米・英国メディア;ISと有志連合の戦いの行方は?(2)(2015/12/17)
12月14日付「イスラム過激派組織イスラミックステート(IS)と有志連合の戦いの行方は?」の中で、“ISが仕掛けたと言われる、パリ等での一連の無差別テロ事件を契機に、米国主導の有志連合軍に英国、フランスはもとより、ロシアも協調して空爆を仕掛け、IS主要メンバーである財務トップらを殺害することに成功した。しかし、一方でISは、石油の密売や銀行の略奪などで15億ドル(約1,800億円)もの多額の資金を得ており、ISと有志連合との戦いは依然果てしないとみられる”と報じた。そして、大統領選候補者の一人のトランプ氏を含めた、野党・共和党側から一斉に弱腰外交と非難されたオバマ大統領が、いよいよIS掃討作戦に積極的に動き出したと米・英国メディアが伝えている。
12月16日付米
『NBCニュース』は、「カーター国防相、IS壊滅のためイラク訪問」との見出しで、「米国防総省のアッシュ・カーター長官は12月16日、IS壊滅作戦を急ぐため、事前通知なく急きょイラクを訪問した。同長官は、現地派兵3,500人を率いる米司令官やイラクのトップと会い、戦闘ヘリコプターの起用等、IS主要メンバーを拿捕、あるいは殺害して、ISを壊滅させるための新たな戦略を討議する予定である。...
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12月16日付米
『NBCニュース』は、「カーター国防相、IS壊滅のためイラク訪問」との見出しで、「米国防総省のアッシュ・カーター長官は12月16日、IS壊滅作戦を急ぐため、事前通知なく急きょイラクを訪問した。同長官は、現地派兵3,500人を率いる米司令官やイラクのトップと会い、戦闘ヘリコプターの起用等、IS主要メンバーを拿捕、あるいは殺害して、ISを壊滅させるための新たな戦略を討議する予定である。」とし、「なお、カーター長官のイラク訪問は、オバマ大統領が12月14日、国防総省を訪問して、IS壊滅作戦を急ぐよう檄を飛ばしたことから、急きょ決まったものと思われる。」と報じた。
同日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用)は、「米国防長官、対IS戦強化のためバグダッド訪問」との見出しで、「米国防総省は今月、イラクとシリアに強力部隊を派遣し、イラク部隊が手間取っている、バグダッドの西のラマディを奪還する作戦に投入すると発表していた。カーター長官のイラク訪問はこれらを含めた対IS壊滅作戦の詳細を協議するためという。また、シリアのラッカ等大都市の多くがISに制圧されていることもあり、従来オバマ大統領は米軍による地上戦に消極的であったが、IS掃討作戦に積極的に関わる必要が出てきている。」と伝えた。
一方、12月15日付米
『CNNニュース』は、「ドイツ、シリア・テロリストグループ支援の説教師を逮捕」との見出しで、「ドイツ司法省は12月15日、ドイツ内のシリア・テロリストグループ(JMA)を資金的に支援し、また、ジハーディスト(聖戦戦士)と呼ばれる戦闘員を募った罪で、ドイツ人説教師のスベン・ロー(35歳)を逮捕したと発表した。JMAは2013年設立以来、ISと緊密に連携してきた。同容疑者はドイツ西端のヴッパータール(デュッセルドルフ北東近郊)で拘束された。また、ドイツ特捜部隊は先月、ベルリン(ドイツ東端)のイスラム文化センターを襲撃した容疑で2人を逮捕している。ドイツ政府は今月初め、IS掃討作戦にもっと積極的に関わると表明している。」と報じた。
また、12月16日付英
『メール・オンライン(デイリィ・メール電子版)』は、「IS、制圧下の住民に国際放送視聴禁止」との見出しで、「ISが制圧しているシリアのラッカで配布されている通告によると、ISは住民に対して、反IS活動家が仕掛けているIS非難の映像を流す国際放送の視聴を禁止したという。また、新たにテレビを購入したり修理することも認めず、必要に応じてIS戦闘員に違反した住民の家屋に入らせ、衛星放送設備などを破壊させている。ISは特に西側文明の象徴を敵視しており、今年初めには米スポーツ用品大手のナイキ製商品の着用を禁止し、また、個人のインターネット使用も認めていない。従って、ラッカの住民は、IS管理下にあるインターネット・カフェでしか、インターネット使用が許されていない。」と伝えた。
シリアのラッカ含めて、IS制圧下で不便を強いられるだけでなく、無謀な搾取をされている住民は数百万人と言われる。また、IS方針に従わないとして拘束され、拷問、更には斬首されてしまう人も数百人に上るともいう。ある意味、ISの人質になっている多くの住民を救い出すのに、あとどのくらい有志連合の空爆や地上戦が必要なのであろうか。
なお、オバマ大統領が12月14日にメディアに明らかにしたところでは、イラクにおいてはISに占拠された市街地のうち、約4割を奪還したとし、また、石油取引や武器・兵士の手配をしていたIS幹部、そして、日本人ジャーナリストの後藤健二さんらを殺害したとされる、ジハーディ・ジョンと呼ばれた英国人ISメンバーを殺害したという。
