州イスラム教徒に対する拒否反応を強めさせ、それによって更にイスラム教徒を過激に追い込み、国内でイスラム教徒対国の内戦を引き起こそうと企んでいると指摘している。
イスラム教徒に対する国籍の否定、市民権の抑圧、際限のない非常事態宣言などでテロを取り締まろうとすれば、ISの思うつぼでヨーロッパ社会が内戦に陥る状況をつくり出すことになりかねない。
23日の
『CNNニュース』は、欧州で今後更にテロ攻撃が発生すると警告している。ベルギー治安当局は、国際空港と地下鉄での爆弾テロを受けて再度、過激派が潜んでいると思われるブリュッセル近郊の一斉取締りや家宅捜査をおこなっている。
テロ攻撃の後、何故ブリュッセルがイスラム過激派の温床になったのか、どれくらいの数の過激派が活動しているのかなどが問題視されているが、それは全く視野が狭い見方である。欧州のテロ問題は、ベルギーやフランスでのテロ事件よりも大きく、それは始まりであって終わりではない。ISの能力と意図を知れば知るほど、ISのテロ攻撃は両国の国境を越えて拡大するであろう。
ISが欧州へテロリストを送り込み、イスラム教徒の若者が大量に流入するという2つのファクターを考慮すると、大規模なテロ攻撃が近い将来必ず起きる。こうした動きは、フランスとベルギーを除けば、大量難民を抱えるドイツと米国の盟友である英国が最もリスクが高い。
困ったことに、欧州でのテロ攻撃に対抗する有効な対策は無いのが実情である。残酷で意志が強い敵が既に域内に入り込み、民衆を隠れ蓑にして、治安当局の監視の目をかいくぐって活動しているのは周知の事実である。こうしたことを考えると、次のテロ攻撃は可能性の問題ではなくいつ起きるかが問題である。欧州では現在の治安維持という難題が、近い将来、自由社会の存在自体を賭けた戦いに変わっていく可能性がある。
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