12月11日付
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「東京大会のスポンサーが33億ドル拠出するも、開催総費用に遠く及ばず」
日本の東京大会スポンサーは、これまでに33億ドルを拠出しているが、これは過去の大会のスポンサー分担額の2倍余りとなっている。
しかし、それでも東京大会開催総費用を考えると依然不十分である。
何故なら、1年延期に伴う追加コストが28億ドル(約2,940億円)と見積もられることから、スポンサーには各々更に数百万ドル(数億円)供出するよう要請されているからである。...
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12月11日付
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「東京大会のスポンサーが33億ドル拠出するも、開催総費用に遠く及ばず」
日本の東京大会スポンサーは、これまでに33億ドルを拠出しているが、これは過去の大会のスポンサー分担額の2倍余りとなっている。
しかし、それでも東京大会開催総費用を考えると依然不十分である。
何故なら、1年延期に伴う追加コストが28億ドル(約2,940億円)と見積もられることから、スポンサーには各々更に数百万ドル(数億円)供出するよう要請されているからである。
ただ、COVID-19感染流行問題に伴う景気後退に遭っている日本企業にとって、大会観戦者数の減少や、COVID-19が長引く場合に伴う旅行客及び観光収入の落ち込みを考えると、とても同大会への追加拠出は困難と言わざるを得ない。
大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(77歳)は先週、“日本のスポンサーに追加支援を要請したところ、前向きな検討をしてもらった”としながらも、“具体的な金額は明かしてもらえなかった”と述べている。
菅義偉首相(71歳)が積極的に推進し、広告代理店最大手の電通(1901年設立、世界第5位の規模)が公式マーケティング・エージェンシーとして旗振りをしていることもあって、70社近い日本のスポンサーはどこも“公式にはノー”と言っていない。
スポンサーに留まってもらうためとは言え、日本においてはごり押しは必要とされまい。何故なら、本邦では協調と総意が美徳とされ、それは企業理念として根付いているからである。
逆のことわざで言えば、出る杭は打たれる、ということになる。
よって、どのスポンサーにとっても、国家的プロジェクトと見做される東京大会をやり遂げることが、面子にかかわる問題と考えられる。
ただ、全てが表面に現れるとは限らず、スポンサーの中には、現金ではなく“物品で”追加拠出をするところもあると考えられ、そうなると、結果的に不足した金額は税金で賄われることになる。
日本のスポンサーには、今年度上半期に18億ドル(約1,890億円)赤字計上となった全日空(1952年設立)や、同じく7億5千万ドル(約788億円)損失の旅行大手JTB(1963年設立)がいる。
その他、COVID-19で少なからぬ影響を受けたであろう、金融大手野村ホールディングス(1925年設立)、成田国際空港(2004年設立)、日本空港ビルディング(羽田空港運営会社、1953年設立)、食品メーカー大手キッコーマン(1917年設立)、味の素(1925年設立)、東武トップツアーズ(東京スカイツリー運営会社、1956年設立)、日本メディア大手の毎日新聞(1872年創刊)、日本経済新聞(1876年創刊)、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)などがいる。
『AP通信』は十数社にインタビューを申し込んだが、ほとんどがコメントを拒んだ。
東京ガス(1885年設立)の広報室によると、大会組織委員会からメディアへのコメントは控えるように言われているという。
ただ、僅かながらコメントが聞けたスポンサーの一社にインスタント麺メーカーの日清食品(1948年設立)がいる。
同社は、COVID-19に伴う外出自粛事態からインスタント麺の売り上げを大きく伸ばし、前期比+63%収益増としているが、広報担当の松尾友直氏によれば、“安全に東京大会が開催されることを期待して準備を続けている”としながらも、まだ具体的な決定は何もなされていないという。
