米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は25日、核戦争の可能性についての懸念が高まったことや、トランプ米大統領の「予測不可能性」により、人類が地球を破滅させるまでの時間を比喩的に示した「世界終末時計」の時刻が30秒進み、1953年と並んで過去最短の2分前になったと発表した。
「世界終末時計(Doomsday Clock)」は冷戦時代初期の1947年に、米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(Bulletin of the Atomic Scientists)」の表紙絵として誕生した。時計は核戦争などによる人類の絶滅を真夜中の0時として、その終末までの残り時間をあと何分という形で比喩的に示すものである。1947年には7分前だった。
同誌は定期的に委員会によって、終末時計の時刻の修正を行っており、1989年からは核兵器による脅威だけでなく、気候変動による環境破壊や生命科学の負の側面なども考慮して時計の針の動きを決定している。...
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「世界終末時計(Doomsday Clock)」は冷戦時代初期の1947年に、米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(Bulletin of the Atomic Scientists)」の表紙絵として誕生した。時計は核戦争などによる人類の絶滅を真夜中の0時として、その終末までの残り時間をあと何分という形で比喩的に示すものである。1947年には7分前だった。
同誌は定期的に委員会によって、終末時計の時刻の修正を行っており、1989年からは核兵器による脅威だけでなく、気候変動による環境破壊や生命科学の負の側面なども考慮して時計の針の動きを決定している。その時刻は米国と旧ソ連が相次いで水爆実験に成功した1953年の2分前から、旧ソ連の崩壊により冷戦が終結した1991年の17分前までの範囲で、これまで合計22回変更されてきた。
終末時計は昨年、3分前から30秒進められて2分半前となっていたが、今年も30秒進められ、1953年と並び、これまでで世の終わりの時刻に最も近い2分前となった。国際関係、科学、環境、安全保障等、分野をまたがる専門家集団が発行する同誌は、声明により、「2017年には、世界の指導者らは、核戦争や気候変動の迫る脅威に対して効果的に対応せず、世界の安全保障の状況を1年前より危険なものとした。これほど危険性が増大したのは第二次世界大戦以来である。」とその根拠を説明した。
同誌のレイチェル・ブロンソン社長兼最高経営責任者は、「今年の議論では、核の問題が再び舞台中央に登場した。」と述べている。ブロンソン氏は、2017年の情勢を概観し、北朝鮮の新たな核・ミサイル実験や、中国、パキスタン、インドの核戦力強化の姿勢、トランプ米大統領のツイートや声明によって具体化された「予測不可能性」などを時刻決定の要素として挙げている。
核の問題の他、同誌は米露関係の緊張、ロシアのウクライナ介入や近隣諸国に対する軍事力の誇示、中国の南シナ海での海洋進出、気候変動の脅威、インターネットを使用した情報の濫用なども、時刻を進めた要因としている。
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