米・ロシア・中国メディア;中国主導のG20サミットが開幕(2)(2016/09/05)
先の「中国主導の主要20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)が開幕」の中で触れたとおり、中国は、同サミットを成功に導き大国の威信を内外に示すため、国際社会が最も注目し、懸案としていたパリ協定(国連気候変動枠組み条約締約国会議COP21で採択)について、同サミット開幕直前に、中国が率先して批准すると発表して、責任ある大国であることをアピールした。そして、習近平(シー・チンピン)主席は、同サミット直前に開いたオバマ大統領との首脳会談においても、米国と携えてパリ協定発効に向けて協力していくことを強調し、米中両大国の関係修復を図ろうとしている。ただ、米大統領専用機の到着時に大統領側近と中国職員とが揉めたりしており、両国間の役人同士のわだかまり・主張の隔たりはそう簡単に埋まりそうもない。
9月3日付米
『ロイター通信米国版』:「オバマ・習両氏、南シナ海・サイバー攻撃対策・人権問題で協議」
「●米大統領府は9月3日、バラク・オバマ大統領と習近平主席が、両大国間で最も困難とされる諸問題について協議したと発表。
●同大統領は、習主席に対して、南シナ海問題に関わる国際仲裁裁定に従うよう求め、サイバー攻撃対策に協力して当ること、更に、信教の自由を含めた人権擁護を堅持するよう要求。...
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9月3日付米
『ロイター通信米国版』:「オバマ・習両氏、南シナ海・サイバー攻撃対策・人権問題で協議」
「●米大統領府は9月3日、バラク・オバマ大統領と習近平主席が、両大国間で最も困難とされる諸問題について協議したと発表。
●同大統領は、習主席に対して、南シナ海問題に関わる国際仲裁裁定に従うよう求め、サイバー攻撃対策に協力して当ること、更に、信教の自由を含めた人権擁護を堅持するよう要求。」
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「オバマ・習両氏、G20サミット直前に南シナ海、北朝鮮問題につき協議」
「●両首脳はまた、北朝鮮の核開発や弾道ミサイル発射実験が朝鮮半島の脅威となっており、両国が同地域の非核化に向けて協力していくことで一致。」
9月4日付中国
『東方日報(上海)』:「習氏、オバマ氏との会談で相互信頼が重要と強調」
「●米中両首脳の会談は8度目になるが、習主席はオバマ大統領に対して、二国間貿易、投資、人材交流、温暖化対策、両国軍隊の偶発事象回避のシステム作り等、両大国が相互信頼を持って対応していく必要性を強調。
●両国首脳は会談前、それぞれが承認したパリ協定批准書を、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長に手交。」
一方、同日付米
『ニューズウィーク』誌(
『ロイター通信』記事引用):「中国側職員、G20
サミットで訪中の大統領補佐官や報道補佐官と衝突」
「●米大統領専用機が、中国東部の杭州市国際空港に到着した際、中国側職員がスーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と報道補佐官を怒鳴りつけ。
●米国では、大統領随行の報道記者らがタラップの下で大統領の降機を待つことが許されるが、G20サミットを前に厳重な警戒態勢を敷いている中国職員が、ライス氏等を大統領府高官と知らず報道記者か何かと勘違いして、単に自分の命令に従わず勝手な行動を取ったとして叱責。
●同職員は、ここは中国で、中国の空港である(よって中国側の命令に従え)との罵声を浴びせたため、小競り合いになりかけたが、シークレットサービス(大統領護衛官)が間に入り衝突回避。
●中国ではトップ自らが、メディアは国の利益を最優先し、同じ方向を向くよう指導しており、今回のG20サミットに拘らず、常日頃からも海外メディアに対する扱いが非常に厳しく閉鎖的。
●なお、中国当局は、G20サミット成功のため、セキュリティ対策や大気汚染軽減の目的で、900万人の人口を抱える杭州市の市民の多くを郊外に締め出し、また、近隣の工場などを一時的に操業停止させるなど、強権発動。」
中国側のG20サミット成功にかける思いが如実に表れているのが、昨年の9月3日には抗
日戦勝70周年記念大軍事パレードを大々的に実施したのにも拘らず、今年は一切大規模行
事を行わず、G20サミットのみに焦点を絞っていることである。
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米・英・中国メディア;南シナ海問題で近く仲裁裁定(2016/07/01)
フィリピンが3年前に国際仲裁裁判所(PCA)に提訴した南シナ海問題について、仲裁裁定が下されるタイミングが近づくにつれて、中国側に不利な結果となることを恐れ、中国側は、南シナ海に全く無関係なアフリカや中東諸国からも支援を取り付けて、何とか国際社会からの非難を弱めようとしている旨報じてきた。そしていよいよ、PCA裁定が7月12日に下されるとの発表を受けて、中国は益々形振り構わず最後の悪足掻きをしている。
6月30日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「中国、南シナ海問題に関わる7月12日の裁定発表の前に改めて拒否を宣言」
「・PCAは6月29日、フィリピン提訴の仲裁について7月12日に裁定を下すと発表。
・5人の判事による裁定は、南シナ海のほとんどが主権範囲内とする中国の主張が国連海洋法条約(UNCLOS)に違反しているかどうか、南沙(スプラトリー)諸島海域内の岩礁のどこまでフィリピンの海洋活動が認められるか、更に、ミスチーフ礁に中国が築いた人工島によって環境破壊が引き起こされたかどうか、について判断。...