なお、英国オックスフォード大(1096年設立)の試算によれば、東京大会は過去のどの夏季大会に比べても、最も費用がかかるオリンピックとなるとしている。
東京大会の公式発表では、総費用は126億ドル(約1兆3,200億円)と予算計上しているが、昨年末の会計検査院(1880年設立)の評価では、2倍に膨れ上がっているという。
但し、これは1年延期が決定される以前の話なので、実際には更に膨張することになる。
総費用のうち、大会組織委員会が負うのは56億ドル(約5,880億円)とされているが、その約60%が日本のスポンサーの拠出金で賄われることになる。
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日本国内のみで公開された劇場版アニメ「鬼滅の刃」が観客動員数の記録を更新したことが、欧米でも注目を集めている。日本の新型コロナウイルスの状況の中で、人々が安心して映画館に戻る希望の一筋として報じられている。
米
『ニューヨーク・タイムズ』は、ファンから待望されていたアニメ「鬼滅の刃」は、10月16日に公開された最初の週末に46億円以上の興行成績をおさめ、すべての予想を上回ったと報じている。映画館には合計340万人の観客が殺到した。アメリカでは、映画館で映画が上映されても、空席だらけの場内であるのに対し、日本では観客が戻ってきたことに注目が集まっている。
同紙は、日本の映画館の感染対策について報じている。新宿のある映画館では、ロビーに設置されたサーマルスキャナーで体温チェックがあり、館内のあちこちに入場前の手の消毒、鑑賞中のマスク着用を促す掲示板が見られる。また、席では食べることはできず、飲み物だけ可能であるというアナウンスが定期的に流れる。日本では、これまで映画館がクラスターにつながったケースは確認されておらず、業界団体も、会場が十分に換気されているためウイルスにさらされるリスクは低いという研究結果を提示しながら、映画館の安全性を訴えてきたという。
市場調査会社Gem Standardが8月に行った世論調査では、回答者の84%が映画館の感染防止対策に「安心した」と回答した。それでも、60%近くの人が、まだ映画館に戻る準備ができていないと答えていた。さらに37%は、見る価値のある映画を待っていると回答していた。「鬼滅の刃」が映画館に戻るきっかけを作ったことが分かる。
英『BBC』も、新型コロナウイルスの影響で、空っぽの映画館は世界中で見かける光景となっているが、日本では、アニメ映画が単独で観客を映画館に呼び戻したと報じている。既に漫画とテレビアニメシリーズとして、驚異的な人気を集めていた「鬼滅の刃」が、映画館でも大ヒットすることは明らかだった。そこに、さらにこの映画に競争相手がいなかったことも、驚異的なヒットにつながっていると伝えている。
何十本もの映画の公開日が延期され、制作が中止された作品もある。日本では「ジェームズ・ボンド」や「ワイルド・スピード(Fast and Furious)」シリーズのような映画が延期され、名探偵コナンシリーズのような国内映画でさえも延期されている。実際、日本の映画館で今上映されているハリウッドの大作映画はクリストファー・ノーラン監督の『TENETテネット』のみである。
『BBC』は、日本の映画館が、世界中の映画館と同様に苦戦を強いられる中、政府からの財政的な支援はほとんどなかったため、当然のことながら、映画館チェーンは、観客を再び引きつけるこのまとないチャンスに飛びついたとも伝えている。
初日には、日本最大級の映画館チェーンである東宝が新宿店で42回上映したが、これは日本の基準では異例の数であったという。他の映画館でもピーク時には一日で40回以上の上映が行われた。BBCは、SNS上でこの映画の上映スケジュールは「電車やバスの時刻表」のようだとコメントする人もいたという朝日新聞の報道を伝えている。
そして、最後に人々が気分転換になる時間を切実に求めていたこともヒットにつながったと伝えている。米タフツ大学のスーザン・ネイピア教授は、パンデミックが数ヵ月も続く中、特に若者の間では、長期間経験できていない映画鑑賞の喜びを体験したいという需要が高まっている可能性があるとコメントしている。
なお、この作品のヒットは日本の映画館だけでなく、衣料品店、食品店、文房具店、玩具店などが最大限に活用しており、日本経済の活性化につながっている。
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