さらに拡大するFIFAの汚職スキャンダル(2015/09/18)
国際サッカー連盟(FIFA)のゼップ・ブラッター会長は、一連の汚職事件で幹部14人が逮捕されたことを受け、来年2月に退任する意向を表明しているが、新たな疑惑が次々と沸き起こっている。
9月17日付
『ロイター通信』は、スイス及び米国当局の汚職問題調査に揺れるFIFAが、ジェローム・バルク事務局長を職務停止処分にしたと報じた。FIFAの発表は、元イスラエルのサッカー選手ベニー・アーロン氏が、バルク氏はワールドカップ入場券の不正転売取引で不正な利益を得たと発言したことを受けたもので、この問題は倫理委員会で調査をおこなうとしている。バルク氏は、弁護士を通じこの申し立ては理不尽な捏造であるとして、全面的に否定している。...
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9月17日付
『ロイター通信』は、スイス及び米国当局の汚職問題調査に揺れるFIFAが、ジェローム・バルク事務局長を職務停止処分にしたと報じた。FIFAの発表は、元イスラエルのサッカー選手ベニー・アーロン氏が、バルク氏はワールドカップ入場券の不正転売取引で不正な利益を得たと発言したことを受けたもので、この問題は倫理委員会で調査をおこなうとしている。バルク氏は、弁護士を通じこの申し立ては理不尽な捏造であるとして、全面的に否定している。アーロン氏の申し立ては、米国司法省とスイス検事当局が本年5月に14人のFIFA幹部を汚職の嫌疑で告訴し、捜査を続ける過程で出てきたものであり、更に逮捕者が増えると予想される。
また、9月17日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、ゼップ・ブラッター会長の右腕として事務局長を8年間務めてきたバルク氏が、ワールドカップの入場券の闇取引に直接関与した疑いで職務を停止されたことを報じている。それによれば、元サッカー選手で人気スポーツイベントの入場券販売コンサルタントであるベニー・アーロン氏は、バルク氏がワールドカップの入場券を高額で転売する取引にバルク氏は直接関与し利益を得たと語っている。また、バルク氏及びFIFAはアーロン氏の会社と2014年ワールドカップで入場券販売に関する契約を結んだが、それを守らなかったため会社は損害を被ったと主張している。
バルク氏は、一連の汚職容疑では告訴されていないが、FIFA汚職事件の中心部である2008年の千億ドルの銀行送金を承認した“未確認のFIFA最高幹部”として、米司法省の告訴状に記載されている。バルク氏は当初送金との関係を否定していたが、6月にその事実を認めた上で何もやましいことは無いとしている。米国司法当局は、「この千億ドルは表向きにはカリブ諸国のサッカー振興資金として、トリニダード・トバコの元FIFA役員であるジャック・ワーナー氏に渡されたが、実際は2010年ワールドカップを南アフリカに投票させるための賄賂である」と述べている。ワーナー氏はこの問題発覚後2011年にFIFA役員を辞任し、米司法省から起訴されている。バルク氏については、2006年にビザ、マスターカードとのスポンサー契約交渉を巡り、虚偽の情報開示で告訴され一時的にFIFAを解雇された経歴がある。
9月15日付
『CNNニュース』は、FIFAの汚職問題でさらに多くの関係者が起訴されるだろうと伝えている。ロレッタ・リンチ米検事総長は「新しい証拠に基づき、さらに個人や会社を追起訴する」と述べている。FIFAについては、カリブサッカー連盟に対し2010年及び2014年ワールドカップ大会の放映権を、相場とかけ離れた低い価格で売却した問題が浮かび上がっている。また、2018年と2022年の開催国決定を巡る汚職の可能性についても調査が進められている。リンチ氏は、FIFA幹部がサッカーを“金目当ての犯罪興行”に変えてしまったことに対し、組織犯罪法(ラケッティア行為)が適用されれば懲役20年の実刑もあり得ると語っている。
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ギリシャ議会が解散、総選挙へ(2015/08/24)
ギリシャのチプラス首相は8月20日に辞任を表明し、海外主要メディアは議会解散、総選挙を巡る動向について報道している。
8月21日付
『ロイター通信』は、海外債権者との緊急財政支援策に合意したチプラス首相が、総選挙によって権力基盤を強化することを目指し辞任したと報じた。
ギリシャは、チプラス辞任の日、緊急融資860億ユーロのうち、第一回目の融資を受け取っている。欧州委員会は、ギリシャが緊急財政支援策を実施することについて心配はしていないと述べるとともに、ギリシャ政府は援助と引き換えに経済改革を進めなければならないとしている。...
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8月21日付
『ロイター通信』は、海外債権者との緊急財政支援策に合意したチプラス首相が、総選挙によって権力基盤を強化することを目指し辞任したと報じた。
ギリシャは、チプラス辞任の日、緊急融資860億ユーロのうち、第一回目の融資を受け取っている。欧州委員会は、ギリシャが緊急財政支援策を実施することについて心配はしていないと述べるとともに、ギリシャ政府は援助と引き換えに経済改革を進めなければならないとしている。ドイツ政府は、ギリシャ政府が改革を推し進めることを期待しており、選挙によって改革の実施が遅れるならば、援助金の支払いも遅らせると述べている。また、フランス政府は、ギリシャの新体制と緊急財政援助策の実施を協働していくと表明した。
ドイツ銀行のアナリストは、「短期的には多くの問題が生じ、緊急財政支援策で要求されている改革は遅れるだろう。しかし、最新の世論調査ではチプラスはギリシャ政界を強力に主導しており、来るべき選挙では圧勝し、政権基盤は今より強化され、長期的には緊縮財政実施に関するリスクは無くなるだろう」と予想している。
8月22日付
『ニューズウィーク』は、ギリシャの緊急財政支援に反対するシリザ党の三分の一の議員が同党を離党し新党を結成する一方、チプラス党首は首相を辞任し早期に選挙を目指すと報じている。チプラスは、議会での過半数を失い、重要な改革を実行するためには反対政党に頼らざるを得ない状況であり、このままでは長期的に政権を維持できない。シリザ党は選挙に勝利するだろうが、絶対多数を獲得できるかは分からない。国民の過半数(63.1%)は本年1月の国民投票でユーロからの離脱に反対したが、チプラスが苦労して推し進めてきた緊急財政支援策に付けられた厳しい条件に国民がどう反応するかは定かではない。チプラスにとっては、自分への人気を最大限利用することが鍵であり、その人気は本格的に財政緊縮策が始まれば間違いなく下降する。
8月21日付
『CNNニュース』は、ロンドンの王立国際問題研究所のアンジェロ・クリソゲロス研究員の「この選挙を実施する理由は、非常にはっきりしている」とする見解を報じている。それによると、7月12日にギリシャとその債権者間で協定が成立した後、チプラスはその政治綱領と選挙公約に全く反する行動を執りながら、政府と党を主導してきた。
厳しい財政緊縮という犠牲を払って、ユーロ圏に留まるという合意を得たチプラスの決断は、シリザ党左派との亀裂を生んだ。
シリザ党が絶対多数を獲得すれば、チプラスはギリシャ国民がユーロ圏と合意した決定を承認したのだと宣言し、緊急財政支援の条件を実行する強力な権限を獲得し、よりまとまりのある政府をつくることができる。チプラスが絶対多数を獲得できなければ、連立政権を模索することになるが、どちらのシナリオになろうとも、チプラスは自分に付いた猛烈な反緊縮財政主義者というレッテルを拭い去ろうとしているようである。
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