北朝鮮の標準時間変更が意味するもの(2015/08/17)
北朝鮮が突如標準時間の変更を発表し、各国で反響を呼んでいる。一方、韓国での反応は複雑である。
8月13日の
『CNNニュース』は、北朝鮮が標準時を30分遅らせる「平壌時間」を設定し、日本植民地解放70周年の8月15日以降実施すると報じた。
今後、北朝鮮は東京やソウルより標準時を30分遅らせ、日本の植民地時代以前のグリニッジ標準時(GMT)+8時間30分に変更することになる。朝鮮中央放送は、「卑劣な日本帝国主義者は、5千年の歴史と文化を誇る国を殲滅する意図をもって容赦なく踏みにじり、朝鮮標準時さえ強奪する許しがたい犯罪をおこなったのだ」と、変更の正当性を主張している。...
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8月13日の
『CNNニュース』は、北朝鮮が標準時を30分遅らせる「平壌時間」を設定し、日本植民地解放70周年の8月15日以降実施すると報じた。
今後、北朝鮮は東京やソウルより標準時を30分遅らせ、日本の植民地時代以前のグリニッジ標準時(GMT)+8時間30分に変更することになる。朝鮮中央放送は、「卑劣な日本帝国主義者は、5千年の歴史と文化を誇る国を殲滅する意図をもって容赦なく踏みにじり、朝鮮標準時さえ強奪する許しがたい犯罪をおこなったのだ」と、変更の正当性を主張している。北朝鮮では既に暦に関して、イエス・キリストではなく建国者である金日成の生誕から起算する独自の暦を採用している。金日成が生まれた1912年をチュチェ元年とし、今年はチュチェ104年にあたる。
韓国統一省は、「標準時変更によってカイソン工業地区での交易を含む両国交流に支障が生ずる可能性があり、長期的には両国統一に向けて悪影響がある」との見解を示している。韓国では、1954年から1961年まで、「新平壌標準時」と同様のGMT+8時間30分を採用したことがあり、ここ数年それに戻そうという動きがある。2013年には韓国与党セヌリ党の趙明哲国会議員が「日本帝国主義の残りかすから抜け出す機会だ」と主張し、標準時を30分遅らせる議案を発議したが実現には至っていない。韓国政府は、ソウル標準時は歴史的経緯ではなく実務上の理由で決まったものとの立場である。
8月14日の
『ABSニュース』はAP電として、北朝鮮が標準時を変更すると発表したことに韓国は驚いており、朴大統領は北朝鮮が韓国政府とこの問題で協調しなかったことを批判したと報じている。これまで、韓国及び北朝鮮は日本の植民地支配のもとで決められたGMT+9時間という日本と同じ標準時を採用してきた。植民地時代の遺産を払拭しようとするこの試みは、日本の過酷な支配を忘れず日本に対し深い恨みを抱いている北朝鮮と韓国の両国民にとって、共感を集めるものである。
北朝鮮が「平壌標準時」と呼ぶこの新標準時は、もともと統一朝鮮時代の1908年に採用されたが、日本が朝鮮を植民地とした2年後の1912年に日本標準時に変更させられた。その後、韓国では1954年から1961年まで一時的に旧に復したが、北朝鮮は現在まで日本標準時を維持してきた。北朝鮮が30分の時差を設けたことは奇異に映るが、前例が無い訳ではない。インド、イラン、ミャンマーなどは30分、ネパールは45分それぞれ隣国と時差がある。
標準時の変更は、既に地上で最も孤立した国である北朝鮮を、さらに孤立に追いやることになる。しかし、北朝鮮と韓国の独立をもたらした日本の敗戦を祝い、国民が一つにまとまる決定であることは確かだと報じている。
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シンガポール建国50年の躍進と抱える問題(2015/08/11)
8月9日付
『タイム』はAP電として、シンガポール独立50周年記念行事が盛大に開催されたことを伝えるとともに、同国は貧しい植民地港から富裕な大都市へと驚くべき変貌を遂げたが、政治活動の制限、外国人労働者の流入問題、生活費の上昇などにより国民の不満が高まっていることを報じている。政府は91歳で死去した故リー・クワンユー前首相への追悼ビデオで、シンガポールの団結心と躍進への誇りを鼓舞している。リー前首相は、30年以上も首相を務めたが、政敵に対しては容赦がなく、選挙で敗るか名誉棄損で訴え破産させるまで痛めつけた。...
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8月9日付
『タイム』はAP電として、シンガポール独立50周年記念行事が盛大に開催されたことを伝えるとともに、同国は貧しい植民地港から富裕な大都市へと驚くべき変貌を遂げたが、政治活動の制限、外国人労働者の流入問題、生活費の上昇などにより国民の不満が高まっていることを報じている。政府は91歳で死去した故リー・クワンユー前首相への追悼ビデオで、シンガポールの団結心と躍進への誇りを鼓舞している。リー前首相は、30年以上も首相を務めたが、政敵に対しては容赦がなく、選挙で敗るか名誉棄損で訴え破産させるまで痛めつけた。リー・シェンロン現首相はその息子であり、与党人民行動党の党首として本年9月の総選挙を戦う。
シンガポールではほとんどの主要メディアは政府系企業の支配下にあり、数少ない独立系ニュースウェブサイトは、政府が批判を封じるために利用する厳しい名誉棄損法があるため身動きがとれない。「国境なき記者団」は、2015年版世界報道の自由年鑑でシンガポールを180ヵ国中153位にランクしているが、それほど表現の自由は制約されている。
リー前首相は、1970年代に子供を2人に制限するキャンペーンをおこない人口増加を抑えたが、その後の経済発展に伴って労働力が必要となったため近隣諸国からの出稼ぎに依存した。2013年に、低出生率と人口老齢化を補うため2030年までに外国人労働者を人口の約半分に増やすとする政府予測が出されると、同国ではこれまで例のない反対運動が起きた。言論の自由を求める声が徐々に高まっている。
8月8日付
『CNNニュース』は、驚異的な発展を遂げてきたシンガポールが、今後は経済的、政治的岐路に立たされると報じている。
それによると、シンガポールの過去50年間の平均成長率は7.5%であったが、昨年のGDP成長率は2.9%とかなり減速している。過去、シンガポールは先進国に追いつこうとしてきたが、今や先進国の仲間入りをしており、成長率も先進国並みに2.5~3%程度で推移すると予想する。
人民行動党は建国以来このかた政治を主導し、革新的政策を打ち出し変化に対応してきた。シンガポールの現在の発展と繁栄は政治指導力の賜物であるが、これからは言論や報道の自由が前提とならねばらないと報じている。
8月10日付
『ロイター通信』は、シンガポールの人口老齢化対策は、世界経済が健全である時にしか効果がなく、当面は苦しい状況が続くと予想する。国内労働力は老齢化し減少しており、50年前の建国時の国民平均年齢は20歳であったが現在は39歳である。2011年まで8年間の外国人労働者の平均増加数は毎年4万9千人であったが昨年は1万7千人に減少している。政府は労働力をより効率化することで経済への悪影響を避けようとしているが、効果は上がっていない。生産性はこの一年下がっており、雇用状況も停滞している。シンガポールの長期的かつ最大の課題は、人口老齢化対策であると指摘している。
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