2020年に新型コロナウイルス感染症が出現して以降、中国は国境を封鎖してきた。国内でも厳しい都市封鎖を実行し、世界のどこよりも早く経済活動を再開させた。しかし今、世界の多くの国々がコロナと共存することを選択し、再開していく中、中国だけはゼロ・コロナの方針を維持し、ますます内向きになりつつある。同時に、中国国内の情報も遮断され始めている。
米
『CNN』は、中国の内向き志向は、中国の最高指導者である習近平が、ほぼ22カ月間、中国を離れていないことでも表れている、と伝えている。また、中国と世界との間の人的交流が激減し、観光、学術、ビジネス旅行の流れが鈍化していることにも表れている。この変化は、習近平が10年近く前に共産党の指揮を執って以来、何年もかけて進められてきたものであるが、新型コロナウイルス感染症とそれを取り巻く政治によって、さらに強調され、悪化した。専門家たちは、中国が世界からあとどれほど遮断されたままでいられるのか、公衆衛生以外の問題があるのではないかと疑問を投げかけている。
米外交問題評議会の中国研究の上級研究員であるカール・ミンズナー氏は、「思想的には、80年代、90年代の改革開放の時代に比べて、中国は徐々に偏狭になってきており、これは習近平の新時代の特徴でもある」と述べている。「中国の伝統を、外国の価値観、特に西洋の価値観に対するイデオロギー的な盾として展開する戦略的な取り組み」が取られてきたという。2012年末の就任以来、習近平は、民主主義、報道の自由、司法の独立など、西洋の価値観の「浸透」を繰り返し警告し、外国のNGOや教会、西洋の教科書などを取り締まってきた。
米『ウォールストリート・ジャーナル』も、中国共産党は長い間、情報を厳しく管理してきたが、習近平国家主席の下でさらに強化されていると報じている。世界での存在感が高まる一方で、この1年で中国国内はますます不透明になっているという。
中でも、新しいデータセキュリティ法が9月に施行されたことにより、外国の企業や投資家は、供給品や財務諸表などの情報を入手しにくくなっている。中国領海内の船舶位置情報を提供する複数の企業が、国外への情報提供を中止したため、現地の港湾活動を把握することが困難になった。中国当局は、石炭の使用に関する情報も制限し、公式の司法データベースからは、国家の安全をおびやかすとされる事件に関連する文書を削除し、他国との学術交流も停止した。
日本の国際基督教大学の政治・国際関係学上級准教授であるスティーブン・ナギ氏は、「中国は常に大きなブラックボックスだった」が、情報へのアクセスが減少していることで、外国人が中国で何が起こっているのかを理解することがさらに難しくなっており、「ブラックボックス」化が進んでいると指摘している。
中国在住の経営コンサルタントであるキャメロン・ジョンソン氏は、「中国国内で何が起きているのか、また中国の国家としての目的や目標が見えず、それが不信感につながっている」と述べている。なお、ビジネスマンや政治アナリストによると、中国が秘密主義を強めているのは、単一の政策によるものではなく、パンデミックへの対応、データセキュリティへの懸念の高まり、外部から疑惑の目を向けられている政治的環境など、さまざまな要因が重なっているという。
また、『ウォールストリート・ジャーナル』は、習近平氏は、米国をはじめとする民主主義諸国からの反感が高まる中、これまでの謙虚さや開放性を重視する姿勢から一転して、国の誇りや自給自足を重視する姿勢を打ち出した、と伝えている。
9月1日に施行された新しいデータセキュリティ法が特に情報収集を困難にしている。これは、中国政府が潜在的な機密データの海外移転に懸念を抱いていることを受けた法律である。この法律では、データの収集、保存、使用、送信など、データに関連するほぼすべての活動が政府の監視対象となっている。この法律が成立して以来、中国本土の企業は、金融、医療、公共交通、インフラなどの戦略的分野における多国籍企業との情報共有に消極的になっているという。当局は、何が機密情報にあたるのかを曖昧にしているため、中国企業にとっては、外国の取引先と何を共有できるのかが不明確になってしまっているのだ。
政治アナリストや米国政府関係者によると、このような不透明さは、短期的にも長期的にも中国と米国の間の緊張を高める可能性が高いと指摘している。
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12月3日付米
『AP通信』:「プーチン大統領、ウクライナ侵攻の脅しで同国のNATO加盟を阻止したい意向」
ロシア政府は12月3日、近々行われる予定のジョー・バイデン大統領(79歳)との電話会談において、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)がウクライナをNATOに加盟させないことを保証するよう求めると表明した。
これに関し、米情報局やウクライナ国防相からは、ロシアが早ければ来月にもウクライナに侵攻してくる恐れがあるとの警告が発せられている。
