ドイツのショルツ首相は1日、最新の対空防衛システム「IRIS-T」を含む、国内で生産されている兵器をウクライナに提供すると発表した。同首相はこれまでウクライナへの支援に消極的だったと批判されてきたが、本格的なウクライナ支援に重要な一歩を踏み出した。
仏
『レゼコー』によると、ここ最近、ショルツ政権に対するウクライナ支援のための国内外からの政治的圧力が強まっていた。ドイツの野党指導者フリードリヒ・メルツ氏は、ウクライナに重火器を提供するという連邦議会の命令を首相が尊重していないと非難していた。また、ウクライナに譲渡した戦車の代替兵器を受け取っていないことに不満を持つポーランドもショルツ政権を非難していた。グレッセル氏は、欧州連合(EU)では、「ドイツの不明確な役割に失望し、同政権に対する苛立ちがあった」と説明している。
ショルツ首相は連邦議会で、ドイツの軍需企業ディールディフェンス社が開発した最新兵器、対空防衛システム「IRIS―T」をウクライナに納入することを発表した。ドイツはこれまで、国内生産の武器をウクライナに直接送ることに難色を示し、旧東欧諸国の在庫から古い機器を送るという循環型の配送システムを好んでいた。
欧州外交問題評議会(ECFR)のグスタフ・グレッセル研究員は、「ロシアの空爆は激化する一方なので、これは非常に重要なステップだ」と述べている。ウクライナは、他の西側諸国が供給できない対空ミサイルシステムS-300の弾薬を使い果たす危険性があり、ドイツを除けば、代替システムを作れる国はほとんどないと指摘している。
ショルツ首相は、人道的な観点から、「ロシアの空爆から大都市全体を守る可能性をウクライナに与えることになる」と述べ、今後数週間のうちに「オランダと緊密に連携し、世界で最も近代的な装甲榴弾砲を12基」納入するだけでなく、米国と協力して、自国がロケットランチャーを提供することを示唆した。また、敵の榴弾砲、迫撃砲、ロケット砲を探知するための追跡レーダーも提供することを明らかにした。しかし、「最新の機器を使えるようにしなければならない。数週間から数カ月の訓練が必要だ」と述べた。
米ニュースサイト『マディソン』によると、国連軍の元フランス軍司令官ドミニク・トランカンは、新しい武器は、町や都市を攻撃しているロシアの砲弾を打ち返し、ロシアの空爆を制限することによって、ウクライナが東部に新しい防衛線を設定し保持するのに役立つだろうと述べている。トランカン氏は、「NATO諸国は、ウクライナが自由に使える武器を徐々に増やしてきた。これには、ロシアの限界を試す目的があったと思う」と述べ、「毎回、ロシアの反応を測っているが、反応がないので、ますます効果的で洗練された兵器を供給し続けている」と説明している。
米国のバイデン大統領も1日、ウクライナに高度なロケットシステムを含む兵器を供与すると表明した。軍事専門家たちによると、ロシアは流れを変える可能性のある兵器が到着する前にウクライナ東部を制圧することを望んでいるという。米国防総省によれば、米国の精密な兵器と訓練を受けた兵士を戦場に送り込むには、少なくとも3週間かかるという。しかし、コリン・カール国防次官は、戦いに変化をもたらすのに十分間に合うと信じていると述べた。
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米上院議会は12月16日、11ヵ月余り空席となっていた駐中国大使の任命を承認した。ジョー・バイデン大統領(79歳)が今年8月、元ベテラン外交官でハーバード・ケネディスクール(1936年設立のハーバード大公共政策大学院)のニコラス・バーンズ教授(65歳)の指名を公表して以来4ヵ月も経ってからである。更に、現状でも、世界200ヵ国余りの米国大使のうちの半分近くが依然空席のままとなっている。そこで、米大手紙が、共和党による民主党政権指名の大使候補の承認を遅延させる戦術は、世界で今や米国を凌ぐ勢いの中国を悪戯に利するだけだとして、国家安全保障問題を優先させるべきだと厳しく指摘している。
12月17日付
『ワシントン・ポスト』紙:「オピニオン:米国大使承認決議保留で安全保障を危うくすべきではない」
米上院議会は12月16日、米国の駐中国大使候補として指名されていた元外交官のニコラス・バーンズ氏の承認を決議した。
全会一致の決議だったとは言え、今や中国が世界で米国に厳しく対峙する存在となっていることを考えたら、同大使職が11ヵ月も空席のままだったことは異常としか言いようがない。
