台湾は、アフガニスタンにおいて、米軍完全撤退決定に端を発し、米国支援の同国政権があっという間に崩壊してしまった姿をみて、明日は我が身かと危機感を募らせている。そうした中、与党・自民党の外交・国防担当幹部が台湾与党・民主進歩党代表と2+2会議を開催する予定との本邦報道に追随して、米メディアも関心を持って報道している。
8月19日付
『ニューズウィーク』誌:「日本と台湾の高官、共通する中国の脅威を懸念して安全保障問題を協議」
8月18日付『ジャパン・タイムズ』紙(1897年創刊、日本最古の英字紙)報道によると、共に中国からの軍事的脅威を被っている日本と台湾の高官が初めて、安全保障問題を協議するための会合を開くという。
日本側からの要請で具体的に予定が組まれようとしているとし、自民党の佐藤正久外交部会長(60歳、前外務副大臣)と大塚卓国防部会長(48歳、前財務副大臣)が、台湾与党の民進党幹部と8月中に会談する方向で調整しているという。...
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8月19日付
『ニューズウィーク』誌:「日本と台湾の高官、共通する中国の脅威を懸念して安全保障問題を協議」
8月18日付『ジャパン・タイムズ』紙(1897年創刊、日本最古の英字紙)報道によると、共に中国からの軍事的脅威を被っている日本と台湾の高官が初めて、安全保障問題を協議するための会合を開くという。
日本側からの要請で具体的に予定が組まれようとしているとし、自民党の佐藤正久外交部会長(60歳、前外務副大臣)と大塚卓国防部会長(48歳、前財務副大臣)が、台湾与党の民進党幹部と8月中に会談する方向で調整しているという。
『フジテレビ』(1966年開局)も、自民党幹部が民進党の立法院(国会に相当)議員と“安全保障問題含めて、日本と台湾間の交流促進・経済分野について協議する”と報じている。
台湾外交部(省に相当)の欧江安(ジョアン・オウ)報道官は『ニューズウィーク』のインタビューに答えて、“原則として、台湾と共通の認識を持つ国の政治家と台湾の議員が相互理解を深めるために協議することは歓迎する”としながらも、“行政上の中立を保つため、両政党間の協議や議題等についてコメントすることは控えたい”と表明した。
民進党の謝佩芬(シェ・ペイフェン)報道官は8月19日、『ニューズウィーク』の照会に対して、当該会議はまだ調整中の段階であり、開催有無及び時期について決まり次第情報発信するとの回答を寄越した。
日本は、他の多くの国と同様、文化及び経済的交流はあるものの、台湾とは正式国交を有していない。
しかし、米国と違って日本は、単なる台湾の安全保障上のパートナーの一国以上にみられている。
直近でも、日本の高官が、中国による台湾への武力的威圧を注視するとの発言を繰り返している。
更に先月、日本の防衛省が公表した防衛白書の中で、武装した中国海警艦による日本の領土とされる尖閣諸島周辺海域への度重なる侵入への懸念と共に、台湾に対する中国の脅威についても言及している。
また、麻生太郎副首相(80歳)は、“実存する脅威”として中国による台湾武力侵犯があり得ると発言している。
神奈川大学(1928年創立の私立大学)で日本の安全保障問題を研究しているコーリー・ウォレス助教(38歳、ニュージーランド出身)は、“当該2+2協議は、単に象徴的というより実質的に意味のある話で興味のある事態だ”とした。
しかし、同助教は、“日本側の佐藤・大塚両氏はかつて副大臣の職にあったが、与党のトップではなく、しかも現閣僚やその他政権中枢の高官もメンバーに入っている訳ではないので、日本の公式見解である「一つの中国原則」に抵触する話とはならない”とコメントした。
そして同助教は、“政府レベルの公式なアクションが取れない状況下にあっては、このような非公式な方式を重ねていくことが適当なことと考えたものと思われる”と付言している。
なお、本件がニュース報道される1週間前の8月10日、蔡英文(ツァイ・インウェン、64歳)総統が月刊誌『文藝春秋』(1923年創刊)のインタビューに答えて、日本が直近で表明している懸念、また、新型コロナウィルス用ワクチン提供等の支援に感謝するとした上で、東アジアの安全保障強化のための対話メカニズムを構築していきたいと考える、と表明した。
そして同総統は、“台湾も、地域の平和を守る責任があると考えている”と断言している。
一方、中国は、公式であろうと、非公式であろうと、台湾との交流に対して断固たる反対を表明してきており、今回のニュースに関し、再び日本に対して非難の声を上げるものとみられる。
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