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アフガンでの大地震救援活動を阻む内戦(2015/10/28)
10月26日、アフガニスタン北部でマグニチュード7.5の地震が発生した。死亡者はこれまでに300人を超え、アフガニスタンとパキスタンの両政府は、山岳地帯などでの被害の状況の把握を進めるとともに救助活動に全力を挙げている。また、国際救援活動グループも支援活動に乗り出そうとしているが、カブール政権とタリバン武装勢力の内戦が激しさを増しており、タリバン支配地域での救援活動への大きな障害となっている。アフガン山岳地帯に厳しい冬の到来が迫り、救援活動が急がれると各メディアが報じている。
10月27日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、今回の大地震で、アフガンの東部および北東部の地域で多くの死傷者と7000戸以上が倒壊する被害が発生し、紛争による困窮に追い打ちをかけていると報じている。
この一帯では、数ヵ月にわたり、イスラミックステートに忠誠を尽くすタリバン勢力が政府軍や民兵に対し攻勢をかけ、残虐な手段で東部一帯を支配下に置いており、地域住民は厳しい内戦に巻き込まれてきた。アフガン紛争地域での大地震被災者にどのように支援の手を届けるかが、政府や支援活動家にとって非常に大きな問題となっている。...
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10月27日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、今回の大地震で、アフガンの東部および北東部の地域で多くの死傷者と7000戸以上が倒壊する被害が発生し、紛争による困窮に追い打ちをかけていると報じている。
この一帯では、数ヵ月にわたり、イスラミックステートに忠誠を尽くすタリバン勢力が政府軍や民兵に対し攻勢をかけ、残虐な手段で東部一帯を支配下に置いており、地域住民は厳しい内戦に巻き込まれてきた。アフガン紛争地域での大地震被災者にどのように支援の手を届けるかが、政府や支援活動家にとって非常に大きな問題となっている。民間組織は定常的に部族の有力者や地域会合で支援活動ができるよう働きかけているが、新たな内戦が非常に激しいため救援支援活動に支障が生じている。
タリバン支配地域に住む被災者は、地震による被害に加え、住居の周りをうろつく多くのタリバン兵士から食料を要求され困窮している。ある家族は、「毎日毎晩20~30人のタリバンがやってきて食料を要求し、子供に与えるパンもない」と訴える。一方、タリバンは兵士に対し「被災者にできる限りの支援をおこない、困窮者に慈善を施すよう命令を出した」との声明を発表した。大地震の震源地であるバダフシャーン州北部のタリバン支配地区責任者は、「支援活動家は髭が無くとも、どの様な色の服装でも構わない」として支援グループの到着を要請している。
しかし、アフガンは支援活動家にとって最も危険な国の一つであり、タリバンが安全の保証をしたとしても支援活動家が安全に行動できるとは限らない。今月、国連職員がカンダハール州で銃殺され、ナンガハール州では2人の人権活動家が爆殺されている。また、先月には国境の無い医師団の病院が米軍に誤爆され、30人が死亡している。
10月27日付
『ロイター通信』は、タリバンが、今回の大地震に対する救援活動家の支援を歓迎していると報じる。救援隊は300人の死者を出した地震被害の全容を把握しようと苦闘していが、アフガンの山岳地帯が広範囲に被災した上、厳しい寒さの季節が間近に迫っている。国際支援グループにとっては、繰り返し反政府勢力の攻撃目標となってきただけに、安全への不安が大きな障害となっている。タリバンは、今年になってアフガン全域でカブール政権打倒の戦闘を強化してきたが、支援活動は妨害しないと表明し、兵士には被災者を助けるよう命令を出している。
パキスタン当局は228人の死亡者を確認し、アフガンでは少なくとも115人が死亡したと発表しているが、死亡者の数は復旧活動が進むにつれて増えると予想される。山岳地帯の厳しい冬が迫っており、家を失った何千人もの被災者の苦境は深刻の度合いを深めていると報じている。
10月27日付
『CNNニュース』は、大地震による死亡者は300人を超えると報じている。現時点の死亡者数は、パキスタンで229人、アフガンとインドの3ヵ国合計で306人となっている。アフガンでは12人の女生徒が戸外に避難する途中で将棋倒しとなり死亡した。今回の地震はマグニチュード(M)7.5であり2005年に発生し7万人が死亡したカシミール大地震のM7.6と規模的には同じであるが、震源がカシミール大地震の26㎞と比べ223㎞と深いため、被害はこの時ほど大きくはならない模様であるとしている。
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