6月6日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「米中、南シナ海問題で協力することで合意?」
「・6月6日から北京で始まった、第8回S&EDにおいて、両国高官が会談し、南シナ海問題について、これ以上両国間の緊張を高めることなく、今後とも協力関係を続けていくことで同調。
・S&EDの冒頭、習近平(シー・チンピン)主席は、アジア太平洋地域の問題に関し、米中両国がもっと対話と協調関係を高めていくことが必要だと表明。
・一方、ジョン・ケリー国務長官は、米国としては、中国も、また(領有権を争う)相手方どちらか一方の肩を持つ意向はなく、ただ、南シナ海問題は一方的な行動ではなく、法に則って対話で解決していくべきだという考えであると強調。」
6月7日付フィリピン
『マニラ・ブルティン』(
『AFP通信』記事引用):「米中、友好関係構築希望」
「・習主席は、米中間には相容れない問題もあるが、相手をおもんばかって建設的な態度で対応していく必要があると表明。
・これに対してケリー長官は、南シナ海問題については、全ての国に対して国際法と規範を守るように求めると強調。
・なお、中国外交部の王毅(ワン・イー)部長は先週、フィリピンの新大統領のロドリゴ・ドゥテルテ氏が、南シナ海問題について中国側と対話によって解決したいとの意思表示を歓迎すると表明。」
同日付中国
『東方日報(上海)』:「習氏、米政府に相互信頼が必要と強調」
「・6月6日のS&EDにおける演説で習主席は、米中両国は、立場の違いを克服し、また、両国にとって敏感な問題について解決していくために、もっと信頼関係を高めることが肝要と主張。
・S&EDは2009年に開始し、8回目となる今回も、400人以上の米高官、経済人等が出席。
・中国側議長の楊潔篪(ヤン・チエチー)国務委員は、米中両国は、お互いの国益や重要事項、これは南シナ海問題も含めて、尊重し合うことが必要と発言。
・一方、米側議長のケリー長官は、S&EDは、米中双方が立場の違いなどを率直に協議する場として非常に貴重な機会であると表明。」
一方、同日付香港
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』:「緊張が高まる中、南シナ
海で中国が建設中の病院が6月に完成」
「・中国国営メディアの
『新華社通信』報道によると、中国が人工島を建設した、南シナ海南沙(スプラトリー)諸島のファイアリークロス礁(中国名;永暑礁)において、最新医療機器が揃えられた病院が6月に完成予定。
・ただ、専門医は中国本土にいて、重篤な患者等の診察、医療処置はテレビ電話を通じて地元常駐の医師に指示。
・また、同礁には、68匹の養豚場も建設済み。
・中国は、南沙諸島の岩礁(ほとんどが人工埋立地であるが)に灯台、滑走路等の施設を急ピッチで建設。
・昨年、既に3基の灯台をクアテロン礁、南ジョンソン礁、スービ礁に建設済みで、更に2基をミスチーフ礁、ファイアリークロス礁に建設予定。
・なお、中国はこれまで、フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の審理結果(おそらく、フィリピン側に有利な判断が6月下旬に下される予定)には従わないと繰り返し主張。」
また、同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「フラ
ンス政府、欧州海軍ももっと南シナ海を監視航行すべきと表明」
「・先週シンガポールで開催されたSLDにおいて、フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン国防相は、欧州各国ももっと南シナ海に監視航行のために軍艦を派遣すべきだと表明。
・同相はまた、フランスは直近1年で既に3度監視航行を実施したと発言。
・欧州各国は目下、南シナ海における領有権問題について関係各国による平和的解決を求めているが、フランス側の提案は、同海域で海洋活動を進めている中国に対する明確な忠告。
・同相の発言を受けてカナダのハージット・シン・サジャン国防相も、カナダとしても南シナ海問題解決のためもっと積極的に関わっていくと発言。」
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これまで本欄の「南シナ海における米中のつばぜり合い(1)~(4)」等で、米中それぞれのつばぜり合いについて触れてきた。そして、両国以外の南シナ海問題関係国もせめぎ合いをしており、日本も米国側を後方支援すべく奔走している。
5月24日付米
『ロイター通信米国版』の報道記事「日加両国首相、南シナ海問題について“重大な懸念”表明」:
「・安倍首相は5月24日のカナダ・トルドー首相との会談において、中国による南シナ海の人工島建設及び軍事拠点化について、両国とも“重大な懸念”を有していることで一致したと発表。
・今週後半の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)に先駆けて、両国首相が会談したもの。」
5月25日付米
『ユーラシア・レビュー』通信の報道記事「フィリピンのドゥテルテ新大統領の外交方針は?」:
「・暴言で悪名高いロドリゴ・ドゥテルテ新大統領であるが、南シナ海問題について、地政学的ニュアンスの違いを踏まえて洗練された解決に導き、また、中国・フィリピン間関係改善を成し遂げるのではないかと期待。...