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6月30日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「中国、南シナ海問題に関わる7月12日の裁定発表の前に改めて拒否を宣言」
「・PCAは6月29日、フィリピン提訴の仲裁について7月12日に裁定を下すと発表。
・5人の判事による裁定は、南シナ海のほとんどが主権範囲内とする中国の主張が国連海洋法条約(UNCLOS)に違反しているかどうか、南沙(スプラトリー)諸島海域内の岩礁のどこまでフィリピンの海洋活動が認められるか、更に、ミスチーフ礁に中国が築いた人工島によって環境破壊が引き起こされたかどうか、について判断。
・ただ、PCA裁定は、南シナ海において、それぞれの諸島海域の主権はどの国が持つかまでは及ばないため、この問題は未解決で残る。
・中国はかねてより、PCAに審理権限はなく、従って同裁定を無視すると主張しているが、同国外交部は6月29日夜に改めて不服従を宣言。
・これに対して米国は、UNCLOSに未批准ながら、中国にPCA裁定に従うよう求めるだけでなく、欧州やアジア諸国に対してPCA裁定への支持を要請。」
同日付英
『Yahooニュース英国版』(
『AFP通信』記事引用):「中国、南シナ海に関わるPCA裁定拒否の見通し」
「・中国外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官は6月29日、ウェブサイト上で、中国はいかなるPCA裁定も受け入れないと宣言。
・また、同報道官は6月30日、フィリピン側は、両国間対話での解決という中国側提案を無視したと主張。
・しかし、フィリピン外務省は、PCA審理に中国が参加せずとも、PCA裁定は国際法上有効だとの声明を発表。」
同日付中国
『東方日報(上海)』:「PCA、7月12日に裁定」
「・中国はこれまで、PCAには南シナ海問題を審理する権限はないし、また、領有権問題はUNCLOSに関係することではないと主張。
・そして、PCAが7月12日に裁定を下すとの発表を踏まえて、中国外交部の洪報道官は6月29日夜、PCAには審理権限がないこと、フィリピンの一方的な提訴は国際法に違反していること、更に、管轄外の如何なる裁定にも不服従であると、改めて宣言。
・また、国際社会が賛同しているように、南シナ海領有権問題は関係当事国間の対話・交渉で解決すべきものと中国は主張。」
一方、同日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、“万里の長城”に関わる米国コメントは史実の誤った解釈と主張」
「・中国国防部の呉謙(ウー・クィアン)報道官は6月30日、6月初めのシンガポールでの国際会議(シャングリラ対話;アジア安全保障会議)において、米国防総省アッシュ・カーター長官が発言した“万里の長城”に関わるコメントは、史実の誤った解釈だと非難。
・カーター長官は、中国が南シナ海に造っている人工島が、“万里の長城を築いての自国の孤立化”を増長するものと発言したが、同報道官は、万里の長城は孤立化するものではなく、外敵の侵入を防ぐためのものだったと言明。
・更に同報道官は、中国は国際社会から支持を得ており、孤立していることはないとも強調。
・ただ、同報道官は、南シナ海問題で米国と緊張関係にあるにも拘らず、6月30日から始まる米海軍主催の環太平洋合同演習(RIMPAC)に中国艦隊を参加させたが、最近何かと騒がしいテロ騒動や海賊対策のために、関係各国と合同演習することは意義があることとコメント。」
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