更に言えば、上記承認決議を入れても、米国が世界に派遣している200に近い国の大使が依然93も空席となっているという現実がある。
この遅延の理由のひとつには、上院議会の共和党重鎮テッド・クルーズ議員(50歳、テキサス州選出)及びマルコ・ルビオ議員(50歳、フロリダ州選出)が議会戦術として、米憲法下の“アドバイス&コンセント(注1後記)”を使ってジョー・バイデン大統領が指名した大使候補の承認決議を悪戯に妨害していることが挙げられる。
このため、バーンズ氏についても上院外交委員会が何ヵ月も前に承認していたにも拘らず、本会議での承認決議を悪戯に遅延させ、年末の議会閉会という段階になって漸く決議に移行したものである。
かかる不条理な行いは、追って発行されるハーバード大・中国研究グループによる「米中2ヵ国の外交問題」内で指摘されている多くの問題のひとつに挙げられている。
すなわち、中国が辿ってきた外交政策の変遷(抜粋)は以下と指摘されている。
・中国が2001年に世界貿易機関(WTO、1995年設立)に“途上国”の立場で正式加盟した際、当時の中国最高指導者の鄧小平主席(トン・シャオピン、1904~1997年、1978~1989年在任)は、“隠れて機会を待て”との方針の下、“目立つな”また“指導的役割も担うな”と徹底。
・現在、王毅外相(ワン・イー、68歳)がいろいろな場面で発言しているとおり、“米国と肩を並べる”大国となったとして、如何なる場合でも謝罪など不要で米国には“強硬姿勢で臨む”べきとの対応。
・半世紀前、中国は初めて国連に代表を送ったばかりであったが、2019年には、大使・総領事等の派遣先として、米国の273ヵ国を上回る276ヵ国と外交関係を構築。
・現在、国連案保障理事会常任理事国5ヵ国のうち、最多の職員を派遣し、また、米国に次ぐ分担金拠出(3位は日本)。
・四半世紀前、江沢民主席(チャン・ツェーミン、現95歳、1993~2003年在任)が会談した外国首脳は、ビル・クリントン第42代大統領(現75歳、1993~2001年在任)の半数。
・現在、習近平国家主席(シー・チンピン、現68歳、2013年就任)が2013~2020年の間に会談した外国首脳は、バラク・オバマ第44代大統領(現60歳、2009~2017年在任)及びドナルド・トランプ第45代大統領(現75歳、2017~2021年在任)合わせたものと同数。
・中国の外交上の壮大な戦略として、全ての主要国にとって不可欠な経済パートナーとなる方針。
・その結果、2001年以降でみると、日本、ドイツ等の130ヵ国との貿易高が米国を抜いてトップに君臨。
・更に、医療品、半導体、太陽光パネル、最先端技術に不可欠なレアアースの世界最大の供給元となり、不可欠な地位を確立。
一方、中国の驕り高ぶりを表す顕著な例として、自身を批判する国や要人を恫喝する“戦狼外交(注2後記)”が挙げられる。
この結果、中国に対する反発が高まり、2021年における調査では、米国、英国等民主主義国の市民の約75%が中国を“支持しない”と答える程悪化している。
従って、米国は今こそ絶好の機会と捉えて、中国の野心的な外交政策に歯止めをかける必要がある。
つまり、諸外国における重要な任務を負う大使を派遣せず、空席のままとしておくことは、中国を利する以外なにものでもない。
故周恩来首相(チョウ・エンライ、1898~1976年、1954~1976年在任)が初代外相(1949~1958年在任)を務めた際、外交は“別の形の戦争”だとして野心的に取り組んでおり、その姿勢は脈々と続いている。
すなわち、中国の野望を食い止めるためにも、共和党は、悪戯に米国大使承認手続きを党戦略のひとつとして推し進めるのではなく、今こそ国家安全保障の重大さに立ち返り、米国にとって最も相応しい対応を取るべきである。
(注1)アドバイス&コンセント:米憲法上で、上院議会に認められた、大統領の指名権や立法権を制限しうる権限。
(注2)戦狼外交:21世紀に中国の外交官が採用したとされる攻撃的な外交スタイルのこと。この用語は、中国のランボー風のアクション映画「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」からの造語。論争を避け、協力的なレトリックを重視していた以前の外交慣行とは対照的に、より好戦的となり、ソーシャルメディアやインタビューにおける中国への批判に対して、しばしば声高に反論や反駁をしている。
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