バイデン大統領は、ロシアと西側諸国の緊張が高まる中、同政権として“最も総合的かつ意義ある統率を以て、プーチン氏がウクライナ近くに軍を配備して彼らを困惑させるような行動に出ることは困難だと思わせる”べく努めると発言している。
また、NATO幹部や米外交官・安全保障問題担当高官も、ロシアがバイデン大統領にウクライナをNATOに加盟させないよう要求するなど、全くお門違いな話だとコメントしている。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(62歳、元ノルウェー首相、2014年就任)は今週、ウクライナがNATOに加盟するかどうかに関し、ロシアは一切関係がないことだと強調した。
同事務総長は、“それはウクライナ及びNATO加盟30ヵ国が決めることで、ロシアには拒否権も介入する権利も一切ない”と言及している。
しかし、ウクライナ及び米国を含めた西側諸国も、ロシアがウクライナ国境近くに軍隊を派遣していることから、果たして実際に侵攻してくるのか強い懸念を抱いている。
米政府高官は、プーチン大統領が果たしてウクライナ侵攻を企てているのか、あるいは、ウクライナや西側諸国からの妥協を引き出すための脅しを仕掛けてきているのか、依然定かではないとしている。
米政府はロシア政府に対して、もしウクライナ侵攻するならば追加制裁を科すと圧力をかけているが、一方ロシアは、もしNATO軍がウクライナに進軍してくるならば、それは“越えてはならない一線”を越えたことを意味すると反駁している。
一方、ウクライナのオレクシイ・レズニコウ国防相(55歳、2021年就任)は12月3日、議会において、推定9万4,300人のロシア兵がウクライナ国境近く及びロシア併合のクリミア半島に配備されており、“大規模な深刻な出来事”が1月にも発生する恐れがある、と警鐘を鳴らしている。
また、米情報機関が12月3日夕に公開した情報によると、ウクライナ国境付近にロシア軍の大砲・兵・その他軍関係物資が集まってきていることから、最大17万5千人の兵力を以て来年早々にウクライナに侵攻してくる恐れがあるという。
なお、アントニー・ブリンケン国務長官(59歳)が12月2日、ストックホルム(スウェーデン)でセルゲイ・ラブロフ外相(71歳)と会談した際、ウクライナ国境付近に集結させた軍隊を引き揚げるよう要求したが、同外相は逆に、西側諸国こそロシアがNATO拡大を阻止しようとしていると勝手に言い触らして“危険を煽っている”と反発している。
一方、ロシア大統領府のユーリ・ウシャコフ外交問題担当補佐官(74歳)は12月3日、現在両大統領の電話会談のための日程調整を行っている旨表明した。
これに対して、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(43歳)は同日夕、担当高官同士で“日程等を詰めている”最中だとコメントした。
同報道官は、“ウクライナ国境付近での不穏な動きについては非常に懸念されることであるので、両首脳間の直接討議は時機を得たものと考えられる”と付言している。
12月4日付ロシア『RT(ロシア・トゥデイ)』:「米国スパイ、ロシアがウクライナ侵攻のために17万5千人の兵を集結させているとホラ」
米情報局は12月3日、ロシアが17万5千人の兵士を投入してウクライナに侵攻しようとしているとの情報を公開した。
米『ワシントン・ポスト』紙は、匿名のバイデン政権高官が、“推定17万5千人の兵士を有する100もの大隊が武装している”とし、衛星写真によると“先月から、ウクライナ国境付近に集結し始めていることが覗える”と言及していると報じた。
更に、米政府自身も先月来、ロシアによる東部ウクライナへの“侵攻”の可能性を言い出していて、ブリンケン国務長官がロシア側に対して、かかる事態を引き起こしたら“深刻な結果”をもたらすと警告してきた。
これに対して、ロシア政府は、どの国にも攻撃を仕掛ける考えなど全くないとした上で、米政府こそ“ヒステリー”を起こして事態を危うくしないようにと反論している。
更に、ロシア側としては、西側諸国がウクライナを“焚きつけて”、同国が勝手に領土だとしている東南部のドンバス地方にNATO軍の助けを借りて攻め入ろうとしていることに重大な懸念を抱いている。
プーチン大統領は今週初め、NATOが更に勢力を広げて東進することは受け入れられないと再度主張した上で、米主導のNATO軍に対して、ロシア国境に侵入する考えを改め、かつ、同地域に“武装勢力を投入するとの脅し”を止めることを“文書で誓約”することを求めると表明している。
(注)NATO:第二次世界大戦が終わり、東欧を影響圏に置いた共産主義のソビエト連邦との対立が激しさを増す中で、米・英国が主体となり、1949年4月締結の北大西洋条約により誕生。ソ連を中心とする共産圏(東側諸国)に対抗するための西側陣営の多国間軍事同盟が当初の目的。12ヵ国で立ち上げられ、ソ連崩壊後に旧ソ連他東欧諸国が1999年3ヵ国、2004年7ヵ国が続々と加盟し、直近の2020年北マケドニアの加盟を経て、現在30ヵ国。
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