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5月24日付米
『ロイター通信米国版』の報道記事「日加両国首相、南シナ海問題について“重大な懸念”表明」:
「・安倍首相は5月24日のカナダ・トルドー首相との会談において、中国による南シナ海の人工島建設及び軍事拠点化について、両国とも“重大な懸念”を有していることで一致したと発表。
・今週後半の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)に先駆けて、両国首相が会談したもの。」
5月25日付米
『ユーラシア・レビュー』通信の報道記事「フィリピンのドゥテルテ新大統領の外交方針は?」:
「・暴言で悪名高いロドリゴ・ドゥテルテ新大統領であるが、南シナ海問題について、地政学的ニュアンスの違いを踏まえて洗練された解決に導き、また、中国・フィリピン間関係改善を成し遂げるのではないかと期待。
・欧米メディアが“東アジアのトランプ”とのレッテルを張っているが、実際ドゥテルテ氏はトランプ氏と異なり、二十有余年に及ぶ政治家としての揺るぎない実績を以て対応。
・具体的には、対峙する米中両大国に対して、ラモス政権(1992~1998年)及びアロヨ政権(2001~2010年)と同様、案件ごとに、また、フィリピンの国益に沿って、それぞれの国と等距離の外交政策を取ると分析。
・これまでベニグノ・アキノ政権は、安全保障のために米国及び日本の支援を仰ぎ、また、東南アジア諸国連合(ASEAN)をして中国に対抗せしめようと画策し、更に、中国を国際仲裁裁判所に提訴する等、敵対的な対応。
・そこでドゥテルテ新大統領は、来年ASEAN会議の議長国になることもあって、南シナ海問題について、中国側代表との直接対話を希望し、同海域の資源開発に関し、両国による共同開発を提案する意向を表明。
・また、オバマ大統領から最初に大統領選当選を祝うメッセージを受領したものの、ドゥテルテ新大統領は、これまで同様テロ対応で米国の支援を仰ぐものの、それ以外の安全保障上の連携については見直す可能性が大。」
5月24日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「“オバマ氏の策略”
は中国に対抗する中小国への支援」:
「・オバマ大統領は、中国と直接に全面対決するのではなく、中国と相対するベトナム、フィリピン、豪州などに部分的な支援を施すことで、中国対抗勢力を強化するとの策略だ、と国際政治専門家は分析。
・その一例が、長い間関係修復に手間取っていたベトナムに対して、武器禁輸政策の解除であり、これは明確に中国政府に対する牽制。」
5月25日付フランス
『フランス 24』オンラインニュース(
『AFP通信』記事引用)の報道
記事「中国、南シナ海問題に関わり様々な外交政策を展開」:
「・中国外交部の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は5月25日、ニジェール(アフリカ中西部の共和国)が他の40ヵ国以上の国と同様、南シナ海問題は関係国同士の直接対話に委ねるべきで、(フィリピンが提訴した)国際仲裁裁判所で裁かれるものではない、とする中国の方針に賛同したと発表。
・ニジェールの他、地政学上南シナ海に一切関わらないが、トーゴ(アフリカ西部)、ブルンジ(同中部)、アフガニスタン(中央アジア)なども賛同。
・これらの国に共通しているのは、いずれも貧しく、中国との交易や中国からの投資等に頼る国。
・ただ、フィジー(南太平洋)やスロベニア(中央ヨーロッパ)などは、中国外交部の発表は誤りで、中国もフィリピンもどちらの肩も持たないと即座に声明を発表。」
同日付中国
『新華社通信』の報道記事「中国とロシアの両外相、タシケントで両国間連携を強調」:
「・中国の王毅(ワン・イー)外交部長とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は5月24日、タシケント(ウズベキスタン)で会談し、両国間連携と国際問題の共通認識について再確認したと強調。
・両外相は、同地で開かれた“上海協力機構(SCO、注1後記)”外相会議に出席。」
同日付中国
『東方日報(上海)』の報道記事「SCO、南シナ海の平和と安定を支持」:
「・SCOのラシッド・オリモフ事務局長は5月24日、SCO加盟国は南シナ海含め、アジア太平洋地域の平和と安定を支持するとの共同声明を発表。
・SCO加盟国はまた、南シナ海の領有権問題について、国連憲章、国連海洋条約、平和五原則(注2後記)その他の国際法に準拠すべきであると強調。
・更にSCOは、当該領有権問題は当事国同士の対話と、南シナ海行動規範に基づき解決されるべきだとも表明。」
(注1)SCO:中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8ヵ国による多国間協力組織。2001年6月、上海にて設立。
(注2)平和五原則:中国の周恩来首相とインドのネルー首相の会談に基づき1954年に合意された、一般の国際関係における原則を内容とする文書。
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